Iustitia sine misericordia――〈慈悲なき正義〉がはびこる時代の渦中で咲いた異形の楽曲たち。フリーキーな遊び心と嘘のない自然体な姿勢を響き合わせた新作は5人のいかなる美学を映す?
2022年の再結成から、2024年についにメジャー・デビューを果たしたkeinが、待望のアルバム『Iustitia sine misericordia』(ユスティツィア・シーネ・ミゼリコルディア)をリリースする。中世イタリアの神学者トマス・アクィナスの言葉から引用したタイトルは、眞呼(ヴォーカル)いわく「慈悲なき正義」を意味し、いまの時代の一側面を表したものだという。今作でも詩的かつ抽象的な歌でリスナーの脳を刺激する一方、フィジカルな躍動感を増したサウンドはラウドやオルタナティヴ・ロックからもはみ出して百花繚乱に咲き乱れている。さらにキャッチーさも増しているから、愉快だ。本人たちは相変わらずマイペースだが、自分たちの音楽をとことんおもしろがれるようになっているのは確かだ。
――『Iustitia sine misericordia』は、独自の世界を持ちながら、幅広い曲を揃えたkeinの奥深さを感じさせる作品です。
玲央(ギター)「幅は広いなとは思いました。ただ、EPを2枚出してきて、振れ幅を覚悟できた状態での3部作と言ったら大袈裟ですけど、一連の流れからは不思議ではないなと」
――メンバーそれぞれが作曲するkeinならではの多様性がありますが、自由度がより上がっています。玲央さん作のインスト“Superbia”に続く2曲目の“自壊の肖像”もヘヴィーながら、どこか耽美的でもあります。
玲央「アルバムを作るなら、次々にアイデアは出てきますよね。“自壊の肖像”は、ひたすら淡々とした世界観ですね。サビも落ちていく感じで、全体が物悲しいようなイメージ」
――淡々とした曲もシンプルな曲も複雑な曲も、全体的にバンドのグルーヴが増していて、それが作品に統一感をもたらしている印象です。
玲央「正直、体感はあまりないのですが、お互いのタイム感がわかるようになったところはありますね」
Sally(ドラムス)「今回は、レコーディング前にスタジオでアレンジを詰めたんです。まず僕がドラムを作って、それぞれ練ったものを重ねていった。その結果なのかな。これからのツアーで、その〈バンド感〉は見えてくる気がしますね」
――カオスな“Cradle Lull”や、ロカビリーっぽくも妖しく躍らせる“Jack-o’-lantern”は攸紀さんの真骨頂ですかね。
攸紀(ベース)「ちょっとカオスな感じはしますね。遊び心というか。“Jack-o’-lantern”はもともとシャッフル・ビートではなかったんですけど、やってみるとリフにバチッとハマりました」
Sally「かなり変態的な曲だと思いました。キックをバンバン踏んでほしいという話だったので、できるかぎりフィジカル的に突っ込んだ曲になったかな」
aie(ギター)「我々の得意なアプローチというか、keinがやっていておかしくない曲というイメージですけど、よりシンプルになった気はしますね。“Cradle Lull”のほうがトリッキーだし……いや、“Jack-o’-lantern”もトリッキーだ(笑)」
攸紀「やりすぎた感は否めない(笑)。でも他の曲でもそうですけど、よくこのサウンドにこのメロディーが乗りますよね」
眞呼「それはやらなきゃいけないと思い」
――“ネオン”も、洒脱で都会的なサウンドに対し、メロディーや歌は幻影的でサイケな香りがします。そしてニューウェイヴと80年代の歌謡曲が出会ったような“The Messy-Haired Grimalkin”は眞呼さんの歌も新鮮です。
aie「俺の中では、スマッシング・パンプキンズとかガービッジのイメージではあったんだけど、眞呼さんのアイデアで、日本の80年代後半の感じになっていった曲でした」
眞呼「人が書いた曲なのに申し訳ないなと思ったんですけど、やっちゃいましたね。タイアップを取れないかなと思って、歌メロは作りました(笑)」
――80~90年代のヴィジュアル系を彷彿とさせる“PROTOCOL:IMMUNITY”などもあり、レンジの広さを許容しているのが今作のおもしろさだと思います。
aie「コンポーザー各人がナチュラルに作ったからじゃないかな、嘘をついてないっていうか。〈keinはこうだ〉と決めつけて音楽を作ってたら、また違っただろうし、常に自然体だったのがよかったのかも」
玲央「ただ身内ノリでやっても楽しいのは自分たちだけなので、そこのバランスはみんな自ずと取っている。それもkeinだなと思いますね」
keinの作品を一部紹介。
左から、2025年のEP『delusional inflammation』、 2024年のEP『PARADOXON DOLORIS』(共にキング)
メンバーの関連作を紹介。
左から、lynch.の2026年作『CLIMAX』(キング)、 deadmanの2024年作『Genealogie der Moral』(deadman)
EVENT INFORMATION
タワレコ インストアイベント
2026年10月10日(土)新宿店
2026年11月2日(月)名古屋パルコ店
2026年11月16日(月)梅田NU茶屋町店
2026年11月24日(火)新宿店
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t20182/
