ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、サム・ヘンショウ、SIRUPなどをきっかけにR&Bに目覚めたトラックメイカーのNanaeと、シンガーのヨウによる同じ誕生日の2人からなるガールズユニットNatsudaidai。ジャンルレスなトラックと変幻自在のヨウの歌が織りなす独特の和洋折衷感が評判を呼ぶ中、3枚目のEP『Micro Dance』を完成させた。今作のテーマは〈ダンスナンバー〉。Natsudaidaiらしさとは何か?という壁を抜けて生まれたという、今やりたいことが詰まったEPになっている。全5曲が収録されたEPについて2人にインタビューした。

今のNatsudaidaiをそのまま詰め込もう
――なぜ今作はダンスナンバー中心の作品となったのでしょうか?
Nanae「いろんな曲を出してライブを重ねていくにつれ、自分たちのことを俯瞰できるようになってきて、ダンスナンバーが届きやすい実感があったんですよね。“ビザールラヴ”っていうドラマの主題歌がまずあったので、そこから派生させて収録曲を決めていきました」
――“ビザールラヴ”は奇怪な植物に熱狂する主人公を描いたドラマ「変態植物倶楽部」のエンディングテーマで偏愛が描かれた曲です。どんなイメージで作ったのでしょう?
Nanae「ドラマの監督と打ち合わせした時に〈とにかく変態さが欲しい〉と話されていて、その時あまり馴染みのない〈偏愛〉っていう言葉が出てきました。それで〈ビザール〉が〈偏愛〉と近い言葉として使われることが多いということも聞いて、人間から人間への愛でも、人間からモノへの愛でも、何かしら変態的な部分はあるって感じたんです。そこから“ビザールラヴ”っていういろいろなものに当てはまるようなタイトルを付けることにしました」
ヨウ「AメロやBメロはNanaeちゃんっぽいんですが、サビになると急に弾けてキャッチーになるのが新しいなって思いました。サビの後のブリッジでもまた曲調が変わるし、いろんな場面のある曲だなって」
――ヨウさんは歌唱する際に意識したことはありましたか?
ヨウ「ブリッジと他のパートの歌い分けは気にしました。ブリッジの歌唱の参考として、Nanaeちゃんからリファレンスとなる曲を送ってもらったり、何度かやりとりしましたね。私はブリッジのファンキーな感じはチャカ・カーンを思い浮かべたんですが、ソウルっぽい方向性でリクエストされた記憶があります」
――1曲目の“Goldfish”は昨年末、Nanaeさんが自分自身が越えなければいけない壁が見えた時に生まれた曲だそうですね。
Nanae「いろんな人にNatsudaidaiを聴いてもらえるようになって、気付かないうちに自分の中でNatsudaidaiに対して固定観念みたいなものが構築されちゃって〈Natsudaidaiはこういう風に見られてるから、次はこういう曲の方がいいな〉とか考えるようになってたんですよね。堂々と〈これがNatsudaidaiだ〉って胸を張れるようなものができてないように思って。
当時ヨウも歌のことで悩んでて、2人で一度活動を止めたんです。そこで私は〈とりあえず自分が今かっこいいと思うものを詰め込んだ曲をやろう〉と思って“Goldfish”を作りました。これまで歌詞は実際の出来事というよりは、私の妄想を膨らませていく手法で書いていたんですが、“Goldfish”は今のNatsudaidaiをそのまま詰め込もうと思って書き始めたらどんどん筆が走っていったんです」
――イントロがハミングっぽいコーラスで、そこからして新鮮だなと思いました。
Nanae「これまでやったことのないことをとにかく詰め込もうって思ったし、フックになればいいなと思いました。レコーディングが終わった後、もっとトラックを弾けさせたいなと思って、エンジニアさんに相談しつつ、シンセとヨウの声にゲートを付けていい意味での違和感を出してみました。初めて右脳より左脳を使って作ったトラックですね。自分が作ったトラックの中で一番ロジカルに作りました」
ヨウ「曲を聴いた時、Nanaeちゃんがまた新たなトライをたくさんしているなって感じました。ライブでは初めてボイスエフェクトを導入して、ゲートを生で再現するようなトライをしています」

