ギラの本気な歌謡曲愛が全編で咲き誇る先鋭盤!

 iPhoneのシャッフル聴きで“ユキノヒトヒラ”あたりに不意打ちされるとつい、アルバム表示にして毎回全曲を聴いてしまう。彼女と矢幅歩のツイン・ヴォーカル・ユニット〈SOLO-DUO〉の『Morning Light』は、それだけ魅了的な一枚だ。彼女の天才に関してはソロの『all Me』から触れて来たし、昭和(=戦後)の名曲をジャズにRe-Styleして歌うギラ山ジル子プロジェクトの試みにも注目してきた。つまり彼女の柔軟で奔放な横断性に対し、私的な耳の予行演習は出来ているつもりだったが、全11曲のオリジナルのみで編まれた本作『50 (フィフティ)』を聴いて〈歌謡曲愛の本気度〉を再認識した。

GEILA ZILKHA 50 ユニバーサル(2019)

 イスラエル人の父と日本人の母との間に生まれ、神戸で育って地元のインターナショナルスクール→バークリー音楽大学を卒業。帰国後はジャズ・ヴォーカリスト以外にも、テレビ出演/ラジオDJ/CM歌唱等々の八面六臂な活躍を。人生100年時代の折り返し地点で待望のメジャー・ファースト・アルバムのテーマを〈歌謡曲のアルバムを作ること!〉と英断し、全曲オリジナルで編み上げた彼女の姿勢/快挙には心から喝采を贈りたいと想う。実際、本作を繰り返し視聴していると、SOLO-DUOやギラ山ジル子に仮装しての挑戦が(良い意味で)本企画実現までの助走期間だったのかと勝手に合点し、上記のような幅広い横断仕事や大阪芸大教授としての歌の指導(=精神面からリードするVocal Workshop Live)体験さえもが『50』に結実しているように感じる。

ギラは11曲中6曲を作詞・作曲(+1曲の作詞を共作)しているが、冒頭の“愛情表現”の歌詞を借りれば、アルバム全編が〈私(=ギラ)の愛情表現〉に満ち溢れている。さらに“あの日に逢いたい”の〈Our favorite song 聴いたね/たくさん愛したね〉などの箇所に触れると人一倍、歌謡曲に寄せるギラ自身の思慕濃度を深読みできたりもする。美樹克彦作品が2曲入っている点も通には垂涎もの、令和歌謡曲の夜明けを告げるプログレッシブな一枚だ。昨年はMISIAの助っ人でレコ大/NHK紅白出演もしているギラ・ジルカ。来年はそう、50歳の新人で当確か!

 


LIVE INFORMATION

ギラ・ジルカ~「アルバム完成&年忘れライブ!」
○12/26(木)19:00開場/19:30開演
【会場】KIWA TENNOZ
【出演】ギラ・ジルカ(vo)竹中俊二(g)渡辺剛(key)SOKUSAI(b)加納樹麻(ds)
www.oasis-kiwa.com/schedule/view/564