〈シャロン・テート事件〉を題材にしたタランティーノ最新作。本作の素晴らしさは、ラスト13分がなかったとしても十分傑作足り得ていることにある。69年のロサンゼルスを舞台に、落ちぶれた映画俳優と彼のスタントマン、そして幸福に生きるシャロン・テートの数日を映画は追う。当時をそのまま切り取ったかのようなゆったりとした時間感覚は、事件前夜のディカプリオのナレーションで活きてくる。これはハリウッドとそこに生きた人々のある種の〈青春映画〉である。もう二度と戻ってこないあの時間/空間。ローリング・ストーンズがこれほど感動的に鳴り響く映画もまたとないはずだ。