
その音と佇まいが衝撃だった。平均年齢18歳、まさに破格の原石。あどけない文化系ルックスながらも、90年代のUSインディー・ロックやグランジ、オルタナティヴ・ロックからの影響を感じさせる青くこじれたヴィンテージな轟音サウンドと、キラキラとポップに輝くメロディー。新世代を代表するロック・バンドとして話題を呼んでいるニトロデイが、2枚目のEP『レモンドEP』をリリースした。
ニトロデイは、2016年3月に結成。横浜出身の小室ぺい(ギボ※)、やぎひろみ(ジャズマスター)、松島早紀(ベイス オン ベイス)、岩方ロクロー(ドラムス)による4ピース・バンドだ。ピクシーズやスマッシング・パンプキンズ、ニルヴァーナ、そしてメンバーが共通して好きだというナンバーガール。そんな彼らが敬愛する音楽のフォーマットをハックしつつも、その音楽性は圧倒的なオリジナリティーを持っている。海外のバンドからの影響を多大に感じさせるサウンドながら、小室によるメッセージや意味性から逸脱した文学的な日本語詞を活かして、誰にも耳馴染みのいいキャッチーな楽曲に仕上げるセンスに長けているのだ。
※彼らはそれぞれのパート名をこのように表記している。ギボ=ギター/ヴォーカル、ジャズマスター=ギター、ベイス オン ベイス=ベース
そのサウンドで筆者が特に注目しているのは、ジャズ・マスターにこだわるギタリスト、やぎひろみがアウトロで鳴らすディレイの響き。一聴して快楽性を感じる〈鳴り〉の美しさに心を鷲掴みにされてしまった。また一方で退廃的な負の感情が溢れんばかりのサウンドに、初期衝動のエネルギーの凄みを感じた。

Photo by 落合由夏
もともと彼らはバンド結成1年目に、ロッキング・オンが主催するアマチュア・アーティスト・コンテスト〈RO69JACK 2016 for COUNTDOWN JAPAN〉で、betcover!!やMr.EggPlantらと共に優勝したことでその名を知られることとなった。同コンテストでも演奏され、当時の代表曲であった“ティーンエイジブルー”は未だ音源化されていないが、初めて聴いたときのインパクトは今も忘れられない。
さらにその翌年の夏、渋谷の古着屋・ BOYのオーナー、奥冨直人主催によるイヴェント〈LIQUIDROOM&BOY presents Song For Future Generation〉で観たときも、脱力感を醸し出した佇まいながら、爆発力のある演奏で会場の空気を一変させていた。そのときは対バンでCHAI、ドミコ、King Gnu、MONO NO AWARE、odolらが出演していたが、音楽的なジャンルや年齢は異なりながらも、ニトロデイと同じく、フラットな感性で時代にメスを入れるような同時代の逸材たちが揃っていたのも印象的だった。
