20年ぶりとなる兄弟名義のユニット新作から感じるモダン・ジャズの光彩と日本ジャズの歴史
Bのキャップが3つ並んだアルバム表題と、赤(ブラッド)と青(ブルース)色をのせた澄んだ二人の顔のジャケット・カヴァー(写真は、俳優/映画監督の斎藤工による)がクールだ。その作品の主は、トランペッターの岡崎好朗とテナー・サックス奏者の岡崎正典の“Okazaki Brothers”。ともに奨学金を得てバークリー音楽大学で学んだという経歴を持つ2人は、東京下町育ちで1学年違いの年子。弟の正典は一般大学を卒業後に留学したので、ボストンの音大は入れ違いとなる。
「もともと兄弟仲は良かったと思います。小中学校の時はよく一緒に遊んでいました。親から見れば、双子のような感じだったかもしれません。12歳のときに、僕は小学校の鼓笛隊でトランペットを始めました。その後は、トランペット一筋です」(好朗)
「僕も同じ流れですね。兄がやっていたので、自然に鼓笛隊に入りました。その時はトランペットでした。高校で吹奏楽部に入りそこではクラリネットを吹き、18歳からはテナー・サックスを始めました」(正典)
仲良しではあったものの、管楽器は音量が大きかったため家で一緒に音を出し合ったこともなかったし、この音楽がいいと薦めあったこともなかったという。ジャズがいいなと思うようになったきっかけも、2人は異なる。
「高校ではマーチング・バンド部だったんですけどポピュラー系の曲も多くやり、先輩もジャズを演奏している人が多かったので、それで自然に興味を持ちました」(好朗)
「大学に入るときにビッグ・バンドのサークルがあって、それを見てとてもかっこいいなと。それで、ジャズを演奏してみたいなと思いました」(正典)
バークリー音大での経験は大きなものであったし、兄の好朗は2000年代中期に再び渡米して3年間ニューヨークで鋭意活動したこともあった。現在それぞれにコンボやビッグ・バンドの活動や後進の指導などジャズと向き合う活動をしている二人だが、ともに小曽根真のジャズ・オーケストラであるNo Name Horsesの構成員でもある。そして、今回の兄弟によるリーダー作は小曽根真の提案で実現した。彼の唯一の要求は、すべて二人のオリジナルで録音しようということだった。
「個性が⼀番出やすいのって作曲なんですよ。好きなアルバムとかあるじゃないですか。もちろん僕らはプレイヤーだからアドリブの部分とか、あのコードのあのフレーズがいいよというのはもちろんあるのですが、つまるところあの曲がいいってなる。最近のジャズって、なんだかそういうのが少なくなってきているような気がするんです。ですから、僕はメロディがはっきりした曲が好きだし、そういう曲を書きます。それが、今作の⼀番のコンセプトと言えるかもしれないですね」(好朗)

兄弟がそれぞれに出し合った楽曲を演奏するのは今作でプロデュースも担う小曽根真、さらに小川晋平と高橋信之介によるクインテット。みんなNo Name Horsesの息が合ったメンバーたちであり、多くがワン・テイクで録られた。その結果は正々堂々であり、真っ直ぐ。トランペットとテナー・サックスが前に立つクインテットはジャズ王道の形態と言うべきものだが、今の奏者たる息吹とともに面々はその誉れを具現している。以下は、お互いに対するそれぞれのコメントだ。
「優れたミュージシャン同士で演奏する時って、言葉を交わさなくても分かりあえるんです。特にジャズの場合はそうなるかもしれないですけど、即興演奏していて、どういうふうになっていくかというのを読み合えないと、やりづらいんですよね。だから、それがやっぱりできる存在ですね」(好朗)
「一瞬のリズムの感じだったり、吹き方のニュアンスとか。合わせやすいんですよね。他人でも合う人はいますが、なかなか難しい。だから、そういう疎通が簡単にできるというのはすごく重要で、とても助かります」(正典)
『Blood But Blues』にはそんな言葉を超えた阿吽の呼吸が差し出す美点が、純アコースティックな指針で詰め込まれている。
Okazaki Brothers(オカザキ・ブラザーズ)
岡崎好朗(Yoshiro Okazaki)
12歳からトランペットを始め、中学のときに観た映画「ベニーグッドマン物語」に影響されジャズを聴き始める。ボストンのバークリー音楽大学を卒業後、ニューヨークでも活躍。ミンガス・ビッグ・バンド、小曽根真 No Name Horsesなどに参加。ライヴ、コンサート、レコーディングなどで活躍中。
岡崎正典(Masanori Okazaki)
高校時代、吹奏楽部に所属し、クラリネットを演奏する。大学入学を期に、テナー・サックスに転向。卒業後、ボストンのバークリー音楽大学の奨学金を得て留学。帰国後は小曽根真 No Name Horses、守屋純子オーケストラなどに参加。また、南青山六丁目楽団の作編曲も手掛ける。
LIVE INFORMATION
OKAZAKI BROTHERS with special guest MAKOTO OZONE
『Blood But Blues』Release Live at COTTON CLUB
2026年6月10日(水)東京・丸の内 COTTON CLUB
[1st]開場/開演:17:00/18:00
[2nd]開場/開演:19:45/20:30
https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/