タワーレコード・スタッフがブレイク前のアーティストをピックアップし、総力をあげてプッシュする企画=〈タワレコメン〉に選出された作品から、Mikikiが注目したアーティストをフィーチャーする不定期企画〈タワレコメンに迫りコメン〉。ちょっと久しぶりな第3回は、2016年7月度の〈タワレコメン〉に選出されたThe Wisely Brothersが登場です。キュートなルックスとは裏腹に、ゴリっと骨太なギター・ロック・サウンドを鳴らす彼女たちにレッツ・迫りコメン!

(左から)和久利泉、真舘晴子、渡辺朱音
 

去る619日に、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催された、シャムキャッツ主催の対バン・ツアー〈EASY TOUR〉の最終公演。KIRINJIGREAT3どついたるねんなどメジャー/インディーを越えた名立たるアクトが並ぶなか、ほぼ無名のニューカマーながら抜擢されたのが、このThe Wisely Brothersだ。真舘晴子(ギター/ヴォーカル)、和久利泉 (ベース)、渡辺朱音(ドラムス)による3人組ガールズ・バンドで、高校の同級生だった2010年に結成。以降は都内のライヴハウスを中心に、コンスタントな活動を続けてきた。真舘は、写真家の植本一子氏が下北沢に立ち上げた撮影スタジオ〈天然スタジオ〉の広告で、シャムキャッツの夏目知幸らと共にモデルを務めており、そこで彼女の顔を見たことのある読者もいるかもしれない。

そんな彼女たちがセカンド・ミニ・アルバム『シーサイド81』を発表した。約2年ぶりのリリースとなる今作は、ファニーで微笑ましいインディー・ポップといった印象が強かった前作『ファミリー・ミニアルバム』とは打って変わって、ヒリヒリとした切迫感を堪えたメロディーとパワフルなリズム・アンサンブルが存在感を放つ、堂々たるロック作品に仕上がっている。今回、MikikiではThe Wisely Brothersの3人にインタヴュー。この2年間に起きた意識変化と、〈おもしろいことをしたい〉という確固たる哲学に迫った。

The Wisely Brothers シーサイド81 ラストラム(2016)

〈EASY TOUR〉への出演が父の日のプレゼント

――まず、先日の〈EASY TOUR〉東京編でのライヴはいかがでした?

真舘晴子「〈どんな感じになるんだろう〉とドキドキしながらリハをやったんですけど、自分たちの音楽がバーッと響く感じがいつもと違っていて〈ウワー! 良いな〉と思いました(笑)。本番でも、大きなところでやる楽しさにすごくビックリして」

――あの日のライヴへの感想や反応で印象に残っているものはありますか?

真舘「女の子2人組のお客さんが物販に来てくれて〈今日いちばん楽しみにしていたんです〉と言われたことが、めっちゃ嬉しかったです。ライヴもすごく良かったと伝えてくれて。あの日のお客さんにとって、私たちは〈どんなバンドなんだろう?〉と想像できるような/できないような不思議な感じだったんでしょうね」

和久利泉「これまで女の人が話かけてくることはあまりなかったから、新鮮でした。しかも私たちと年齢の近い子が好きと言ってくれたのには、最初は戸惑ってしまったくらい嬉しかった」

――〈EASY TOUR〉で共演したバンドで、皆さんがずっと好きだった存在はいました?

真舘「父(真舘嘉浩)はKIRINJIが大好きで、私が小学生の頃から家でずっと流れていたんです。それで私も好きになって、いまでもよく聴いていて。なので、今年の2月に共演が決まったときは〈嘘か〉と(笑)。〈EASY TOUR〉がちょうど父の日だったから、それを父へのプレゼントにしようと思ったんです。私は今年から1人暮らしを始めたんですけど、実家を出る前日に父とご飯を食べに行って報告しました。すごくびっくりしていましたよ」

※数多くの書籍装丁、CDジャケットなどを手掛けているアート・ディレクター/グラフィックデザイナー。Manhattan Recordsのロゴ・デザイン、小西康陽著「マーシャル・マクルーハン広告代理店。ディスクガイド200枚。」の装丁などを担当している。

キリンジの2000年作『3』収録曲“グッデイ・グッバイ”
 

――お父さまは、この日The Wisely Brothersのライヴがスタートするまでの場内BGMを選曲されていたんですよね。実際に会場にもいらしてたんですか?