〈Natsudaidaiの曲ではない〉と思っていた“ムーンビーム”
――ヨウさんは歌の面でどんなことを悩んでいたんですか?
ヨウ「去年は海外も含めてライブが多くて、一息つく時間がないほど、目の前のことをこなすだけで精いっぱいでした。11月後半くらいに一段落ついた時に無になってしまって、何が楽しくて歌っているのかがわからなくなってしまったんですよね。Nanaeちゃんだけでなくスタッフの方にも相談して、私だけお休みをもらって考える時間を作っていただきました。お休みから戻った時に“Goldfish”ができていて、歌詞が自分の状態とすごく重なって〈また頑張るぞ!〉と思えたんですよね」
――歌い出しの〈その一言でなにか弾けた〉というラインは、お2人が悶々とした時期を抜けたからこその歌詞に聴こえます。
Nanae「聴いてくれる人を鼓舞したいっていう気持ちはベースにあるんですが、自分たちを鼓舞する曲でもあるなって自分でも思いましたね」
――双方の悩みを解決するために何か話し合ったんですか?
Nanae「ヨウに〈ちょっと続けることが難しいかも〉って相談された時、それまでそれぞれのNatsudaidaiに対する考え方をすり合わせたことはなかったなと思って話し合いました。そもそも得意不得意が真逆の凸凹コンビだと思ってて、それを再認識したことで、私が得意なことは私がやればいいし、私が苦手なことをヨウに任せればいいって思えたんです。Natsudaidaiのプロデュースの仕方がクリアになったところはありましたね。それによってヨウもどんどんやりやすくなってくれればいいなと」
――その変化は今回のEPにどういう形で出ていると思いますか?
Nanae「Natsudaidaiをこれまで知ってくれた方にとっても改めて自己紹介になっているような、新しさがたくさん詰まったEPになったと思います。もっとやりたいことがたくさんあるっていうことを掲げる一歩目のEPにもなっているんじゃないかなって」

――今作にNanaeさんとヨウさんが出会うきっかけとなった“ムーンビーム”が収録されているのは何か意図があるんですか?
Nanae「“ムーンビーム”はずっと前からいつ出すか相談していた曲ではあるんです。2人が出会った時にあるアイドルのコンペに応募した曲なので、その時はヨウにも〈アイドルっぽく歌って〉とリクエストして歌ってもらいました。これもまた固定観念なんですが、自分たちの中ではNatsudaidaiの曲ではないって思っていたんですね。でも周りから〈これもNatsudaidaiだよ〉と言ってもらって捉え方が変わっていった愛着のある曲です。ダンスナンバーっていう『Micro Dance』のコンセプトにも合っているし、歌も録り直して、今回のEPに相応しい曲になったんじゃないかと思っています」
ヨウ「Nanaeちゃんと出会った頃の“ムーンビーム”はアイドルを意識したキャピキャピした歌い方をしていたんですが、トラックも新しくなったことだし、大きくイメージを変えようと思って最初クールに歌ったんですが、やっぱりトラックに合わなくて。Nanaeちゃんに相談しながら、アイドル系とはまた違う攻め方で歌うことを意識しました。暗すぎず踊れるようなテンションっていうか」
――他の曲にもヨウさんの新たな歌の表情が出ているなと思いました。例えば“Vibrare”の気怠いニュアンスとか“徒歩7分”のすごくウキウキしているようなニュアンスとか。新たな歌の表情を出すということは意識的だったのでしょうか?
ヨウ「どれもNanaeちゃんと相談しながら歌っていったんですが、“Vibrare”は本当に難しかったです。“徒歩7分”はNatsudaidaiをやる前の自分の歌い方に通じるところが結構あるので、それを持っていけば成立したところがあって。“Vibrare”はそれとは全然違って」
Nanae「そもそも私が大好きな1990年代、2000年代のエリカ・バドゥやディアンジェロあたりの曲のイメージがあって。それをNatsudaidaiに落とし込むにあたって自分の色をどんどん入れていきました。結構いろいろと実験しましたね。ヨウにはとりあえずエリカ・バドゥをカバーするところから始めてもらいました」
ヨウ「カバーした音源をNanaeちゃんに共有してアドバイスをもらったりして、仕上げていった曲ですね」
――“Vibrare”の歌詞で描かれている〈君〉は何かのメタファーですか?
Nanae「『Micro Dance』の収録曲には、聴く人が各々の場所で踊ってほしいっていう想いが込められていて、“Vibrare”以外の曲は日常で1人で向き合えるような曲になっているんですが、“Vibrare”は私たちとライブでマイクロダンスしてほしいっていう想いが詰まっていますね。ライブでヨウが歌ってるところにお客さんがいる光景を思い浮かべて作った曲で。お客さんに対して、愛を祈ってみたり、寂しさを持ってみたり、なんでもいいから歌ったり踊ったりしてほしいなという想いを込めました」
――ライブが思い浮かぶ曲だなと思いました。
Nanae「嬉しいです。私は直接言葉で伝えるのがあまり得意じゃないので、歌詞にして伝えることが多いんですけど。ヨウと歌詞のすり合わせをする時も〈そういう歌詞なの?〉って言われたりして(笑)」
ヨウ「性格が違うがゆえに歌詞の捉え方も違うんだよね(笑)」

