ふと〈冬寂(ウィンター・ミュート)〉なんて言葉を思い出してしまった私はオールドスクールか。SerphやKASHIWA Daisukeらを送り出してきた名門nobleのニューカマー。チルウェイヴ、LAビートを通過した電子音楽に音声ライブラリーのウィスパーヴォイスが溶けこむ。電子少女が夢見る白銀の世界。浮遊するシンセと時間軸を削ぎ落としていくビートが優しくも儚い風景を映し出し、しんしんと降り積もる雪のように冷たい音色と歌声は温かなハーモニーとなって限りない多幸感と孤独を淡く照らし出す。センチメンタルな冬の旅、メランコリックな消失を描くドリーミーな電子音楽の最高傑作!!

 


 

SoundCloudを通して公開した楽曲が国内外で話題となり、早くからその動向に注目が集まっていたトラックメイカー、mus.hiba。あくまでもネット上を発信の場としてきた彼が、ここにきて正式なファースト・アルバムを完成させた。音声ライブラリ〈雪歌ユフ〉のヴァーチャル・ヴォイスによって、生身では表現できないような寂寥感を抽出する手法はここでも健在だ。〈雪〉〈冬〉をキーワードとした静謐な音作りも全編で貫かれていて、コンセプチュアル・アートとしても大いに楽しめる。LA周辺にも通じるビートやミニマルなトラック、身体をふわっと浮き上がらせるようなエレクトロニカ・サウンドも含めて、まるでインターネットを由来とする2010年代の音楽をひとつに集積させたような作品だ。