真舘「来てました。すっごく嬉しそうでした(笑)」

フランキー・コスモスを知って、音楽はこんなに素敵なものなんだと思った

――では、The Wisely Brothersとして3人に共通したルーツや憧れの存在と言えば?

真舘「結成して最初はコピーをやろうとなったんですけど、3人の女の子で何をやるかとなったときに、やっぱりチャットモンチーが出てきました」

チャットモンチーの2006年作『耳鳴り』収録曲“恋愛スピリッツ”
 

渡辺朱音「ちゃんとコピーをしたのは、チャットモンチーだけだよね」

和久利「オリジナルをずっとやってきて、いまふたたびチャットモンチーの凄さに気付いています。それぞれのパートの個性が光りすぎていて、本当にすごいバンドなんだなと思う。私たちも、めざしているのはそういうところで。それぞれがやりたいことをやっていながら、ひとつになっているという点で、チャットモンチーはその完成形な気がする」

渡辺「自分たちの音楽に、チャットモンチーの音楽性が100%出ているかと言われたら、そうとは言えないと思うんですけど、バンドの在り方や3人という部分では……(声が小さくなっていく)」

一同「ハハハハ(笑)!」

和久利「ボソボソ」

――ハハハ(笑)。でも、今回のミニ・アルバムを聴くと、3人の演奏にそれぞれ存在感があるように思いました。そもそも、どういう作品にしようと考えていたんですか?

真舘「難しかったよね。前作の次に、自分たちがどういう感じで行くべきなのか、私自身もバンドも〈どうしよう〉と思っていたんじゃないかな。音楽的におもしろくありたいし、楽曲では気持ち良いものや、落ち着けるものも欲しい。でも周りの人がやっているのと同じじゃ面白味がないし……という想いで、どう表現したらいいのかわからなくなっていたんです。リスナーとして、聴く音楽もどんどん変わってたし。ただ、曲を作っていくうちに、そうしたコンセプトから1回離れて、曲自体に集中するようになった。以前よりも音に集中するようになって、そうするとおのずと曲が活きてくるというか、曲が説明してくれるようになっていった」

――なるほど。ミニ・アルバムとしてこういう作品を作ろうというより、曲ごとにどうおもしろくできるか、どう育てていけばいいかに力を入れたということでしょうか?

真舘「そうですね。それで作品のタイトルを決めるときに、今回の作品でバンドが漕ぎ出した感じがあるように思えて。後付けですけど、それが作品テーマだったのかなって。いま何かに近付いていってる気がするんです。前の自分たちはもういないけど、それは悪いことじゃないなと思って、海辺から出発するというイメージで〈シーサイド〉と」

――実際、前作の『ファミリー・ミニアルバム』と今作とでは、だいぶ音の感じが違いますよね。

一同「ハハハ(笑)!」

渡辺「そうなんですよね」

――前作はおそらくローファイと言われるような……。

真舘「それ、言われてました」

和久利「ローファイってなんだろう?と検索しました」

2014年のミニ・アルバム『ファミリー・ミニアルバム』収録曲“トビラ”
 

――むしろ、今作はすごく力強くてロックなアルバムになっています。先ほど聴く音楽も変わってきたと言っていましたけど、前作以降どんな音楽を発見したんですか?

真舘「私のなかではフランキー・コスモスがすごく大きくて。とにかく声とサウンドがすごく好きなんです。フランキー・コスモスに出会ってから、私はそこまで音楽を好きじゃなかったんだなと思った。あるとき彼女の『Next Thing』(2016年)を聴きながら歩いていたんですけど、アルバムのなかの“On The Lips”という好きな曲が流れたとき勝手に涙が出たんですよ」

フランキー・コスモスの2016年作『Next Thing』収録曲“On The Lips”
 

真舘「英語だし、歌詞は全然わからないじゃないですか。でも、音だけでこんなに感動できるなんてすごいと思った。そこで、〈あ! 音楽ってこんなに素敵だったんだ〉と思っちゃって。それを忘れていたのか知らなかったのかはわからないんですけど、もし自分たちがそんな音楽を作れたら……と思ったし、自分たちも同じ音楽をやっているんだという気持ちになった。そういう音楽に出会うことは、こんなに大事なことだったんだ!とびっくりして。それを境に、すごくたくさんCDも買うようになりました。レコーディング中だと何を聴いていたのかな……その頃ペイヴメントを知って、あとはオールウェイズもすごく好きでした。あと、ミラー!」

オールウェイズの2014年作『Alvvays』収録曲“Adult Diversion”
ミラーの2000年作『Window』収録曲“Archiepelago”
 

――それにしてもフランキー・コスモスの音楽は、真舘さんがこれまで聴いてきた音楽となにが違っていたんですかね?

