Rez Abbasi @ Asia Society, NYC 2016. Ⓒ Takehiko Tokiwa

NYジャズ・シーンを席巻するインド系アーティストの叡智が結集

 パキスタン出身で、南カリフォルニアに育ちニューヨークで25年以上のキャリアを誇るギタリスト、レズ・アバッシのグループ〈Invocation〉の南アジア音楽に影響を受けた三部作の最終章がリリースされた。

 2008年に結成された〈Invocation〉は、21世紀のNYジャズ・シーンを席巻しているインド系アメリカ人アーティスト、ヴィジェイ・アイヤー(ピアノ)、ルドレッシュ・マハンサッパ(アルト・サックス)を中核に、インド音楽、変拍子リズムのスペシャリスト、ダン・ワイズ(ドラムス)、同じくインド音楽のリズムに造詣が深いドイツ出身のヨハネス・ワインデンミュラー(ベース)のクインテットに、毎回ゲストを迎えて録音されている。

 グループのデビュー作『Things To Come』では、北インドのヒンドゥスターニ音楽に取り組み、2013年の次作『Suno, Suno』ではアバッシの出身地であるパキスタンのカッワーリー音楽を、本作ではゲストにチェリストのエリザベス・ミカエルを迎え、即興をベースとしながら厳密な規則を持つ南インドのカルナータカ音楽と、ジャズの融合にチャレンジした。

REZ ABBASI Unfiltered Universe Whirlwind Recordings(2017)

 『Unfiltered Universe』とは、地球の自転サイクルが、無意識のうちにアバッシの音楽に影響を与えることから、タイトルに付けられた。アバッシは「全ての作曲のアイディアは直感的に閃き、そして思索を巡らせて音楽となった」と語る。複雑なリズムや、ハーモニー構成を持つアバッシの音楽に、共演者たちは適確に応え発展させた。マハンザッパのスピード感あふれるプレイは、アバッシのギター・ラインのカウンターパートを描き、アイヤーのコンピングとメロディ・ラインが、新たな地平を切り拓く。ミカエルのチェロが新たな色彩を加え、ワインデンミュラーとウェイスのしなやかなリズムが、フロント陣を刺激する。

 ジャズは、かつてカリブ諸島やブラジルのリズムを吸収し表現領域を拡大してきたが、南アジア/インドのリズムも今、その新たなテリトリーに加わった。