「クリスマスの約束」は職人の小田和正が見られる唯一の番組
2024年のクリスマスイブ、小田和正による音楽番組「クリスマスの約束」が放送された。2001年にスタートした同番組だが、今年が最後の放送であることを知って衝撃を受けた人もいるはず。ただ、長年番組を見続けてきた人や、小田和正の創作者としての情熱とこだわりをわずかでも理解している人なら、この〈最後〉という決断にどこか納得する部分もあるだろう。
あまり大きく言及されないが、小田和正も山下達郎らと同様に歴とした職人気質の人物である。それは「クリスマスの約束」で見られるドキュメンタリーのパート、番組スタッフとのディスカッションやゲストアーティストとのやりとりからも窺える。0から1を作り出すクリエイターとして揺るぎない信念を持ち、それを決して安易に消費させない/されないための判断と決断をする。楽曲制作と同じだけの熱量と心血を、小田は24年もの間「クリスマスの約束」に注いできた。
最後の「クリスマスの約束」は、2009年の回のドキュメンタリーと“22’50””のパフォーマンスなどをまとめた第1部に続き、第2部で今年12月3日にKT Zepp Yokohamaで収録された最終回の模様が放送された。熊木杏里、JUJU、根本要(スターダスト☆レビュー)、松たか子、水野良樹(いきものがかり)、矢井田瞳、和田唱(TRICERATOPS)、そして小田和正が勢揃いした“風を待って”で幕を開け、そのまま“キラキラ”“ラブ・ストーリーは突然に”へと続く。
スキマスイッチを除いた(スケジュールの都合で番組収録には参加できなかったが、本人たちの強い希望でリハーサルには参加)実際のレコーディングメンバーが揃った形での“風を待って”は、2021年に小田が初の配信限定シングルとしてリリースした楽曲だ。重厚なコーラスをバックに、小田の透きとおるボーカルが煌びやかに光るミドルチューンだが、番組を通じて感じたのは各アーティストの歌声の特性が損なわれていないこと。パフォーマンスでも1人ひとりの歌声に意識を向ければ誰が歌っているのか、しっかりと判断できるのだ。
“風を待って”は配信でも聴くことはできるが、最新ベスト『自己ベスト-3』の方がCDマスタリングならではの音の厚みを体感できるので、ぜひそちらでの試聴をおすすめしたい。