©1993 True Romance Production

タランティーノ好きの皆様、お待たせいたしました!

男「好きな俳優は?」

女「バート・レイノルズ」

 完璧だ。1994年の公開当時、世のボンクラ男子は心の中でそう呟いたはずだ。訂正しよう。少なくとも筆者はそう呟いていた。それと同時に自身の妄想の限界にハタと気がついた。この際、バート・レイノルズがどこまで好きかは問題ではない。「バート・レイノルズが好きな彼女」。妄想的にはこれが完璧なのだ。

 このセリフを書いたのは、クエンティン・タランティーノ。処女作「レザボア・ドッグス」で一躍時の人となり、次作「パルプ・フィクション」の間に脚本を提供しトニー・スコットが監督したカルト映画が本作となる。

トニー・スコット 『トゥルー・ロマンス ディレクターズカット版』 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント(2014)

 主人公クリスチャン・スレイターは、プレスリーとカンフー映画に夢中なコミック・ブック店員。女性との会話もろくにできないボンクラ男子が、店長のささやかな〈プレゼント〉で娼婦パトリシア・アークエットと出会い恋に落ち結婚。邪魔なヒモに会いに行ったら間違って殺してしまい、更には大量の麻薬を持ち出してしまっての逃避行というお話である。主人公のボンクラさは、タランティーノ自身そのもの。更に、タランティーノらしい薀蓄に溢れたセリフの応報や、殆んど白日夢に近いヴァイオレンス描写等、タランティーノ好きには待ってましたのソフト化である。

 それにしても、脇を固める役者たちの豪華なこと! デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、ヴァル・キルマー、ゲイリー・オールドマン、ブラッド・ピット、サミュエル・L・ジャクソン! 怪優たちが、少ない尺ながらそれぞれの十八番を披露し画面から消えていく様は、殆んど怪優No.1選手権大会である。

 思わぬ伏兵であるサニー千葉こと千葉真一を特別枠とした上で、事実上の決勝は、デニス・ホッパーとクリストファー・ウォーケンという夢の対決である。ボンクラの夢を叶えたこの勝負の行方は、是非ご自身の目で確かめていただけたらと思う。