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少年と牛の絆を描いた物語を、鮮やかなカラー映像と華麗な音楽が彩る

 テクニカラー、極上ステレオサウンドをアピールするオリジナル予告。続く本編冒頭の絶景は、悲恋の伝説を秘めた名峰ポポカテペトルとイスタシワトル。“煙を吐く戦士”が半世紀近く静けさを保ち、“横たわる姫君”を見守っていた頃の貴重映像だ。

アーヴィング・ラパー,マイケル・レイ 黒い牡牛 キング(2018)

 メキシコ政府全面協力のもと、大統領官邸を含む贅沢なロケが実現(一部チュルブスコ・スタジオで撮影)。1956年の米国映画『黒い牡牛』(原題:The Brave One)は、同年内に日本でも初公開。翌年の米アカデミー原案賞に輝くが、当の原案者は授賞式に現れず、長らく反骨の態度と噂されてきた。というのもクレジット記載の人物は、ハリウッドの“赤狩り”で証言を拒み逮捕・禁固刑に服したダルトン・トランボの偽名だったのだ(※後年『ローマの休日』『パピヨン』もトランボ脚本と明かされる)。芸術的カメラワークはジャック・カーディフ、ヴィクター・ヤング指揮ミュンヘン交響楽団による格調高い音楽、監督アーヴィング・ラッパー。2016年、第29回東京国際映画祭で特別上映された。

 初めスペイン・ロケを模索するも、予算の都合で断念。メキシコ案に代わったらしいが、むしろその変更が、スペイン語混じりの英語作品にありがちな不自然さを和らげている。主人公役の少年とブロンド美女以外、全員メキシコ系俳優を起用したという。

 友情で結ばれた少年と子牛の成長物語は、随所に牧場主と雇われ牧童一家の経済ギャップを映し出す。不幸続きのロシージョ家……嵐の晩に大切な老牝牛を失うが、断末魔の母牛が産み落とした子牛をレオナルド少年が救う。勇敢な子牛に“ヒタノ(ジプシー)”と名づけ、精一杯愛しむレオナルド。だが牧場主の事故死に伴い、ヒタノは闘牛用の競売にかけられる。いかんともし難い運命に抗い、力の限り闘いを挑む少年と牡牛……圧巻は、巨大闘牛場プラサ・デ・トロス・メヒコで繰り広げられる白熱の闘牛シーンだ。息を呑む命のやり取りに、映像の誤魔化しは一切ない。驚愕のラストまでも!