2023年夏に結成・始動したNatsudaidai。SIRUPをきっかけにR&Bに目覚めたトラックメイカーのNanaeと、シンガーのヨウによるガールズユニットだ。昨年8月にリリースした1st EP『青果店』のタイトル曲を冨田ラボがアレンジやミックスし話題になったことも記憶に新しい。アーロン・テイラー、エドブラック、プリンス、ファレル・ウィリアムス、サム・ウィルズなどをフェイバリットに挙げるNanaeが手がける憂いの宿った楽曲に、オリヴィア・ディーン、ZIN、吉田美奈子、根津まなみから影響を受けたというヨウの絶妙な温度感の歌が乗り、独特の和洋折衷感が生まれている。約8カ月ぶりの2nd EP『CHEW』の完成を機に結成の経緯から聞いた。
生年月日は一緒、でも性格は真逆な二人
――共通の友人に紹介してもらい、NanaeさんがヨウさんにDMを送ったところから始まったそうですね。
Nanae「そうですね。大学生の頃はNatsudaidaiの活動を自分一人でやっていて、自分で曲を作って歌っていたんです。でも、歌を歌える人がいないかずっと探していて、友達からヨウのことを教えてもらってインスタを見たら、ギターで弾き語りをしている動画がアップされてて。〈めっちゃ歌うまいな〉と思ってすぐにDMで〈1曲歌ってほしい曲があるので歌ってもらえませんか?〉って送りました」
――ヨウさんは誰の曲のカバー動画を上げていたんでしょうか?
ヨウ「簡単なコードの曲を中心にカバーしていたんですが、その時は星野源さんの曲とかでした。急に挨拶から始まる長文のDMが来たので〈こういうことって本当にあるんだな〉と思ってすぐに電話しました」
Nanae「電話で家が近いことがわかったので家に来てもらって。私の実家が線路の近くで日中は電車の音が入ってしまうので、終電で来てもらって録音しました。緊張したよね(笑)」
ヨウ「本当に緊張した(笑)。探り探りだったよね」
Nanae「私の家は夜中に歌ってもOKなんですが、翌日家族から〈歌がすごい響いてて起きた。いつもと全然歌の響き方が違った〉って言われて。ヨウの歌のうまさを確信しました(笑)」
ヨウ「その話を後からNanaeちゃんから聞いて〈すごく申し訳ないことをしたな〉と思いました(笑)」

──そこからユニットを組んだ経緯は?
Nanae「まずはSNSで盛り上がったらいいなと思って、定期的にSNSへカバー動画を上げるようになりました。最初TikTokでPUFFYの“愛のしるし”をカバーしたら再生回数がバッて伸びて」
ヨウ「インスタにも加山雄三さんの“お嫁においで”のカバー動画を上げたら再生回数がすごく上がって〈一発目でこれだったらいけるかな〉って」
Nanae「それから1年ぐらい1週間に1回程度のペースで家に来てもらって、カバー動画を何本も撮って毎週1本投稿し続けていきました。それで手ごたえがあったのでヨウに〈Natsudaidaiに加入する?〉って言って」
ヨウ「何の迷いもなく〈入れさせてください〉って言いました」

──Natsudaidaiというユニット名はNanaeさんが付けられた?
Nanae「はい。海外でも通用するような日本語のローマ字がよくて。歌詞も日本語の美しさを宿したいっていう思いで書いてるんですよね。それで私が果物が大好きということもあってNatsudaidaiって付けました。でもヨウは果物が嫌いなんですよ」
ヨウ「食べられなくて。だからビタミン不足です」
Nanae「食事で出てきた果物を全部私にくれるんです」
ヨウ「Nanaeちゃんとは好きなものが真逆なんです(笑)」
――でも生年月日は一緒なんですよね?
ヨウ「そうなんです! 好きなものも性格も真逆なのに。だから誕生日占いが信じられなくなりました(笑)」
Nanae「ヨウは優しくて思いやりがあるので、思ったことをまず自分の中で溜めるんですよね。私はすぐに口に出してその場で解決したいタイプで」
ヨウ「Nanaeちゃんは言いたいことはちゃんと言い合って納得した上で進んでいきたいタイプだよね」
Nanae「二人で第三者と接する時にちょうどいいバランスかなと思ってます」

