あの時代の、そして永遠のサウンドトラック

 サイモン&ガーファンクルがデビューしてから50年が経つ。1970年の解散以降も、二人が一緒にステージに立つことは幾度もあったが、彼らが本格的に(というのも奇妙だけど)活動したのは、その50年の中の僅か7年程度だ。ただし、その7年間ほど、アメリカ社会が激しく動いた時代もなかった。

 なにしろ、1963年には、公民権運動が活発化、人種差別撤廃を訴えるワシントン大行進には20万人が参加した。そのとき、キング牧師は「私には夢がある」と語りかけ、ボブ・ディランは「法律は白い肌を守るためにある」と歌って政府を攻撃した。そして、その3カ月後には、ケネディ大統領が暗殺された、そういう年だった。

SIMON & GARFUNKEL コンプリート・アルバム・コレクション SMJI(2014)

 彼らがデビューした翌1964年には、ビートルズ旋風がアメリカに押し寄せ、ポップ・ミュージックは新しい時代へとなだれ込む。その後も、公民権運動には拍車がかかり、ベトナム戦争への反対運動が加わって各地で学園闘争が勃発、大人たちが築いてきたそれまでの価値観に異議を申し立てる若者たちの運動がありとあらゆる形で激しくなっていく。

 そういった時代を背景に、彼らはみずみずしい音楽を次々と生み続けた。アメリカという国と向き合い、複雑化する人間関係がもたらす孤独感や疎外感と向き合い、老いや死という深刻な問題でさえも、疎かにすることがなかった。しかも、彼らは、ありきたりな表現は避け、自分たちならではの言葉で、ハーモニーで、問いかけ、語りかけた。

 『水曜の朝、午前3時』から『明日に架ける橋』まで、彼らが残した5枚のアルバムは、文字通り、その時代のサウンドトラックとして存在した。今回のBOXは、当時の5枚のオリジナル作品に、1981年の『セントラルパーク・コンサート』や2009年に発売された『ライヴ1969』等々が加わって合計11タイトル(※)だ。彼らの清冽な歌声は、この50年の間に時代を越え、永遠という言葉さえも寄り添わせるようになった。そんな気がする。

※『Old Friends - Live On Stage』は2枚組で、全体では11タイトル12枚組ボックスとなる