写真提供:統営国際音楽祭
アルディッティ弦楽四重奏団とイサン・ユン未亡人 トンヨンで開催されたイサン・ユン フェスティバルにて
 

「オーセンティック」であり続けること

 変貌するクラシック現代音楽シーンをリードし続けるアルディッティ弦楽四重奏団が、初夏の日本を訪れる。度重なる来日で日本での活動もすっかり幅が広がり、今回も演奏会だけではなく、舞踏家、オーケストラ、作曲家との多彩なコラボレーションも用意された滞在だ。「オーケストラと弦楽四重奏との共演で難しいのは、オーケストラが鳴らし過ぎることですね。しばしば、もうちょっと静かにしてくれないか、と言わねばなりません。私たちが指揮者になるわけではなく(笑)、指揮者にアドヴァイスするだけですよ」。

 作曲家との作業は、指揮者やオーケストラとはちょっと違う。「作曲家がそこにいるかどうかで、違いはありません。私たちは仕事をするほぼ全ての作曲家ととても親密な関係を築いていますから。今回一緒に来日する作曲家のラッヘンマンとは、頻繁に仕事をしています。彼がその場にいて私たちを聴いてくれて、ときにコメントをくれるのは、とても喜ばしいことです。今度演奏する西村朗と細川俊夫のふたりの日本の友人もそうです。私たちは彼らをとても良く知っていて、本人らがいてもいなくても演奏しています。彼らがリハーサルでいろいろ言ってくれて、演奏会にいてくれるのを歓迎しています」。

 作曲家とのコラボレーションでは、アルディッティQの演奏に刺激され、目の前で楽譜が書き換えられることもあるという。「いつものことです。それはOKですよ。私たちは忍耐強いのです(笑)」。

 今回の来日で第2弦楽四重奏曲が披露されるリゲティに関しても、興味深いエピソードが。「リゲティとは何度もリハーサルをしました。第2番では一切楽譜を変更することはなく、常にテキストに厳密であることを要求してきました。ですが第1番では、テンポをどんどん上げたがった。というのも、リゲティが第1番を書いたのは私たちと出会う前で、その頃の彼は弦楽四重奏団と一緒に仕事をすることがなかったのです。ドイツに移ったときにこの作品を一度演奏禁止にしているのですが、私たちと一緒に練習して気に入るようになり、今では2作品とも演奏されるようになりました。第1番のテンポ設定は、彼の監修で新しい楽譜になっています」。

 ヨーロッパのクラシック音楽では、作曲家の生きていた時代の意図や奏法を反映するオーセンティックな演奏が大流行である。「私たちはそれぞれの作曲家のスタイルを探求しようとしています。多くの作曲家で、それはまるで違うものです」。

 現代のオーセンティックの巨匠、ここにあり。

 


LIVE INFORMATION

アルディッティ弦楽四重奏団2017年6月来日ツアー

■新作初演:アルディッティ弦楽四重奏団×白井剛(ダンス)
○6/23(金)19:00開演 会場:京都 ロームシアター京都

■世界初演:西村朗弦楽四重奏曲第6番
○6/24(土)18:00開演 会場:東京 東京文化会館小ホール

■リゲティ:弦楽四重奏曲 第2番/ラッヘンマン:弦楽四重奏曲 第3番「グリド」/細川俊夫:沈黙の花/バルトーク:弦楽四重奏曲 第3番
○6/26(月)19:00開演 会場:神奈川 サルビアホール(完売)

■日本初演:細川俊夫「河」(Fluss)(弦楽四重奏とオーケストラのための)
○6/30(金)19:00開演 会場:東京 オペラシティコンサートホール
大野和士指揮/東京都交響楽団
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