J-POPっていう枠の中で存在感を出したい
――音楽の趣味は合うんですか?
ヨウ「それも結構違うんです。私はお母さんとお姉ちゃんと一緒にずっとドリカムにハマってて、将来は吉田美和さんみたいな歌手になるってずっと思っていました。高校生になって秦基博さんや玉置浩二さんを知って、歌がうまい弾き語りができるアーティストに惹かれて弾き語りを始めたんです。Nanaeちゃんに会ってブラックミュージックっていうジャンルを教えてもらいました」
Nanae「私も中学生くらいまでは王道のJ-POPを聴いていたんですが、中高でSIRUPに出会って〈このかっこいい音楽は何だ?〉と。それからどんどん掘っていってブラックミュージックがすごく好きになりました。その流れでDTMのことも知っていったんです」
――ヨウさんにとって、Nanaeさんが作るあまり馴染みのなかった音楽性のトラックに音を乗せる作業は難しかったんじゃないでしょうか?
ヨウ「最初は全くうまくいかなかったですね。自分が弾き語りの時に歌っていたものとは全然違ったので。Nanaeちゃんに〈ここでエッジを入れて〉と言われて〈エッジとは?〉って思ったり。今も曲ごとにNanaeちゃんにどういうアプローチがいいかを教えてもらいつつ、自分の中で噛み砕きながら歌っています」

――二人でやる意義はどういうものだと思っていたんでしょうか?
Nanae「私にはない耳にすっと入ってくるような歌声をヨウは持っていて、SNSを通してたくさんの人が受け入れてくれました。歌声も含めて、ヨウという私とは全然違う人間がNatsudaidaiに加わることで新しい化学反応が生まれると思ったんです」
――二人でやっていくことにした時に何かイメージしたことはありましたか?
Nanae「まずはとにかくたくさんの人に曲を聴いてもらいたいと思いました。J-POPっていう枠の中で存在感を出したいなと。あと、私もヨウも誰かアーティストをきっかけに音楽にのめり込んだので、同じようにNatsudaidaiが誰かにとって音楽を始めるきっかけになったらいいなと思っています」
ヨウ「私もそう思います。音楽を仕事にするからには私たちが音楽をやることによって楽しんでくれたり、次の曲を待ってくれてる人がいるっていうWin-Winな関係性が作れたらいいですよね。みんなが音楽で幸せになれる環境を作っていきたいです」
冨田ラボも興味を示したNatsudaidaiの歌詞の世界観
──1st EP『青果店』のタイトル曲を冨田ラボさんがアレンジすると決まった時はどう思いましたか?
ヨウ「めちゃめちゃすごいことですよね。Nanaeちゃんがずっと〈Natsudaidaiも冨田さんとお仕事ができるように頑張ろう〉って言っていて。冨田さんは最初の目標の人だったので、その人が“青果店”をアレンジしてくださるとは夢にも思いませんでした」
Nanae「冨田ラボはとてもエンターテインメント性のあるプロジェクトで、音楽がかっこいいだけじゃなくて、いろいろなアーティストさんをフィーチャリングした時の化学反応や、〈次はどんな楽曲が来るんだろう〉っていうワクワク感もありますよね。遊び心を持った大人のプロジェクトっていう感じがすごくかっこよくて、Natsudaidaiもそういうワクワク感のあるプロジェクトにしたいとずっと思っていて、今も憧れています」
―─冨田さんとご一緒した時、Natsudaidaiについて何かコメントはありましたか?
Nanae「〈歌詞の世界観が唯一無二だよね〉と言ってくださって震えました。その記憶は家宝にしています(笑)」
──Nanaeさんの歌詞は〈どこから発想するんだろう?〉って思うユニークなものばかりですよね。
ヨウ「そうですよね! 私も毎回Nanaeちゃんから送られてくる歌詞を見て〈よくこんな歌詞書けるなあ〉って思いながら歌ってます」
──曲はどういう風にできていくんですか?
Nanae「1フレーズ分のメロディと歌詞が一緒に浮かんでくることが多くて、そこから広げていきますね。実際の出来事を歌詞にする人も多いと思うんですが、私はそういう書き方は得意ではなくて、何かを想像して物語を作るやり方がほとんどですね。妄想です」