真舘「なんて言うんだろ……コミカルで可愛いのに、ロマンティックなんですよ。そのロマンティックさが、ものすごく好き。あとキャッチーなように見せて、すごく奥深くて。音作りももちろんですけど、そういうところに惹かれました」

――今作では、ギターの音の感じも前作から変化しているように思いました。すごくラウドな音を鳴らしていますよね。ギタリストとしての意識にも変化があったんですか?

渡辺「ギターを変えたのも大きいんじゃない?」

真舘「それもありますね。あと、今年ディレイのエフェクターを買ったんですよ。これまでは自分たちの音楽とディレイをどう合わせていいかわからなかったんですけど、今回の曲たちは合わせてもいいような気がした。というか〈合わせてもいいですか?〉という感じ(笑)」

一同「ハハハハ(笑)!」

真舘「ディストーションとかも、いままでジャキッと使える曲がなかったんですけど、今回は使って良いと思える曲だったんです」

――加えて、和久利さんと渡辺さんのリズム隊もすごくパワフルな演奏をしていて。

和久利「私はもともとガッと弾きたかったんですよ。今回の曲は、自分がやってみたいことを、晴子の曲から〈やっていい〉と許しを得たような気がしました」

渡辺「例えばどれ?」

和久利「“八百屋”ですね。東京カランコロンいちろーさんがプロデュースしてくださったんですけど、真ん中でガッと鳴らす部分があるんですよ」

渡辺「逆に私は落ち着いた感じの曲が好きかもしれない。誰かが弾きはじめたままなんとなく終わらない、みたいな。今作だと “鉄道”が良い感じにずっと鳴っている曲」

真舘「“鉄道”はいままでにない感じにしたくて。そこでceroを聴いたんですよ」

渡辺「“Summer Soul”を聴いたよね。この曲は私たちなりのシティー・ポップなのかも」

真舘「やったことのないジャンルにいきなり挑戦するような感じが楽しかった」

cero の2015年作『Obscure Ride』収録曲“Summer Soul”
 

――いちろーさんとはもともと面識があったんですか?

渡辺「前のミニ・アルバムが出たくらいの頃に、ライブハウスにいたら、たまたまいちろーさんがいらっしゃったんです。そこでCDを渡したら、ラジオで流してくれた」

――そのなかで、1曲プロデュースをお願いすることになった経緯は?

真舘「もともと“八百屋”という曲はあったんですけど、好きな曲なのに構成が上手く作れなかったんです。そこで困っていて」

渡辺「その流れでいちろーさんにプロデュースしてもらうという話をレーベルからもらい、やってもらうならこの曲じゃないかなと思いました」

和久利「東京カランコロンのコーラス・ワークがすごく好きで、“八百屋”にもその良さが入っていると思います」

真舘「サビの気持ち良さも」

渡辺「歌がよく聴こえるし、内容がすごく入ってくる。東京カランコロンの曲を聴いていても〈あーサビきた~! 嬉しい!〉みたいになるじゃないですか」

和久利「この曲の歌詞をおもしろいと言ってくださったんです。だから歌詞がストレートに入ってくるアレンジになっていると思う。歌詞を大切に作っていただきました」

東京カランコロンの2016年作『noon/moon』収録曲“カラフルカラフル/三毒”

 

〈おもしろいことをしたい〉という気持ちは常に強いんです

――あと今作の6曲は、リズムがどれも違っていて、それもすごく良いと思いました。“メイプルカナダ”のどんどんテンポが速くなっていくところを、真舘さんは〈飛行機が次第に加速して空に飛び立っていく〉と表していましたけど、まさにそういった疾走感がある。

真舘「私はマームとジプシーという劇団が好きで、よく観に行っているんですけど、彼らの舞台ではリフレインが多く使われていて、セリフを繰り返すんです。最初と最後が同じセリフだったり。同じ言葉なのに、最初と最後ではまったく意味が違って聞こえるんです。そのやり方がすごく好きで。“メイプルカナダ”の歌詞は繰り返しが多いと思うんですけど、この曲を作っているときもマームとジプシーの舞台を観に行っていて、私も同じ文章で違う場面を描きたいと思って。同じことを話しても、気分次第で(印象が)全然違いますよね。見た目は同じでも、同じじゃない。“メイプルカナダ”では、それを歌詞と音で表せたら良いなと思っていました」

