インタビュー

青野美沙稀『Sweet Devil』 ロカビリーの血を引くハイブリッド・ガールが新作で表現した二面性とは?

青野美沙稀『Sweet Devil』 ロカビリーの血を引くハイブリッド・ガールが新作で表現した二面性とは?

ネオ・ロカビリーの系譜を継ぐプリティー・ガールからハイブリッドな新作が到着!〈Sweet〉と〈Devil〉な二面性で魅了する姿に、キュンキュンが止まりません!

進化するハイブリッド・ロカビリー

 時代を超えて心を揺さぶるロカビリーのビートと、ヴィヴィッドなアメリカン50sファッションの魅力を現代に繋げるキュートな伝道師。故・山崎眞行氏の作り上げた〈CREAM SODA/PINK DRAGON〉を中心とした原宿ユース・カルチャーを源流に、80年代ネオ・ロカビリー・ムーヴメントの中心にいたBLACK CATS~MAGICのドラマー・久米浩司を父に持つ生粋のロカビリー・ガール=青野美紗稀の登場は、ロカビリー新時代の幕開けを告げる鮮烈な出来事だった。あれから1年、数多くのライヴ体験を積み重ねて成長した彼女は、追い風の速度が徐々に増していることを実感している。

 「お父さん世代のロカビリー好きの方もたくさんいるんですけど、その娘さんの世代が来てくれることが多くなってきましたね。仙台でロカビリーのイヴェントではないフェスティヴァルに出たときにも、70歳ぐらいのご夫婦も3歳ぐらいのちっちゃい子も楽しんでくれてたし、ロカビリーを受け入れてくれる幅は広いんだなって思いました。〈これでいいんだ〉と思いましたね」。

青野美沙稀 Sweet Devil ユニバーサルGEAR(2017)

 そんな彼女が放つ2作目のミニ・アルバムのタイトルは『Sweet Devil』。〈進化するハイブリッド・ロカビリー〉を標榜する全6曲(+ボーナス・トラック1曲)は、ハードにハジける美紗稀とキュートに甘える美紗稀の両面が堪能できるサウンドと、恋する女の子の内側に潜む二面性を鮮やかに描き出す歌詞を持つ、痛快な出来映えだ。

 「曲を聴いたときに、ゴリゴリに強い曲と可愛らしい曲と極端な感じだなと思ったので、すぐに『Sweet Devil』にしようと思いつきました。ジャケ写もその感じをイメージして、可愛い女の子を鏡のなかの強い女の子が見つめていて、CDの裏側の写真はその逆になっている。アルバムのイメージをうまく表現できたと思います」。

 

ロカビリーの聖地・原宿で

 作曲は前作同様、BLACK CATS~MAGICの人脈のなかにあってロカビリーの魅力を熟知した真崎修が中心だが、作詞は顔ぶれが変わった。注目は大御所・売野雅勇の参加で、MVも作られた“原宿ブルーベリーナイト”をはじめ、“涙のバケーション”“Runaway Boy”の3曲を提供。80年代に彼が手掛けたチェッカーズのヒット群を思い起こさせるロマンティックな青春ラヴストーリーの世界を、映画のワンシーンのように見事なカメラワークとカット割りを駆使して見せてくれる手際は鮮やかだ。

 「“原宿ブルーベリーナイト”の舞台はロカビリーの聖地・原宿で、歌詞に〈PINK DRAGON〉も出てくるし、BLACK CATSの歌詞のフレーズが散りばめてあったりして、ロカビリーが大好きなおじさま方はグッとくるんじゃないかと思います。MVもPINK DRAGONで撮影したり、オープンカーで湾岸道路を走ったり、すごくカッコイイのでぜひ観てほしいです。この歌詞みたいな強い女性は、自分がそういうキャラではないので難しかったですけど、強さと勢いをイメージしたら楽しく歌えました」。

