コラム

リュック・フェラーリ「Complete Works」 フランス現代音楽の異端児に迫る〈全集〉がサーストン・ムーアの尽力で英訳

祝生誕90年! サーストン・ムーア、エヴァ・プリンツによる待望の英語版リュック・フェラーリ全集

LUC FERRARI Complete Works Omnibus Pr & Schirmer Trade Books(2019)

 2019年の生誕90周年を記念して、リュック・フェラーリの〈全集〉がイギリスで出版された。つまり英語である。今まで、このフランス現代音楽の異端児についての本は、殆ど全てフランス語で読むしかなかった。特に一昨年に出版された、Brunhild Ferrari & Jérôme Hansen (éd.),  Luc Ferrari Musique dans les spasmes Écrits (1951 - 2005),  les presses du réel, 2017. が彼の若き日の詩や苦渋の人生を綴った未発表小説「痙攣の中の音楽」、フランソワ=ベルナール・マーシュやクリスティアン・ザネジなどのインタヴューという、ファン垂涎の資料が満載だったのに、フランス語であるが為に多くの人々の喝を癒すことが出来なかった事を思えば、今回のサーストン・ムーアとその伴侶エヴァ・プリンツの快挙はまさに慶賀してし過ぎる事はない。

 仏語版「痙攣の中の音楽」の内容はこうだった。ジム・オルークの巻頭言、ブリュンヒルド・フェラーリの序で始まり、フェラーリの詩や文章、自分の主要作品解説、ピエール・シェフェールへの葛藤に満ちた書簡、幾つかの自伝、未発表小説、幾つかのインタヴュー(《プレスク・リヤン》について[マーシュと]、真面目な文化と大衆文化について[カトリーヌ・ミエと]、グラヴェザーノのシェルヘンについて[ザネジと]、決然とした偶然について[マセ&サンソンと])、作品カタログと年譜、索引。今回出版された英語版〈全集〉はこれらの内容(もちろん全て英訳)にプラスして、以下のものが付け加えられた。若き日の詩一編、ダニエル・コーによるインタヴュー(1979年)、フランシス・オフスタンによるジャズについてのインタヴュー(1981年)、「都市における芸術創造」という講演(1981年、アヴィニョン)、そしてそれらの他に彼の全作品についての情報と自作解説(仏語版では主要作品だけだった)が年代順に並べられ、最後にフェラーリの造形芸術作品(コラージュと絵画)が収められている。ジム・オルークの文章まで訳されている上に、サーストン・ムーアの前書きが付け加わった。文字通りの〈全集〉である。

 仏語版より大型で、紙質も良く、上に紹介した内容に加えて、写真や楽譜の画像も豊富なこの〈全集〉は、フェラーリ・ファンのみならず、現代のフランスひいてはヨーロッパの音楽シーンに興味がある者は必ず手にしたい一冊だ。

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