32歳の時に早くも〈エッジを失いつつある〉と嘆きながらデビューした男が47歳で再出発するにあたり、何を思うのか? 過去にも未来にも目を向けながら、まさにミドルエイジ・アンセム集と呼ぶべき年相応の新作を携えてジェイムズ・マーフィーが帰ってきた。ここでは原点である70年代後半~80年代初めの音楽へ回帰し、十八番のレトロ・フューチャーなサウンドに厚みを与え、〈時間の経過〉というテーマに一層の切迫感を持って向き合っている。そう、詞で言及するレナード・コーエンや、全編をその影で覆うデヴィッド・ボウイら先人に答えを求めて天を仰いでいるかのように、ジャケに映るのは青い空だ。よってイージーなハイは与えないが、リリシストかつ歌い手としての彼の魅力を再認識させる本作の余韻は深い。空白を埋めようと流行を追うのでもなく、己のリアリティーを誠実に反映させることで、再結成してさらに飛躍するごく一掴みのバンドの仲間入りを果たしたようだ。