数多くのロック・レジェンドたちを撮影してきたカメラマンにして、ウェブページ〈久保憲司のロック・エンサイクロペディア〉を運営するなど音楽ライターとしても活躍しているクボケンこと久保憲司さん。Mikikiにもたびたび原稿を提供いただき、ポップ・カルチャーについての豊富な知識とユーモラスな筆致で、いずれも人気を博しています。
そんなクボケンさんによる連載が、こちら〈久保憲司の音楽ライターもうやめます〉。動画配信サーヴィス全盛の現代、クボケンさんも音楽そっちのけで観まくっているというNetflixやhuluの作品を中心に、視聴することで浮き上がってくる〈いま〉を考えます。今回のお題は、2016年の配信スタート以降、世界中を熱狂させているNetflix制作のSFドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」。シーズン3が公開されたばかりの同作品が、なぜ多くの視聴者を惹きつけてやまないのか、その理由を考えました。 *Mikiki編集部
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ストレンジャー・ザン・シングスと言ってしまう久保憲司です。ジム・ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(84年)も80年代ですね。
70年代はダサい、80年代はイケてるというのが世の風潮でしょうか? 70年代はまだ60年代のカウンター・カルチャーの影響を受けているが、80年代にはカウンター・カルチャーの呪縛が解けた初々しさがあるのでしょう。「ストレンジャー・シングス 未知の世界」大ヒットの理由は、そんな世界を若い無垢な主人公たちが自由に飛び回る姿がマッチしたのだと思います。
監督のダファー・ブラザーズは、警察署の署長ジムがシーズン3の終盤に話すセリフで大ヒットの理由を説明しています。それは、こんな言葉です。「気持ちを正直に言おう。変化が怖い。変わるのはいやだ。俺がここに来た理由は変化を恐れていたからだ。時計を戻して過去に戻りたかったのだろう」
謙遜すぎますよね。だって、80年代映画の寄せ集めじゃない何かを秘めているところが〈ストレンジャー・シングス〉のいちばんの魅力でしょう。
僕は「ストレンジャー・シングス 未知の世界」にいちばん影響を与えているのは「新世紀エヴァンゲリオン」(95年~)だと思うんですけど。どうでしょう。「新世紀エヴァンゲリオン」もカメラ・アングルから何から何まで庵野秀明監督の好きなものだけを集めて作りあげた作品です。両者とも過去の作品のコラージュと批判されますが、それを超える何かがあるんですよね。
その話はおいといて、シーズン3はおもしろかったか? コンパクトにまとまっていておもしろかったと思います。もっと謎が深まっていく感じにしてもよかったような気がするのですが、キリがないですよね。今回のコメディー路線よかったと思います。あと、みんなちょっと大人になりはじめているのもよかったです。初恋な感じも。
でもいちばんの僕の盛り上がりはラスト・シーン前の、ギャグです。あの無邪気さこそが80年代だったと思うのです。
ここからネタバレになるので、観てない人は読まないでください。