©Paddy Renehan

 この夏の〈サマソニ〉出演にて初来日を控え、さらには〈SUMMER SONIC EXTRA〉としての単独公演も決定しているフローレンス・ロード。彼女たちはアイルランドのウィックロー州ブレイにて2019年に結成されたロック・バンドで、BBCの選ぶ〈Sound Of 2026〉リストにも名を連ねるなど、ここ1、2年で急速に注目を集めてきた期待のニューカマーだ。音楽性の違いはさておいて大雑把に女性バンドとしてカテゴライズすればラスト・ディナー・パーティーのネクストを望まれている存在とも言えるのだろうが、彼女らが主に大学で出会った面々で結成されたのに対し、フローレンス・ロードにはもともとの幼馴染によって結成されたというヒストリーの積み重ねがある。

 ブレイという町はシネイド・オコナーが長く住まいを構えていたり、近郊で生まれたホージアの通っていた学校があったりもする、かつてはリゾートで栄えたという沿岸の都市だ。そんな環境で育った同級生のメンバーたちは10代の頃にバンドを結成。リード・シンガーでギタリストを務めるリリー・アロンの自宅の庭にある物置小屋に集まって曲作りや演奏を始め、やがて魚眼レンズで撮影した演奏動画をSNSに投稿することで注目を集めていった。結成時からの影響源となったアーティストは、ウルフ・アリスやクランベリーズ、ビーバドゥービー、アラニス・モリセットら。学校の音楽コンクールで優勝してレコーディング資金を得た2022年には初の音源“Another Seventeen”を発表し、オリジナルと並行してパラモアやビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴらのカヴァーやライヴの動画を投稿しながらファンベースを強固に構築していった。そんなフレッシュな存在感には当然ながらメジャー大手も注目することとなり、バンドは学校の卒業から程なくしてワーナーとレコーディング契約を結んでいる。

 メジャーでの初リリースは2025年の“Heavy”。ここではヴェテランのジョン・ヒルをプロデューサーに迎え、90年代オルタナやグランジの影響下にあるギター・サウンドと親しみやすい等身大のリリシズム、エモーショナルなメロディーを備えたモダンな音作りという彼女たちの持ち味がより明快に提示されていた。それに続いてはダン・ニグロ制作のアコースティックな“Caterpillar”、退廃的なグランジ風味の軋む“Figure It Out”といった振り幅を見せつつ楽曲を重ね、それらを初のミックステープ『Fall Back』という形でまとめている。そのような音源リリースで脚光を集めていく一方、バンドはオリヴィア・ロドリゴのワールド・ツアーの一部公演でサポートに抜擢されたほか、ソンバーとのツアー開催や、憧れのウルフ・アリスやラスト・ディナー・パーティーのツアー・サポートも務めるなど、翌2026年にかけて大きな舞台も経験してきた。

FLORENCE ROAD 『Between Seasons』 ワーナー(2026)

 そうした好況も踏まえて今年の3月にはEP『Spring Forward』を配信しているが、このたび〈サマソニ〉出演も記念するタイミングで日本独自企画盤として届いた『Between Seasons』は、タイトル通りに季節を名に刻んだ2つのデジタル作品をコンパイルしてライヴ音源も追加した大充実の一枚だ。『Spring Forward』のリード曲であった“Hanging Out To Dry”を筆頭に、持ち前のインディー精神と衒いなくポップな感覚が強固なバンド・ケミストリーによって結えられた好曲が並んでいて、単純に本邦デビュー作として捉えても遜色のないアルバムに仕上がっている。

 ちなみにこのバンド名は彼女たちにとって馴染み深い地元の通りの名前に由来するそうだが、歩き慣れたそのフローレンス・ロードを踏みしめて広い世界へ羽ばたいていった4人の音楽が、ここからさらに多くのリスナーたちと出会っていくことは間違いない。初来日と今後の飛躍が本当に楽しみだ。

 


フローレンス・ロード
リリー・アロン(ヴォーカル)、エマ・ブランドン(ギター)、アルバ・バリー(ベース)、ハンナ・ケリー(ドラムス)から成るアイルランドの4人組バンド。2019年に結成され、2022年に初のシングル“Another Seventeen”を配信。2025年に初のミックステープ『Fall Back』をリリースし、BBCの〈Sounds Of 2026〉にノミネートされる。今年に入ってEP『Spring Forward』を発表し、〈サマソニ〉での初来日も控えるなか、日本編集盤『Between Seasons』(ワーナー)を8月5日にリリースする。