アラン・ドロンとのデュエット曲などで一世を風靡したフランスの歌姫~強い意志をもって愛に生きた劇的な人生
ダリダという名前は、ある世代より上の方にとっては懐かしい響きだろう。〈パローレ、パローレ……〉というフレーズも印象的な、アラン・ドロンとのデュエット曲“あまい囁き”は我が国でも大ヒットした。ダリダは、本国フランスでは、それ以外にも数え切れないほどのヒット曲を生んだ国民的なスターだ。そのダリダが、これほど劇的な人生を歩み、非業の死を遂げていたとは。それが、ダリダの人生を描いた映画「ダリダ あまい囁き」を観た後の率直な感想である。
そして、この映画を監督したのは、ダリダとほぼ同時代に歌手や女優として活躍した、日本では「太陽がいっぱい」などの映画への出演でも知られるマリー・ラフォレの娘、リサ・アズエロスだ。ダリダの映画を撮るのに、これほど相応しい監督もいないだろう。
この映画は、ダリダが歌手として成功を収めた後、その当時付き合っていたイタリアの歌手ルイジ・テンコの死からスタートし、そこからスターへの階段を駆け上がるデビュー時に戻るような構成を取っているが、その理由をアズエロス監督に尋ねると、「私はただ一直線にダリダの人生を追う映画を作りたくありませんでした。誰もが最後に自殺することを知っているからです。それよりも、一人の人間がどのように自殺を決意するかまでを描きたいと思いました。そこでダリダには二つの人生があると考えました」。その二つの人生とは、いわば“光と影”。歌手としての華々しい成功の裏で、恋多き女であるダリダが、一人の女性としての幸せをなかなか得ることのできないことへの苦悩。監督はそれをダリダのヒット曲になぞらえ、“愛しのジジ”(光)と“灰色の途”(影)の人生と語った。
実は、この映画、ダリダの人生のさまざまな局面にまるで呼応するかのように、その時期のヒット曲が出て来るのだが、その理由を監督は次のように説明する。「まず初めにストーリーを考え、次に歌のリストを作りました。ダリダのファンは、映画の中でどの曲を聴きたいだろうと思い浮かべ選曲しました。そこでダリダの人生に起きたいくつかの大きな出来事と歌が、いかに繋がっているかに気付いたのです」。それほど、ダリダの曲自体が、その時々の彼女の心情を雄弁に物語っているが、その合間を映画音楽として埋めるのは、ベテランのジャン=クロード・プティ。彼は、ダリダの当時のヒット曲のアレンジャーでもあった。
この映画は、ダリダの最期を知っていればなおさら、彼女に起こる不幸な出来事に目を奪われがちだが、監督は必ずしも彼女の人生を悲劇としては描いていない。「ダリダは周囲に起きた全ての人の死や自殺を経験しながらも、彼女自身は幸せになるために必死に努力していたのです」。その幸せを追求しようとする強い意志こそが、彼女の歌をさらに輝かせることになるのだ。
映画「ダリダ あまい囁き」
監督・脚本:リサ・アズエロス
音楽:ジャンヌ・トレリュ/ヤコ・ズィジストラ
出演:スヴェヴァ・アルヴィティ/リッカルド・スカルマルチョ/ジャン=ポール・ルーヴ/ニコラ・デュヴォシェル/アレッサンドル・ボルギ/ヴァンサン・ペレーズ/他
配給:KADOKAWA(2017年 フランス 127分)
◎5月19日(土)角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開!
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