渡辺「歌詞は暗いけれど」

真舘「そこに惑わされちゃいけないぞと。音があるとそれができるもんね」

――確かに“メイプルカナダ”では、〈何もないのに何も手放してないのに〉と3度歌われていますが、サウンドの勢いや重たさがフレーズごとに違うから、それぞれのニュアンスは異なっている印象を受けます。あとリズム面だと、“転がるレモン”はパンクとレゲエの合いの子みたいな感じだし、インストの“モンゴル”は最初はトロピカルなリズムで途中からセカンド・ライン調になったり。

真舘「おお!」

和久利「いま、そういうふうに言えばいいんだって教えてもらってます(笑)」

――ハハハ(笑)。“モンゴル”のような陽気でダンサブルなインスト曲が収録されているのも良いですよね。あの曲には、なにかモデルがあったんですか?

真舘「ないんですけど、作ってるときはただただ楽しかった。これは〈モンゴルだ!〉となって、情景が浮かびました」

和久利「“モンゴル”は朱音がいつもとは違うリズムを叩いていて、そこから始まったんだよね。この曲を合わせるのが楽しくて、スタジオでずっと演奏していた時期もあった。実際にはできなかったんですけど、みんなでモンゴルのホーミーを聴いて、採り入れようとがんばってみたりもして。今回のレコーディングではマリンバを入れたんです」

渡辺「ちょっと民族っぽさが増したような気がします」

和久利「おもしろいことをしたいという気持ちは常に強いんですよ」

――〈おもしろいことをしたい〉という言葉に、しっくりきました。その表現がいちばんこの作品を言い表しているかもしれない。

一同「嬉しい!」

――実際にいろいろなトライをしているし、この3人が普通じゃないことをしたいという気持ちが出ている作品だと思います。自分たちと同じようなスタンスで、おもしろいことをしようとしているなと思えるバンドは他にいますか?

一同「うーん……」

渡辺ミックスナッツハウスとか? 以前、自主企画に出てもらったんですけど、私がそれまで観たことがなかったくらいのキラキラした衣装でライヴをしていて。ステージにボールが転がしてあったり、ドラムの人は背中が光っていたり。とても楽しそうにやっていて、すごく好きになりました」

ミックスナッツハウスの2010年作『My Magnolia』収録曲“桜の集い”
 

和久利「あと、初めてねじ梅タッシと思い出ナンセンスを観たときに、語りが入った曲をやっていたんですよ」

渡辺「あれは感動あったね」

和久利「それを観たときに〈おもしろい!〉と思って」

渡辺「〈やりたい!〉と」

和久利「そのあとのスタジオでは、私たちもああいう感じで始まる曲が欲しいと言い合っていました」

ねじ梅タッシと思い出ナンセンスの2013年作『包丁とギターの調和』収録曲“とてもじゃないよ”
 

渡辺「おもしろいこととは離れるかもしれないですけど、ミツメの曲と曲を演奏で繋げていくパフォーマンスが好きなんです。ああいうのは、私はおもしろいと思うし、本人たちもすごく楽しいんだろうなと思う。良いなって」

真舘「前までは音楽以外のことでおもしろさを求めていたんですけど、いまは音でのおもしろさがすごく気になってきています。最近は同世代の人たちのCDをたくさん買うようになりました。すごく気になるし、いつか一緒にやりたい人たちが多い」

――ほう。真舘さんがいま気になっている存在は?

真舘「最近だとNOT WONKとか。あとYogee New Wavesも買いました。これまでは(年齢が)上の人たちをずっと見てきたんですけど、いまは同世代の人を見て、自分たちも同じ音楽をやっているんだな、と思うことが多い。それなら自分たちはどういうことをしようかとすごく考えちゃいます」

渡辺「この間の〈やついフェス〉で観たYogee New Wavesがすごく良かったんです。以前だとリスナー目線で素敵なバンドとして聴いていたんですけど、あの日は自分たちも出演していたので、バンドをやる側として観られた」

和久利「音源だとすごすぎてリアリティーがないというか、どうやってこの音出してるんだろうとか想像もできなかったんですけど、ライヴで観ると〈あ! できるんだ〉と思えて」

