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山口百恵が歌う、強さと複雑さを同居させた女性像

――2つ目は、山口百恵さんの“絶体絶命”。こちらも1978年作です。

山口百恵 『ドラマチック』 CBS/ソニー(1978)

「同じく母を介して知った山口百恵さんの低い声に惹かれました。とにかくカッコいい女性に憧れていたんです、私は。バイクがスタジオを駆け回るなかで歌う映像を観たんですけど、まったく動じない姿とか、他のアイドルとは違う印象でしたね。

三角関係や修羅場を思わせるディープな描写に興味を持ったのは百恵さんの影響かな。“絶体絶命”の〈やってられないわ〉、“プレイバックPart2”の〈馬鹿にしないでよ〉のような、固定観念を崩して上位に立つ感じがありながら、実は人知れず寂しさも抱えている。そういう強い女性像、複雑な心模様が好きなんです。

中3のときに作った“奪い愛”という、文字どおり〈略奪愛〉がテーマの曲があるんですけど、ネットで読んだリアルな体験談を参考にして書きました。周りの子にドン引きされたものの、その感性が“エロス”のような曲に繋がったと思います」

――高い声よりも低い声になりたかった?

「小学生の時点で女の子らしいことが好きじゃなくて、男の子になりたかったくらい。恋愛対象は女の子じゃないけど、同性にモテたかったんです。例えるなら、ヤンキーの長みたいに慕われたかった。それには低いほうがカッコいいなって。マジョリティよりはマイノリティへの憧れがあったのかも。誰かと被るのは嫌。ただ、真似されるのは好きでした(笑)」

――ラナメリサさんの“焼ける肌”からは、理想と現実のギャップが伝わってきますね。

「10代の終わりに書いた曲です。小さいときから〈早く大人になりたい〉という感情が強くて、未来にすごく期待してたのに、いざ直前で子供と大人の境目がないことに気づいてしまう。むしろ、なりたくない意思も湧いてくる。だけど、受け入れるしかない……そんな自問自答を歌っています」

 

NICO Touches the Wallsで開眼したギターとバンドの魅力

――3つ目は、NICO Touches the Wallsのアルバム『QUIZMASTER』です。

NICO Touches the Walls 『QUIZMASTER』 キューン(2019)

「中学の頃にいろんなアニメが好きで、主題歌をきっかけにバンドの曲を聴くようになるんです。なかでもハマったのが、NICO Touches the Walls。高校の軽音部からエレキギターを始めて“THE BUNGY”を最初にコピーしました。

NICOは私が高1のとき(2019年)に活動を終了してしまうんですが、ラストアルバムが『QUIZMASTER』になります。“焼ける肌”はこれを聴きまくってた青年期真っ只中に書いた曲だったりしますね。けっこう特殊な作品なんですよ。内容も人生に疑問を投げかけるような」

――ですよね。アルバムのテーマが自分たちの中にある〈?〉で、曲名に漏れなくクエスチョンマークが付いている。

「なので、誰かと共有するというよりは、ひとりで考え事をしたいときに寄り添ってくれたアルバムなんです。ちょうど18歳くらいになる時期だったから、〈どうして夢を見るの?〉と歌う“18?”も死ぬほど刺さってました。

もともとはメロディやリズムを主に聴くタイプのリスナーだったんですけど、NICOはすべてを把握したくなるというか。俯瞰するような、核心を突いてくるような歌詞が自分と合ってたんだろうな。私も疑問を抱いた際、納得いくまで考えて答えを出すのが好きなんです。

“THE BUNGY”みたいなカッコいいギターリフもいっぱいあるし、バンドが好きになれたのと、イントロだけで〈あの曲だ!〉とわかるナンバーが最高だと感じるようになったのは、NICOのおかげだと思います」

――ちなみに、アコギはもっと前から弾いていたんでしたっけ?

「中学からですね。何ができるようになったらカッコいいかなと思って、シンガーソングライターをやる部活に入りました。単純に弾けたらカッコいいじゃないですか(笑)。歌よりもギターへの関心が先だったんです」