 売野作品のもう2曲、ご機嫌にスウィングする4ビートの“涙のバケーション”とドゥーワップの香り漂う“Runaway Boy”は、どちらもポップでいながらキュンとせつないハートブレイクなラヴソング。歌詞を読み込んで想像を膨らませ、物語の主人公になって歌う姿はとても健気で愛らしい。

 「“涙のバケーション”は、明るくて踊りたくなる曲調と切ない歌詞のギャップがすごくイイんです。フレーズごとに悲しい雰囲気を出したり、細かく歌っていきました。“Runaway Boy”はいちばん好きな曲ですね。好きな人が突然いなくなってしまうんですけど、なんでいなくなったのか、どこに行ったのか、想像がたくさんできる曲なんです。ただただ切ない歌詞なので、レコーディングのときもちょっと泣きそうになりました」。

 

父親から娘へと継がれるスピリット

 明るい50sガールズ・ポップのオマージュ“Hey! Charlie”とスウィートなクリスマス・バラード“Twinkle starlight”の作詞を手掛けたのは、ライヴをサポートしているバンド・メンバーでもあるDJ No.2だ。美紗稀いわく「心の中に乙女が住んでいる」というナンツーことDJ No.2の描く世界観も、アルバムの持つ二面性の魅力に大きく貢献している。さらに真崎修が作詞も手掛けた王道ロカビリー“Rockin' Through The Night”、そしてプリンセス プリンセスの89年のミリオン・ヒット“Diamonds”のロカビリー・カヴァーも今作のハイライトのひとつ。温故知新の言葉通り、旧き佳きものを初めて出会ったような瑞々しさで表現する、青野美紗稀の真骨頂ここにありだ。

 「“Hey! Charlie”はキュンキュン系で、サビの歌詞で〈好きだよなんて もっと言えないんだからね〉というところがすごく可愛いので、そこにキュンキュンしてもらえたらと思います。私は全然違う性格ですけど(笑)。でも、ケンカしたときの気持ちには本当に共感できるところがあって、自分が悪いってわかってるけど、自分からは謝れないという気持ちは女の子はみんなあるから、聴いてくれる人もすごく共感できると思います。“Rockin' Through The Night”は、すべてのロカビリーが好きな方の心をグッとつかむ曲だと思いますね。掛け声のところにはたくさんの仲間たちの声が入ってて、お父さんも入ってるんですよ。“Diamonds”はもともと好きな曲ですけど、ロカビリー・アレンジでめちゃかっこいい曲になりました。〈ブラウン管〉を知らない子がこの歌詞を歌ってるのがおもしろいって言われたことがあるんですけど、確かにそうかも。〈針がおりる〉も時計かと思っていたけど、レコードなんですね。すごく素敵な歌だし、同世代や下の世代にも聴いてほしいです」。

 奇しくも今作のリリースと歩調を合わせるかのように、BLACK CATSとMAGICの最新ベスト盤がコンパイルされ、旧譜も続々とリイシュー。しかもメンバーたちはMAGIC featuring BLACK CATSとして奇跡のリユニオンを果たし、全国ツアーの開催も発表された。そもそものきっかけは、昨年末の美紗稀のリリース・パーティーでメンバーが久々の再会を果たしたことだったというエピソードも感慨深い。父親から娘へ、世代を越えて受け継がれるスピリット。それもまた日本のロカビリーのヒストリーに刻まれる新たな伝説のひとつだ。

 「〈もうバンドは一生やらない〉と言っていたんですけど、まさかやることになったのは、私のためにやってくれてるところもあると思うので。お父さんがライヴしてる姿を一度も見たことがないので、ちゃんと見てあげなきゃと思います。BLACK CATSのベスト盤は、お父さんが18歳のときに歌ったものを録り直している曲もあるんですけど、18歳のときの声は子どもすぎて、いまのほうがちゃんと歌えてると思います(笑)。聴き比べると、すごくおもしろいですよ」。

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