渡辺「そうすると遠いとか近いとかじゃなくて、その人たちも一生懸命音楽をやっているんだなと思える」

――いまの話を聞いて、The Wisely Brothersは唯一無二のバンドに惹かれるんだろうなと思いました。そして、自分たちもそういう存在になりたいのかなと。

真舘「そうですね。最初の私たちはあんまり音楽に憧れがなかったんですけど、最近になって周りのバンドの音楽をもっと聴くようになって、自分たちの曲にも気持ちが入ってきた。そこから生まれるものが、なにか新しいものだったら良いなとシンプルに思います。憧れがないまま来たけれど、いまは憧れが近くにいっぱいいる。いまならそれを自分たちのものにできるんじゃないかなと思えるんです」

和久利「私たちがちょっとキャッチーなものをやってみたり、一般的にポップなものをやってみたりしても、どうしても普通の感じにはならないんですよ。昔はそれをイヤだなと思っていたし、一般的になれていないから、きっと良くないんだろうなと思っていたんです。〈どういうバンドなの?〉と訊かれても、J-Popでもないしロックでもないし、自分たちで答えられなかった。でも、いまはそれが私たちのバンドの個性なのかもしれないと思いはじめています。好きなことをして自分たちのジャンルになるのはラッキーだなって」

渡辺「この前のリキッドで、たくさんの人が聴いている音楽のなかに、自分たちも仲間入りさせてもらったとき、単純にすごく嬉しく思った。楽屋にいると緊張するんですけど、リハで楽器を持ったときや、実際に3人で音を鳴らしたときに、〈あ、大丈夫かも〉と思ったり。そう思える自分に出会えるとは思っていなかったんです。そこにもしかしたら、あの日に出演していたようなバンドとも共存できる可能性を見たというか(笑)。別に個性的すぎて聴きにくいとか、コアというわけでもないのかな。最近は嬉しいですね。だからこそ、もっと嬉しくなりたいからがんばります」

 

自分たちでちゃんと良い選択をできるバンドでいたい

――では、最後にアートワークについて教えてください。今回のアートワークも真舘さんのお父さんの真舘嘉浩さんが手掛けられていますが、コンセプトなどは伝えたんですか?

真舘「タイトルが『シーサイド81』に決まったので、その出航する感じというか、これから3人で行くんだぞという感じは出したかったんです。個人的には〈81〉というのが結構大きいんですよ。作品に〈これはどういう意味なんだろう?〉という要素が欲しいなと思って」

――ふむ。この〈81〉にはどんな意味が込められているんですか?

渡辺「(小声で)練習したやつ」

真舘「あ……えっと……」

和久利「(せっかく回答を練習したのに)本番で思い出せない(笑)」

一同「ハハハハ(笑)!」

真舘「えっと……ここは日本じゃないですか。で、海外から日本に電話をかけるときには、国番号で81と付けますよね」

――そうか!

真舘「別に海外に行きたいわけではないんですけど、これからいろんなところへ行けるように、その意味を込めて81と付けたんです」

渡辺「最初は知らなかったんだけどね」

――へえ! じゃあ、後から意味が付いてきたんですね。この〈PLAY 6 SONGS from BIG WATER of the World〉というキャッチもすごく良いですよね。

真舘「これは父が入れてくれたんです。父はこういうフレーズでの〈惹き〉みたいなことを大事にしていて」

――ですよね。これまで真舘嘉浩さんの作品をいろんな場面で拝見しているので。

真舘「ありがとうございます。父から今作へのちゃんとした感想はまだ聞いてないんですけど、どうやら良いと言ってくれていたみたいで、そのニュアンスがこのフレーズには出ているのかなと思います。ちょっと嬉しかったですね」

――そもそもThe Wisely Brothersというバンド名の名付け親もお父さんだそうですね。

真舘「そうなんですよね……(笑)」

渡辺「いきなりロゴを作ってきたんですよ。バンド名というより、もうロゴで持ってきて」

和久利「でも、〈なんてカッコイイ名前なんだろう〉と思ったよね」

真舘「私たちは〈Sisters〉ではないんですよね。一緒にいても女の子感があまりない。3人の男兄弟みたいな気がするんです」

渡辺「たぶん一緒にいたら、誰もがそう思う気がする」

真舘「〈Wisely〉に関しては、あまり縁がないんですけど(笑)。ただ、自分たちでちゃんと良い選択をできるようなバンドではいたいなと思っています。そういう意味での〈賢さ〉なのかな」