近年では2012年に英国のインディーズ映画「Electric Man」(残念ながら我が国では未公開です)に出演し、凶暴かつ間抜けな悪役を演じたこと以外大きなトピックの無かったFISH(DEREK WILLIAM DICK)…と、情報弱者の僕は勝手に寂しがっていたのですが、昨年の後半には6年振りとなるアルバムのリリースに併せてツアーを開始していたようです。てぇことは新譜が出ていたということですか?…し、知らなかったわー(恥)。
ぐずぐず言っていても始まらないので早速そのアルバムを手に入れるべく捜索を開始したのですが、Snapper Musicとのディストリビューション契約を解消して以降新たな販路を持たずにやっているようで、相変わらず手売りのみなんですね。英国ポンドの為替レートに憤慨しつつ、DVDとMARK WILKINSONの美しいアートワークが散りばめられたハードカバー付きのデラックス版を急ぎオフィシャルサイトで注文しました。
…えーと、FISHです。身長2mのスコットランドの詩人。MARILLIONの初代ボーカリスト。88年にバンドを出奔して以降はソロボーカリストとして、または役者としての活動を継続し今に至ります。ソロへ転向して以降はポンプ(プログレ)から徐々に遠ざかり、2004年に発表されたアルバム『Field Of Crows』をもってより広範なブリティッシュロックの歌い手としての立場を確立した、というのが僕の認識です。従来よりやや重たいサウンドをバックに、少しく内省の方向に寄った『13th Star』(2007)においても大まかな印象に変化はなく、で、そこから6年待たされたという訳です。
さて、そんなこんな。昨年リリースされた新譜『A Feast Of Consequences』ですが、前作に聴かれた重さを僅かに後退させテンポアップした楽曲を配した一方、起伏に富んだ展開とシンフォニックな味わいを幾らか取り戻しており、ちょっとだけプログレ側へ揺り戻した感が伺えます。これがなかなかに美味しいバランスで、ここ数作の集大成と呼べる完成度だと言えましょう。
前作に続いてプロデューサーはCALUM MALCOLM(元THE HEADBOYS、という注釈にどれだけ意味があるのかどうかは定かでありませんが)。FRANK USHERから交替したROBIN BOULTのギターを幾分柔らかに聴かせた以外サウンドのベクトルに大きな変更はなく、してみると今作での印象の変化はやはり楽曲そのものの質によるのでしょう。
いやー、これは実に素晴らしいアルバムですよ。なんといっても全11曲約67分を最後までダレずに聴かせる力がある。オーディオスピーカーに対峙して、じっくりと聴ける1枚です。オマケのDVDやハードカバーには本作の制作に至る経緯が詳細に語られていますが…すみません、僕の英語力では翻訳に物凄い時間が掛かってしまうでしょう。ざっと読んだ感じでは世界各地の古戦場を訪れての印象だとか興味が曲作りのモチベーションとなったようです。うーん…してみると〈なりゆきの宴〉というタイトルは、余り楽観的なものではないのかも知れませんね。
85年の暮れに日本青年館で観たMARILLIONの記憶は未だ鮮明ながら、やはり新しいアルバムが出れば生演奏を聴きたくなるのが人情ってものです。オランダのプログレサイト、〈Dutch Progressive Rock Page〉の年間ベストアルバムの3位だったんだよ!とか書いてみても詮方なきことではありましょうがねぇ(泣き笑い)。