フランスのダンス・ミュージック・シーンを牽引してきた2人組、カシアスの最新アルバム。リリース直前にはメンバーのフィリップ・ズダールが転落事故で亡くなった。そうしたこともあり、どうしても集大成的な作品に聴こえてしまう。だが、そんな個人的な想いを差し引いても、本作のサウンドは特別だ。バレアリックに通じるメロウな雰囲気を醸しつつ、艶かしいベースやリズムが印象的なハウスで私たちを踊らせるのだから。トラブル・ファンク“Pump Me Up”が一瞬頭をよぎる“Nothing About You”や、ビースティー・ボーイズのマイクDが参加した“Cause Oui!”などは、ヒップホップを愛聴してきたズダールの嗜好が色濃いように感じられる。この2曲だけはいまも涙なしで聴くことができていない。