柔らかく陰影の濃い響き、ゆったりとしたテンポ、穏やかに息づくフレージング、心の奥底に届く深い呼びかけ…。いずれも現代の慌ただしい日常生活では見いだせなくなってしまったものばかりである。収められた音楽はバッハの教会音楽が6曲、ピアソラのタンゴが6曲。それらがヴィオラとアコーディオンという珍しい組み合わせにより演奏されている。タイトル通り、ここには明暗、哀歓、聖俗という、相反するものが混ざり合い、聴き手の心に刻まれた様々な体験を呼び覚まし、その喜びを反芻し、あるいはその傷を癒してくれる。二人の奏者の豊かな音楽性、微妙な陰影を捉えた美しい録音も特筆される。