すべての作詞/作曲を自身で手掛けた初めてのアルバムで、ここまで自身のスキルを磨き上げてきた彼の自信……いや、それを越えた〈確信〉が、その出来映えから伝わってくる。
情感豊かなソングライティングと歌唱センスを持ち味として、オリジナルを中心にカバー作品も取り混ぜた楽曲を公開しながら、動画サイトとライヴ会場の双方から引力を放ち続けてきたシンガー・ソングライター、夏代孝明。およそ4年ぶりとなるアルバムとしてこのたび届けられた『Gänger』について、夏代孝明本人に語ってもらった。
「たしかに、ひとつ〈見つけた〉感じはありますね。去年発表した“ニア”、“世界の真ん中を歩く”、“ユニバース”の頃って、誰かを励まそうと思っていたりとか、その結果として明るい曲になっていたんですが、僕自身は〈音楽で生きていく〉っていうことへの不安だったりとか少し迷いのあった時期だったんです。
で、今年になって心機一転、曲を作ろうかって思った時に、自分が高校生の時に書いた曲をふと聴き返してみたんです。それはもう、ぜんぜんダメで、メロディーもグッと来ないし、歌詞も言いたいことを並べているだけでイマイチだし、テーマもありきたりだったんですが、自分自身の内面をただただ思うがままに晒してるからこそ伝わるものを感じて。それが僕の原点なんだって思った時に、じゃあ、ここで一度〈誰かのために〉というところから離れて、自分自身が世の中に対してどう思っているのかとか、自分の内面に焦点を当てて作ってみよう――そう思って出来上がったのが“エンドロール”や“ジャガーノート”なんです」
アルバムはそれらの楽曲に加えて、先行してMVも公開されたロマンティックなナンバー“プラネタリウムの真実”、さらに、グルーヴィーなアコースティック・ダンス・ナンバー“Gänger”、疾走感ハンパないギター・ロック・チューン“REX”、ソウル・フィーリングも匂わせる“キャラメル”、アルバムを締めくくるバラード・ナンバー“君のいない夜”など、ミュージシャンとしての探求心にも富んだ新曲たちが盛り立てる。
「オリジナルを作るようになってから、歌声であったりとか自分に対して詳しく分析するようになって、それがより〈いい歌〉になって返ってきていたんです。このアルバムでも、また一歩成長できたなって思いますし、こういう感じもできなくはないなとか、たとえば“Gänger”のラップだったり、“ジャガーノート”のヴァースのリズムの取り方だったり、“キャラメル”のAメロ、Bメロの空気感だったり……そういう部分はアルバムの制作を通じて見つけることができた一面かなって思ってます。
もともと好きだった音楽は王道のJ-PpoやJ-Rockなんですけど、ソロのアーティストだし、もっと自由度高く、どんどん新しいモノに手を出していっていいのかなって。そういう意味で今回のアルバムに入っている楽曲は、それぞれが違う方向を向いているので、新たな自分の可能性というのも時間をかけて探れた一枚だと思っています」