常田富士夫さんの笑みが偲ばれる傑作マーチも収録! 朗らかで、大らかな、ラ・テ仕事の厳選盤
毎回150ものコント連発でTV史上最高のバラエティ番組と称された『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』(NTV制作)。その縁の布陣も一昨年に大橋巨泉さん、昨年は藤村俊二さん、今春に朝丘雪路さんが永眠なされ、さる7月18日には常田富士夫さんも鬼籍に入られた。平成の終わる前に“昭和が遠ざかる”との想いがいよいよ深い。
ストーンズの象徴ロゴ(Lips and Tongue)は1971年春のEP盤《Brown Suger》上が初出らしいが、当時の極東少年への視覚的余波は意外と弱かった。既に彼らは'69年秋OA開始の番組キャラ(=ゲバゲバおじさん)から、舌出しアニメの洗礼を浴びていたからだ。中学卒業時の寄せ書き帖には、直筆のゲバゲバ絵が多く添付された。
宍戸錠・小山ルミ・吉田日出子……異色派揃いの同番組中、尤もゲバゲバ性(?)を伝播させたのがハナ肇さん扮する「アッと驚くタメゴロー」、そして常田さん特有の風貌と怪演だった。彼の記憶が黒澤作品での演技でも、名口調の『まんが日本昔ばなし』や『ラピュタ』のポムじいさん役でもなく、『ゲバゲバ!』。稀な歌唱盤も《トッピンからげて逃げられて》('83)よりも《私のビートルズ》('70)に挙手する所以だ。では、曰く言い難いフジオ的なるものとは何か!? その煮しめたような独自の存在感については、ムーンライダーズの《ニットキャップマン》で如何なく写実されている(作詞は糸井重里氏)。そんな富士夫さんや雪路さん(先日は津川雅彦さんまで‥)逝去の折も折、さながら追悼盤的頃合いで発売されるのが『宮川泰 テレビテーマ・ワールド』、湿らなくて最適だ。
プラカード持参の個性陣が登場する際の傑作行進曲《ゲバゲバ90分! テーマ》も当然収録。「自分もそういうのが好きだからネ、わかりやすい音楽っていうのが」とは、生前(2006年没)の本人から聴いた作曲哲学だ。全38曲で昭和感満載のラ・テ版作品集。ボーナス編では池すすむ名義の「モスラ」挿入歌やTFM《歌謡ベスト10 オープニングテーマ》も聴ける。作曲家の性格そのままに朗らかさ濃縮の愉快な推薦盤だ!