コンセルトヘボウ管による演奏会形式の『ローエングリン』全曲は、オケの美質、強力な歌手陣、良質な録音が相俟った注目盤だ。ネルソンスの代役で指揮を執ったエルダーはコンセルトヘボウの美点を最大限に活かし、ことのほか弱音や抒情的なパッセージで細心の注意を払う。冒頭の聖杯の動機が弦によって実に美しく紡がれる神々しい第1幕への前奏曲で、聴き手は一気に物語の世界へ引き込まれる。第2幕での大聖堂の入場から幕切れへと至る高揚はここぞとばかりの迫力だ。当代最高のローエングリンと言うべきフォークト、相変わらず清純で豊かな歌声を聴かせるニールンドはじめ歌手陣の完成度も高い。