2026年4月9日、東京・渋谷TOKIO TOKYOで開催された〈ラナメリサ presents 太陽に妬かれて vol.2〉。シンガーソングライターのラナメリサによる自主企画イベントの第2弾だ。穂ノ佳との対バンで観客を魅了した同公演について、矢島由佳子(音楽ライター/編集者)によるオフィシャルライブレポートが届いた。 *Mikiki編集部


 

4月9日、渋谷・TOKIO TOKYOにて、シンガーソングライター・ラナメリサによる自主企画イベント〈ラナメリサ presents 太陽に妬かれて vol.2〉が開催された。今年2月には十明を迎えてvol.1が行われたが、今回も2マン形式で、ゲストは穂ノ佳。サウンドの方向性は違えど、自身の経験から湧き出た感情を音の中で表現している点で共通する二人。「大人」や「成熟」とは何かを探す過程にいる二人のライブは、傷付くことや迷うことの豊かさを私たちに教えてくれた。

最初にこの日のステージを彩ったのは、穂ノ佳。2022年にVictor Entertainment/Colourful Recordsのオーディションでグランプリを獲得し、近年盛り上がっているオルタナティブロックシーンでも存在感を見せているソロアーティストだ。

穂ノ佳の持ち時間は30分、全7曲。MCは「よろしくお願いします」と「ありがとう」以外、ナシ。1音目から、歪みが効いた鋭利な音色のギター、心臓まで響いてくるほどゴリゴリにうねるベース、キックが踏まれるたびにライブハウスの壁が激しく震えるパワフルなドラムに、穂ノ佳の儚さと揺るがない意志の両面が表れた声を乗せた音の塊が、止むことなく洪水のように降り注がれる。ステージから溢れた音を浴びていると、自然と脳裏にいろんな過去がフラッシュバックした。うしろから白い光が差すステージの中から鳴らされる、痛みと願いが込められたその音と歌は、一人ひとりの聴き手の、瘡蓋になりきってないのに放っておいた心の傷や、叫びたい衝動を抑えた記憶などを蘇らせる。

しかし穂ノ佳は、たとえば“二人日記”でシャウトする瞬間も、“生きている”や“花咲く丘”でメンバーとキメを合わせる瞬間も、“彷徨わない”に入る前のセッションの瞬間も、無邪気な笑顔を見せた。それも「とびっきり」という言葉がぴったりなほどの、綺麗な笑顔だ。そして、最後に演奏したのは“やさしい雷”。そのタイトル通り、痛みも悲しみも怒りも焦燥感も、すべて“やさしい雷”で切り裂いてくれるようなバンドアンサンブル。暖かいオレンジ色の光とともに、穂ノ佳の包容力に優しく抱きしめられるエンディングだった。

ホスト役のラナメリサは、昨年11月にメジャーデビューしたばかりで正式リリースしている楽曲は2曲のみだが、未発表曲含め10曲ものオリジナル曲にカバーを加えた全11曲で、自身の現在地を表現してみせた。1曲目は、アコギ1本で“エロス”を弾き語り。インパクトのある歌詞によってSNSで注目を集めた楽曲であるが、ラナメリサにとって、エロスや色気が漂う楽曲はこれだけでない。最後に届けられた、4月22日にリリースされる新曲“BAD愛”も、軽快なサビのメロデイが印象的であるものの、〈整合性のないあなたに惹かれて〉いる私の「BAD愛=悪い愛」を歌った一曲だ。

他者には秘めたい心情や情景まで生々しく歌いながらも、バンドメンバーがジョインして演奏した3曲目“街灯に恋したい”の〈タクシーで酔って溢れ出す気持ち ゲロって3万円〉というユーモラスな遊び心あるフレーズでは、ステージ前に集まったオーディエンスの心と身体をほぐす。そんなライブパフォーマーとしてのバランス感もお見事。さらに全編通して特筆すべきは、ラナメリサというボーカリストの表現力だ。中盤に披露した“電信柱さん”では冒頭の〈春に咲く〉の「は」の発声だけで春の情景を、“夏一辺倒”ではサビの〈戻らない夏よ〉の「よ」で夏の終わりの情景を、はっきりと浮かび上がらせるような力がある。

 

また、私がラナメリサという存在に惹かれるのは、彼女がいろんな女性像を描くから。ブルースやジャズの要素を含む音の中で昭和の歓楽街を歩いている女性を想像させることもあれば、まだ誰も歌にしていない「今」の女性像を歌うこともある。自分の欲望を邪魔するものには抗って、自分がほしいものに手を伸ばそうする“DUMMY”の主人公、〈隣に居るその子を今すぐに/私のために裏切って〉と言えてしまう“奪い愛”の主人公、さらにこの日オーディエンスのクラップや声が特段大きくなった“愛でてよベイベー”に登場する、相手に振り回されていながらも〈私のこと嫌い? 嫌い? 好き?/匂わせてんなよふざけんなガキ〉と強い言葉を返す主人公――これらは彼女自身の理想像を投影している部分もあるのだと思うが、ここ数年に世の中で広まった「ガールクラッシュ」や「主体性のある女性像」などの先で、今女性たちが共感したり憧れたりする像を見せてくれるポテンシャルを感じる。

そういった要素を含む中で、〈太陽に妬かれて vol.2〉は、人生という物語における「迷い」の1ページをオーディエンスと共有するものだった。そもそも、大人と子どもの狭間で漂う感情を歌った“焼ける肌”や、仮タイトルは“Kurage”だと言った未発表曲が象徴するように、ラナメリサは迷っている自分も歌にするタイプのシンガーソングライターだ。そしてこの日、MCでは「どうなっていきたいんですか?って自分に問いかけることが多くなった」「まだまだ満足のいくようなライブができているかは……自分でも探っている」「道中でいろんなことに挑戦していけたらなと思っている」と素直な気持ちを語った。それを見ながらこちらの心に刻まれたのは、AIがものすごい速度で正解を叩き出す時代に、「迷っている」表情こそ、人間的で官能的なものとして輝くということだった。

アンコールでは、8月23日に〈太陽に妬かれて vol.3〉を開催することを発表したあと、「これ神曲じゃん」と思ったというベンソン・ブーン“Beautiful Things”のカバーを、高校生ぶりにエレキギターを担いで歌った。本編最後、彼女は「いつまでも私の味方でいてください。私も味方でいるので。一緒に行こう」という言葉を贈った。自分の迷いを受け入れ、聴き手の迷いも肯定する、ラナメリサ。この物語の続きは、どんなシーンが描かれるのだろう。

 


LIVE INFORMATION
ラナメリサ presents「太陽に妬かれてVol.3」

2026年8月23日(日)東京・渋谷 TOKIO TOKYO
開場/開演:17:30/18:00
ゲストアーティスト:未定
オフィシャル先行受付中:https://eplus.jp/sf/detail/4454110001-P0030003?P6=001&P1=0402&P59=1
受付期間:2026年4月9日(木)22:00〜2026年4月19日(日)23:59

 

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