the telephones石毛輝(ヴォーカル/ギター/プログラミング)と岡本伸明(ベース/シンセサイザー)に、モデル/女優としても活躍する江夏詩織(ヴォーカル/ギター/シンセサイザー)、高橋昌志(ドラムス)を加えた新バンド=lovefilm。すでにライヴやフェスへの出演をこなしているので、そのサウンドを耳にしたことのある人は多いと思うが、ついにリリースされたファースト・アルバム『lovefilm』に漲る瑞々しさたるや、自分が中学・高校生だったら〈バンドやりてー〉と思うであろう王道感と疾走感に満ちている。

lovefilm lovefilm DAIZAWA/UKプロジェクト(2016)

その瑞々しさを運んでいるのは、間違いなく紅一点の江夏だ。彼女が自身のInstagramで、どうしても音楽がやりたいと訴えたことがバンド結成のきっかけというエピソードにも表れている通り、その初々しい衝動や喜びがニクイほどキュートで軽やかなヴォーカルから滲み出ており、それがメンズ・メンバー陣にも伝搬しているように感じる。とにかくポップでパンキッシュ、サーフ・ロック調やほんのりローファイなムードも湛えたサウンドは、〈弾ける!〉という表現がぴったりで、カルピスや三ツ矢サイダーのCMで使われていそう。ただ、普通のフレッシュなニューカマー感覚では済ませない、流石の手練れを感じさせる楽曲クォリティーは、このバンドの抜け目ないところだ。

the telephonesとしてキャリアを積んできた2人が、いまこういう音楽をやるということに新鮮な驚きもあるが、初心に立ち返ったというか、なんだかとにかく良いヴァイブスを放っている。石毛の時に抑制の利いた歌唱もイイ感じだし、ひたすら楽しそう。デビュー作らしいデビュー作『lovefilm』、オススメです。