独自のプレイリストでグルーヴの認識をすり合わせる
──2nd EP『CHEW』の先行配信曲“Tasting!”はどういうイメージで作られたんですか?
Nanae「サビの〈とっくに興味は無いけど ちょっと味見くらいなら〉っていうフレーズがぱっと出てきて、表向きは食べ物の曲にしようと思いました。でも、ひも解いてみると人間関係の話にも思える。そうやって聴く人に〈謎解きをしてもらいたい〉と思いながら作っていました」
──“スイマー”の歌詞も水泳でもがいている様を描いているようで恋愛のことなのかなと。
ヨウ「“スイマー”の歌詞、私も大好きです。Nanaeちゃんの歌詞は簡単に意図が読み取れない、考察しがいのある歌詞だなって思います。人によって好きに解釈ができる歌詞でもあって、昔の曲で私とNanaeちゃんとで解釈が違ったこともありました。あと曲によって色が変わるところも好きですね」
Nanae「人によって解釈が違うのは自分的には〈よっしゃ!〉ってなります。曲を聴いてくださった方がDMで考察を送ってきてくれることがあるんですが、いろいろな解釈をしてもらえてすごく嬉しいですね」
──Nanaeさんはヨウさんに対して歌唱のディレクションはするんですか?
Nanae「めっちゃします(笑)」
ヨウ「それに関しては止まりません(笑)」
Nanae「その曲に対する理想の歌にどう近づけるか、毎回二人で悩んでますね。〈この曲っぽく歌ってみて〉とか〈この歌い方と歌い方を混ぜてみて〉っていうメッセージを添えて、参考となる曲を並べたプレイリストをヨウとシェアした上で、二人でその歌い方を研究してます」
ヨウ「どうやって落とし込むか、毎回頑張ってるよね」
Nanae「それが毎回一番苦労するところかもしれないです。歌によって曲の雰囲気はがらっと変わるので〈この壁を乗り越えると良いものができる〉って思いながら二人で頑張ってます」


──ヨウさんはNanaeさんから送られてくるリファレンス用のプレイリストの曲に対して、あまり馴染みはないけど聴き込んで臨むっていう感じなんでしょうか?
ヨウ「そうですね。でも最近Nanaeちゃんの好きな曲に耳が慣れてきて、〈いい曲だな〉って思えるようになってきて楽しいです。聴き込んで私なりに解釈した上でNanaeちゃん家ですり合わせて」
Nanae「最初にお互いにとってのグルーヴの認識をすり合わせるために、〈グルーヴ〉っていうプレイリストをそれぞれ作って聴き合ったんですよね。その後もプレイリストは更新されてるんですが、ここ1年ぐらいでヨウがプレイリストに入れる曲がどんどん変わっていって。ヨウが心の底からブラックミュージックを楽しんでる感じがして嬉しいですし、Natsudaidaiの色が共通してきた感じがしています」
ヨウ「Nanaeちゃんが好きな曲を自分もいいと思えるようになってきたので嬉しいですね。〈共有できてる!〉って」
──どういうアーティストの曲をヨウさんはプレイリストに入れてくるようになったんですか?
Nanae「H.E.R.やルーサー・ヴァンドロスの“Never Too Much”とかです。〈(こういう曲)知ってるんだ?〉と思って驚きました。表面だけではく、曲のルーツを探っていくことが音楽を作る者としての使命だということをよく二人で話しているので、ヨウがいろいろな曲を知っていってるのが嬉しいですね。歌うことにも役立つだろうし」
ヨウ「バイト先で流れてきて〈いい!〉って思ったらすぐShazamして、Nanaeちゃんに報告してます」

“Tasting!”は二人だけだったらヤバかった
──“Tasting!”はジャズファンクだと感じましたが、Nanaeさんはどんなイメージで作られたんですか?
Nanae「ファンクをやりたかったんですよね。でもファンクをDTMで完結させると魂感がないなと思って。なので全部生音にしたくて、今お世話になっているミュージシャンの方たちに声をかけさせてもらい、〈華やかなファンクにしたい〉って話をしました。ヨウは歌う時、悩みに悩んでたよね」
ヨウ「去年の12月には曲が上がってたんですが、Nanaeちゃんに〈これは歌うの大変なやつだよ〉って言われてて〈そうだよな〉と覚悟はしてました。今年1月に入ってレコーディングが迫るにつれて本当に思うように歌えなくて、家で何テイク録ったか覚えていないぐらいテイクを重ねて、Nanaeちゃんに何度も送りました」
Nanae「〈こんなヨウ見たことない〉って思うくらい苦労してました。“Tasting!”がこんなにヨウにダメージを与えたことが心配になっちゃって。でもミュージシャンたちが〈ここに歌を乗せればいいんだよ〉と演奏で道筋を見せて安心感を与えてくれたので、改めて〈生音でよかったな〉って思いました。二人だけだったらヤバかったと思う」
ヨウ「それまではNanaeちゃんから送られてくるアレンジ済みのデモにレコーディングで歌を乗せるっていうやり方でしたが、初めて生バンドとやってみて、ドラムやベースが入っていく流れを体感できて良かったですね。最後にボーカルを乗せるのは本当に緊張したんですが、音楽ができていく過程を見れて新鮮でしたし〈音楽っていいものだな〉って改めて思いました」