悩みがあってもライブで元気をもらえる
――“徒歩7分”は比較的情景が浮かびやすい曲だなと思いました。
Nanae「そうですね。ただの恋人同士の曲にも聴こえるし、私たちのライブに来てくれてる人たちの会話っていうイメージもあって。二面性を持たせた曲ですね」
――男性のコーラスが入っていますね。
Nanae「Garanboっていうバンドのアレックスくん(ジェームズアレグザンダー帆起)がコーラスで入ってくれたんです。私たちは元々Garanboのファンで、アレックスくんの歌が好きで、レコーディングでもヨウだけでは難しいようなコーラスのアイディアをどんどん出してくれました」
ヨウ「レコーディング当日、2人でコーラスを考えていったんですが、私が思いつかないようなかっこいいコーラスを提案してくれて、新しい扉を開けてくれました。Nanaeちゃんと2人で魅力にやられてましたね(笑)」
Nanae「Garanboの山本(甫)くんにベースのサポートに入ってもらうこともあって仲良くさせてもらってるんですが、アレックスくんとようやく曲でご一緒できて嬉しかったです」


――EPの全体のコンセプトや今の“Vibrare”のお話もそうですが、ライブの経験を重ねていることが作品作りに大きな影響を与えているんですね。
Nanae「そうですね。Natsudaidaiの曲をサブスクで聴いてくれている人が多いと思うんですが、その人たちが目の前に現れてくれるライブは本当に特別な時間です。悩みがあったとしてもライブで元気をもらうことができる。その時間を大事にしたいと思っているからこそ、自然と曲制作にも反映されているのかもしれません」
――対バンも増えていますが、特に刺激を受けたライブはありましたか?
Nanae「4月にCIRCUS TOKYOでぷにぷに電機さんと2マンをやらせていただいたんですが、Natsudaidaiはこれまでずっとバンドセットでライブをやってきたけれど、初のクラブだったのでMPCを加えた3人編成で臨んだんです。同じようなスタイルのアーティストを対バン相手として探していて、私はずっとぷにぷに電機さんの曲を聴いていたのでオファーさせてもらいました。
ライブ前にポッドキャストの収録でお話をさせてもらったこともあってすごく楽しかったです。ライブのスタイルだけでなく、他にもいろいろな共通点もあって、勝手ながら親しみを覚えさせてもらって。ライブも最高でしたね」
ヨウ「私はぷにぷに電機さんのことをオファーさせていただく前まであまり詳しくなかったのですが、すごく会場に合ったライブでお客さんがめちゃくちゃ引き込まれていて。Natsudaidaiが後攻だったのですごく緊張してたんですが、おかげでいいテンションになれて楽しいライブになりました。歌の面でも刺激を受けましたね」

バンドシーンの中で他とは違う見せ方をしたい
――6月と7月に名古屋と東京で『Micro Dance』のリリースパーティーが行われます。どんなライブになりそうですか?
Nanae「MPCセットにフルートとサックスの方が入ってくれるのですが、初めての編成なんです。今の目標として、バンドシーンの中で他とは違う見せ方をしたいっていう想いがありますし、これまでの曲も含めてしっくりくるんじゃないかと思っています。踊れるライブにしたいです」
ヨウ「もちろん皆さんと踊りたいっていう気持ちはありながら、Nanaeちゃんが付けてくれた『Micro Dance』っていうEPのタイトルに込められた想いが私はすごく好きで。いろんな場所でライブをしていく中で、あまり踊ってないお客さんが目に入ると〈この人を踊らせるためにはどうしたらいいんだろう〉とパニックになっちゃうことがあるんです。でも日本人は特に、踊ってないから楽しんでないわけじゃなくて、心の中で踊ってそれを表には出さないタイプの方もいる。その心の動きも含めて『Micro Dance』なんだっていう。
それを踏まえて、みんなが同じように踊るライブというよりかは、それぞれが感じたように好きにノってもらえるライブにしたいなと思っています。私もそう思うことで心が軽くなりましたし、お互い自由度の高いライブになったらいいなって思いますね」
RELEASE INFORMATION
リリース日:2026年6月10日(水)
TRACKLIST
1. Golldffiish
2. ビザールラヴ(テレビ大阪ドラマ「変態植物倶楽部」エンディングテーマ)
3. Viibrare
4. 徒歩7分
5. ムーンビーム
LIVE INFORMATION
Natsudaidai 3rd EP Release Party “Micro Dance”
2026年6月26日(金)愛知・名古屋 KDハポン
開場/開演:18:30/19:00
チケット:前売り4,000円(+1D)
2026年7月2日(木)東京・代官 山UNIT
開場/開演:18:00/19:00
チケット:前売り4,000円(+1D)
■チケット購入
ローチケ:https://l-tike.com/
イープラス:https://eplus.jp/
PROFILE: Natsudaidai

2023年に結成・始動した、日本の夏果実を名にした〈Natsudaidai〉(ナツダイダイ)。同じ誕生日のシンガーのヨウと、トラックメイカーのNanaeによるユニット。作詞・作曲はもちろん、編曲、レコーディング、ミックス、アートワークまでを自ら手がけ、ネオソウルやR&Bをルーツに、エレクトロ、ハウス、テクノなどを融合させた新たなサウンドを創り出す。2人の感性が織りなすグルーヴには、心地よくも新鮮さを感じさせる、独自の空気が宿っている。
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