22年ぶりの復活を果たした5人がメジャー・デビュー! ヘヴィーだが俊敏、複雑にしてポップ、漆黒ながら眩い――『PARADOXON DOLORIS』に刻印されたパラドックスは何を証明する?
97年に眞呼(ヴォーカル:LOA-ROAR/deadman)、玲央(ギター:lynch.)、攸紀(ベース)を中心に名古屋で結成され、独自の匂いを放つ音楽でその名を全国区に広げながらも2000年に解散したkein(カイン)。そこから時を経た2022年5月、解散時のメンバーだった眞呼、玲央、攸紀、aie(ギター:deadman,the god and death stars,/gibkiy gibkiy gibkiy)に新たにSally(ドラムス:101A)を加えた5人編成でkeinの復活が発表された。
「2022年にlynch.が一時活動休止をした際に、自分の音楽人生を振り返る機会があって。そのときに真っ先に浮かんだのがkeinだったんです。僕自身のバンドの原点で、何よりメンバーは僕から見て才能の塊で。もう一度keinをやりたいんですけど、どうですか?と持ちかけたのが最初でした」(玲央)。
この申し出に即決だったと眞呼は語る。
「当時、これからっていう矢先での解散だったしkeinのことはずっと頭にありましたね。まだみんな若かったし、口下手な人間が揃っていたので、メンバーそれぞれが何か誤解をしたまま、やりたかったことをやれてないまま終わってしまった印象があった。でも、いまだったらやれるなって」(眞呼)。
「やるからには徹底したかった」(玲央)と2023年にはツアーと、23年越しのファースト・アルバム『破戒と想像』を発表。そしてこのたび、EP『PARADOXON DOLORIS』でメジャー・デビューを果たした。keinの音楽をカテゴライズ、また言語化するのはとても難しい。強いていうならば、自由で思慮深く、それでいて内なる獣を解き放つような獰猛なエネルギーで満ちている。
「バンド名自体がドイツ語で〈ない〉を意味する言葉だし、もともとkeinには型がないんです。音楽的な背景としては、コーンとかの2000年前後のニュー・メタル勢、その頃のロックとか共通して通っているものはある。でも全員が違う方向を向いているのが、僕は〈バンド〉だと思っているんです。それぞれ個を確立した5人が、そのときにカッコいいと思ったことをやる。〈この5人で出す音がkein〉というのが理想」(玲央)。
ダークでスピード感のある“Spiral”はスタジオで1から作ったが、その他の曲は各自の作ったデモを元にセッションで仕上げられた。ドライブ感のあるアンサンブルを基調に変拍子や不協和音が加わり、“Toy Boy”ではキャッチーでありつつ突如時空が歪むような展開でリスナーを驚かせたりと、そのサウンドは一筋縄でいかない。個々のひらめきやフレーズを引っ張り出し合う、音楽的な会話がふんだんな制作だったという。
「セッションで作り上げて終わりではなく、レコーディングでも〈降ってきた〉みたいな感じでギターを変えたりするんです。aieさんが人を笑わせようとして弾いたギターがよくて、aieさんがそう弾くなら僕もギターを変えよう、みたいな。“Spiral”も“Puppet”もレコーディングでガラッと変えてます」(玲央)。
眞呼もまたセッション時にその場で仮歌を乗せていく。重戦車的ヘヴィネスとファンキーさという相反する要素が同居するkein流ミクスチャー“Rose Dale”でのラップや高笑いもサウンドからおのずと引き出されたものだ。
「歌詞もそうですね。作曲者にテーマやイメージは聞いてないけれど、傀儡や案山子が出てくる“Puppet”は、玲央さんも(映画『チャイルド・プレイ』に登場する)チャッキーみたいな気持ち悪くもポップな感覚を欲していたそうで。“Toy Boy”も攸紀さんがイメージしていたというおもちゃ箱と、歌詞がシンクロしていて自分でも怖っ!ってなりました」(眞呼)。
ときに寓話的で、またシビアな現実を鋭く突きつける歌と多彩な感情や織り込んだサウンドは、紐解くほどにさまざまな顔を見せる。リリース後の東名阪ツアーでも、keinならではのアンサンブルの妙味を楽しんでほしい。
「ライヴではよりダイレクトな表現になると思います。ただ、aieさんが作品と同じことを弾くと思えないし、そこからどんどんバンドも転がっていく。ツアー中にアレンジが変わるかも」(眞呼)。
「人間っぽいですよね(笑)。でもライヴで大事なのはアレンジよりも、みなさんに僕らの気持ちが伝えられたかどうかなので」(玲央)。
メンバーの関連作。
左から、deadmanの2024年作『Genealogie der Moral』(deadman)、lynch.の2023年のEP『FIERCE-EP』(キング)、the god and death starsの2018年作『funky ghost hollywood』(david skull no records)、101Aの2019年作『dance in a dim....』(FILM.4)
keinの2023年作『破戒と想像』(ベルウッド)
LIVE INFORMATION
kein TOUR2024〈PARADOXON DOLORIS〉
2024年12月4日(水)、5日(木)大阪Yogibo META VALLEY
開場/開演:18:30/19:00
2024年12月18日(水)、19日(木)新宿LOFT
開場/開演:18:15/19:00
ツアー詳細:https://kein-official.jp/live/live_20240926.html
EVENT INFORMATION
kein『PARADOXON DOLORIS』発売記念サイン会
2024年12月6日(金)タワーレコード梅田NU茶屋町店
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2024年12月20日(金)タワーレコード新宿店 9Fイベントスペース
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