──“Tasting!”は熱すぎず冷めすぎずな温度感のボーカルが絶妙だと思いましたが、目指したものはあったんでしょうか?
ヨウ「Nanaeちゃんからリファレンスの曲をたくさんプレイリストで共有してもらってたので、それを参考にして歌いました」
Nanae「トラックの方向性としてはMONDO GROSSOの“Family (Hiroshi Fujiwara Remix)”をイメージしました。歌い方としては、本場のブラックミュージックの歌を真似しすぎても、それは本場の曲を聴けばいいと思うので、日本語で歌うからには私たちなりの唯一無二のファンクを目指したくて。そうなると、どんどんヨウの中で正解がわからなくなっていったんです。それで日本語だけど本場のファンク感が感じられるZINさんの“Ooh!”っていう曲とかをヨウにコピーしてもらった上で臨みました」
ヨウ「完コピするつもりで歌ってみました。いざ歌うと〈なんでこんなに難しいことがさらっとできるの?〉と思って、めちゃくちゃ勉強になりました」
Nanae「あと、久保田利伸さんの“GIVE YOU MY LOVE”とかね」
ライブでも魅力的なアーティストになりたい
──Natsudaidaiの曲はちゃんと和洋折衷なものになってると思いました。
Nanae「〈和洋折衷〉、良い言葉ですね。これから使っていきます(笑)」
──ありがとうございます(笑)。そう感じたのはNatsudaidaiっていうユニット名に込められた思いがちゃんと曲になってるからだと思いますが、そこはやはりこだわっているんでしょうか?
Nanae「そうですね。ジャズやファンク、R&Bなどのジャンルがある中で、これまでにいろいろな人がやってきたことを私たちなりに取り入れて新しいものを作りたいと思っていて。それを今模索しています」
ヨウ「曲ができる度に何かしら得るものがあるので、どんどん楽しくなっていますね」
──4月19日には下北沢ADRIFTでリリースイベントが行われますが、どんなイベントにしたいと思っていますか?
Nanae「ライブでは生バンドだけじゃなく同期も入れていて、だから音源とは違うアレンジになっています。自分は他のアーティストのライブでも、ライブならではのアレンジを聴くとテンションが上がるので、自分たちもお客さんにそういう面で楽しんでもらえるライブができたらいいなって思ってます。ライブと音源は全然別ものとして、ライブ面でも魅力的なアーティストになりたいですね」

RELEASE INFORMATION
リリース日:2025年4月2日(水)
配信リンク:https://natsudaidai.lnk.to/chew
TRACKLIST
1. スイマー
2. 白雨
3. Tasting!
4. Escape Plan
5. シンプル・ラブ
LIVE INFORMATION
Natsudaidai release party “CHEW”

2025年4月19日(土)東京・下北沢ADRIFT
開場/開演:17:30/18:00
■チケット
前売り:3,500円(+1D)
一般発売:20252年2月5日(水)10:00~
https://l-tike.com/natsudaidai/
■ゲスト
スーパー登山部
■バンドメンバー
Tomoya(ギター)
Takeda Michel(ベース)
Takuto Wada(ドラムス)
Kazuma(ピアノ)
Yuka Kawabata(トランペット)
Sigma-T(ラップ)
PROFILE: Natsudaidai

2023年に結成・始動した、日本の夏果実を名にした〈Natsudaidai〉(ナツダイダイ)。同じ誕生日のシンガーのヨウと、トラックメイカーのNanaeによるガールズユニット。現行のR&Bグルーヴや、90sをリバイバルしたようなビートを取り入れた高揚感あるNanaeのトラックメイクに、ヨウの唯一無二の浮遊感ある歌声が融合したハイブリッドサウンド〈Girls Chill Pop〉を生み出す。
公式サイト:https://natsudaidai.fanpla.jp/
X:https://x.com/_natsudaidai__
Instagram:https://www.instagram.com/_natsudaidai/
YouTube:https://www.youtube.com/@Natsudaidai.Official
TikTok:https://www.tiktok.com/@natsudaidai__
