暮らしに寄り添うやわらかな色、音

 Port of NotesのギタリストのOSHIMA DAISUKEBophanaのヴォーカル、Licaがデュオ、Discaを結成。初作『Reveries Of Suburban』には、繊細なギターのタッチと太くて柔らかで艶やかな歌声が紡ぎ出す優雅な音時間が広がっている。ある意味キャリア総決算的内容を持ちつつ確実に新しい入口を示しているのが素晴らしい。夫婦である彼らは先ごろ伊豆に移住。そのことがさぞかし音作りに影響を及ぼしたのだろう。と思いきや、録音は移住前に済んでいたそう。

Disca Reveries Of Suburban インパートメント(2016)

 「伊豆は星がきれいで、ひさびさに子供の頃を思い出しましたね。そこからマスタリングを4、5回やり直しました。違う違う、まだ曲が7割しか完成していないと思い直したんです。まず曲間が短くて、せわしなく感じた。東京にいるときは気にならなかったのに。で、0.5秒ずつ足しながら、よりのんびりさせていった。それから、のんびりってどういうことなのかをゴロゴロしながら考えた(笑)。とにかく心地良い電波を詰め込んだ音盤を作りたかったんです」(OSHIMA)

 「周波数が変わっちゃったんだね。1デシベル単位で変えてましたから」とLicaが笑う。ゴロゴロしつつも頭をフル回転させ、新たな環境に流れるヴァイブを作品に同期させようと懸命に追い求めた結果、オアシスのような場所に到達してしまったってことか。

 「年齢の影響から音数を減らす傾向もあってなるべく1コードで済ませようとしたり、ドローン的に伸びる音で空間を埋めて気持ち良く漂ったりして。気配を採り入れようと腐心しましたね」(OSHIMA)

 「技巧に走ったりして自分が何者であるのかを証明しようとすればするほどエゴの世界に入り込んでしまう。今回私は、なんとなく聴いていたらなんとなく自分を振り返ってしまうような音楽作りをめざしました。歌入れはほとんどひとりだったんですが、気分が乗らなくてやめたときの歌って、改めて聴いてみるとエゴの部分がわかるんです。歌が日々変わっちゃって自分がしっかり座っていないことに気づいて。その部分がクリアになるまで作品は完成しなかった」(Lica)

 お互いが「いかに力を抜くか」を追求した果てに待っていたのは上質な安らぎを与えるパーフェクト・ハーモニーの世界。木漏れ日のようなharuka nakamuraのピアノをフィーチャーした《同じ景色》、多幸感に溢れたドリヴァル・カイミのカヴァー《Voce Nao Sabe Amar》などで見られる彼らの素の表情は実に美しい。

 取材の最後にOSHIMAが「今朝ふと思ったんだけど、蜘蛛と蟹は似てるなって(笑)」と漏らしていたが、そんな愉快な発見に満ちた新生活から次はいったいどんな音が生み出されるのか。楽しみだ。

 


LIVE INFORMATION

“Reveries Of Suburban”~Release Live !!!~
○9/11(日) 18:30開演 会場:尾山台 Fluss 
Guest:黒川 紗恵子(clarinet)Sumilady(piano)南條 レオ(percussion)
Special guest:haruka nakamura
www.disca.jp