あるミュージシャンが何をカバーしているのか?というのは僕にとって割と重要なことだったりします。自分と同じバンドが好きだったり意外な選曲に驚かされたり、その人の音楽的背景が見えるとこちらの思い入れも深くなりますから。

で、僕は日本で128番目くらいにDAN SWANOに入れ込んでいる(世界でも1037番目くらい)聴き手であると自負しておりますが、とにかくこの人のカバーは選曲が独特、かつ僕の好みと被るので毎回非常に楽しませてもらっています。この、見た目のいかついスウェーデン人マルチミュージシャン/プロデューサーは大変に多才で、ちょっと訳の分からない数の名義で楽曲をリリースしていますが、それぞれ割と律儀にカバー曲を仕込んでくるのです。

まずはDAN SWANOの名前を世に知らしめたバンド、EDGE OF SANITYから。1993年の3rdアルバム『The Spectral Sorrows』より、MANOWARのカバーです。

実に渋い曲を選んだものです。基本デスメタルであると巷間に認知されていたEDGE OF SANITYですが、この曲ではDAN SWANOが突然メロディを歌うもんだから皆びっくりしちゃったのです。しかし、翌年リリースされたミニアルバムには更なる驚きのカバーが収録されていました。

ス、スス…STINGですか!?ちょっと突然にも程がある感じですが、まぁDAN SWANOが好きなのでしょう。そりゃまぁ、仕方がない。EDGE OF SANITYはこのミニアルバ『Until Eternity Ends』を境に音楽的幅を急速に拡げていきますが、これはとりもなおさずDAN SWANOの創作欲求がそうさせたもので、当然ながらバンド内での軋轢を生むことになってしまいました。

 

次はDAN SWANOとPETER TAGTGRENの連名でRONNIE JAMES DIOのトリビュート盤に提供された1曲。これも、よりにもよってこの曲か!という類のものです。

RONNIE JAMES DIOの歌唱スタイルを真似ることは端からあきらめ、しかし歌メロをきっちり完コピすることで一種独特の雰囲気を醸し出すことに成功しています。中途半端なアレンジや本家の域には遥かに及ばない歌が多くて結構がっかりする本作2枚組においては白眉の出来ばえを誇る1曲となっています。因みにこのアルバムは99年、まだRONNIE氏の存命中にリリースされたものです。

 

さて、お次はODYSSEY名義で2010年にリリースされたアルバム、『Reinventing The Past』から。これは実質DAN SWANOの趣味によるカバー集ですが、かつてODYSSEYの名前でリリースした3曲を再録するためにわざわざ名称を復活させたものです。ホント、律儀な人なのですよ。本作にはDEPECHE MODEとか、おかしな選曲のカバーが他にも収録されておりますがここに貼るのはMICHAEL SCHENKER GROUPのこれ。

なんだよ、別に普通にメタルじゃん、というご意見もございましょうが、実はこれまたちょっと捻くれた〈孫カバー〉なのですね。DAN SWANO本人も認めておりますが、これは同郷の様式ドゥームメタルバンド、MEMENTO MORIのバージョンをカバーしたものである、と。

MESSIAH MARCOLINのボーカルが痺れるほどにカッコイイ。これに目を付ける鋭さたるや、もうね、さすがとしか言いようがありませんですよ

 

まだまだ続きます。去年突然立ち上げられた新しいプロジェクト、WITHERSCAPEの限定デジブック版にボーナスとして収録された2曲のカバーから、初期JUDAS PRIESTの名バラードを。

んー、いいですねぇ、抜群ですわ。…以上に貼った曲をお聴きいただければお分かりの通り、この人は普通に有名なバンドのちょっとマイナーな曲を直球で完コピするのを好むようです。元曲への愛情溢れる感じが良く伝わってくるので、僕はこういう姿勢、好きですけどね。

 

更に一方、DAN SWANOはプログレ方面にも相当な拘りがございます。EDGE OF SANITYなき後、彼のメインバンドとなったNIGHTINGALE名義で発表されたカバーは幾つかありますが、僕があまりのことにひっくり返ってしまったのが…

GREG LAKEのこの曲を80年代っぽいB級産業ハードポップにアレンジしようという発想は一体どこからわいて出たのでしょう?録音にあまりお金の掛かっていない感じ(あからさまに打ち込みサウンドのドラムとか)がまた、実にいい味出してるんだよなー。この人にしては珍しく元曲から激しくアレンジしたパターンですが、こういうのも大いにアリですな。

 

もう1曲、イタリアはMellow Recordsが企画したMARILLIONのトリビュート盤(2010)にはUNICORNの名前でこれまた地味~な選曲。

静かなアコースティックの入りと後半の溌剌とした解放感の対比が際立っていて、正直オリジナルより好きなんです。あれっ、こんな良い曲だったっけ?とか思ってしまいましたよ僕は。しっかし、まるで躊躇なくSTEVE HOGARTHの歌う曲を選ぶんだもん。

他にも上掲のWITHERSCAPEの、2曲あるカバーのうちのもう1曲がGENTLE GIANTだったりとか色々あるのですが今日はこの辺で。DAN SWANOのオリジナルについては去年の夏にギターの録音が終わったと報告されて以来音沙汰のないNIGHTINGALEの新しいアルバムがリリースされたらここに書こうと思います…いつ出るのかはさっぱり分かりませんが…。