フィリップスの懐かしいレクイエム録音2題が豪エロクァンスで簡便に入手できるようになった。フルネのフォーレは1回目の1953年録音。音は古いけれど、これこそ心の奥を温めてくれる香りに満ちた演奏だ。かろく、まろく。カミーユ・モラーヌの柔らかで繊細な歌唱。デュリュフレが奏でるオルガンは、音楽をさらに包みこむような天上からの響きを思わせる。ケンペンが指揮するヴェルディでは、録音に際しイタリアのオケと合唱を望んだだけあって、激しい慟哭と終の悲しみが極大に振り切れる。ケンペンの企図にかなうブロウェンスティーンの歌唱も清く力強い。この録音の約7か月後、ケンペンは亡くなった。