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俺にとって東京はローカル

 小西康陽のモノローグと、折衷的なハードコアを身上とするMOONSCAPEのHATEによるスクリームをフィーチャーした“全ての価値はおまえの前を通り過ぎる”や、MC KHAZZがコーラスを添える壮絶なタイトル・トラック、今年2月に逝去したFEBB AS YOUNG MASONがラップする“TRUE TO MY TEAM”といった粒揃いのDisc-1に続き、昨年8月6日にTSUTAYA O-WESTで行われたイヴェント〈METEO NIGHT 2017〉でのステージを収録したDisc-2は、今年1月に亡くなったECDのシャウトで幕を開ける。

 「石田さん(ECD)が2003年に出したベスト盤『ECD MASTER』は、以前、石田さんとライヴで一緒になった時、俺が〈次はECDです〉と言っているライヴ音源から始まるんです。それが凄く嬉しかったので、今度は俺らのライヴで石田さんに〈次はSTRUGGLE FOR PRIDEですって紹介してくれませんか?〉とお願いしたんです。石田さんがいなくなったすぐ後にFEBBもいなくなってしまって、2人とも東京を代表するラッパーという以前に友達だったから、いまだに何とも言いようがなく、凄く残念です。今回のアルバムでは東京について考える機会が多かったのに、その街がどんどんなくなってしまうような気さえしています」。

そんな東京に今里は何を見ているのか。

 「東京はここ何年かで細分化が極まってしまっているのに対し、大阪、名古屋のほうがいろんな要素が混ざっていて、音楽的にちょっと進んでいる気がします。ただ、どの街にもローカルのシーンがあるように、俺にとっての東京もローカルというか、〈地元の街〉以上でも以下でもなく。そこには昔からの友達との繋がりがあって、それがそのまま作品になりました。俺らはそういうふうにしか音楽をやれないし、そうしないと意味がないなって」。

 デトロイト生まれのMC5と彼の地を頻繁にライヴで訪れていたサン・ラー、あるいは同じ地元ワシントンDCでの対バンがよく知られるゴーゴー・バンドのトラブル・ファンクとハードコア・パンク・バンドのマイナー・スレットがそうであったように、音楽の歴史においてその街ならではのローカル・コネクションが奇跡的な化学反応を起こす例は少なくない。そして2018年、現在進行形のエキサイティングな化学反応を体験したいなら、東京の最深部の風景を見たいなら、『WE STRUGGLE FOR ALL OUR PRIDE.』を手に取ってみるといい。ここにはあなたの知らない豊かな世界が広がっているはずだ。 *小野田 雄

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