コラム

「びじゅチューン! DVD BOOK5」Eテレで大人気! マルチ・アーティスト井上涼のユーモアが冴え渡る、美術学習DVD

NHK Eテレで大人気! マルチ・アーティスト井上涼ワールドで美術を遊ぼう!

井上涼 びじゅチューン! DVD BOOK5 小学館(2020)

 NHKのEテレ人気番組「びじゅチューン!」のDVD BOOK第5弾。アニメーション、パフォーマンス、音楽、歌、映像編集まで一人でこなす超マルチ・アーティスト=井上涼による奇想天外な映像集。美術紹介番組であると同時に、作品として古今東西の美術作品を映像リミックスした、井上独自の世界観アートと言える。美術に明るくない方々には、楽しく美術を知るチャンスとなるだろうし、個々の作品背景などにも精通している(そして、心がおおらかな)方々は、あの美術作品が井上によってどう料理されているか、ギャップを楽しむことができるだろう。

 この世界観、70年代後半から80年台半ばまで出版されたサブカル雑誌「ビックリハウス」や安西水丸をちょっと思い出してしまった。有りえないことがサラッと有りえてしまうヘタウマ世界のおかしさ。シュールだがユーモアがあり、小気味好く、おどろおどろしさは感じない。どこか「かわいい」。

 井上が手がけるアニメーションも面白いが、自ら歌う曲の豊かさ、自由奔放な発想による、強烈なインパクトの歌詞設定に頭の中をグルグル掻き回される。井上のアニメーションと井上の歌が合体することでグッとその世界に引きずり込まれる。

 このDVD BOOK、井上の映像作品だけでなく、振り付け映像や、メイキング(MOA美術館の館長との対談、編曲の吉岡先生の曲解説)、テーマとなった美術作品解説、ペーパークラフトなど盛りだくさんの内容だ。

 音楽にしても、美術にしても、批評側は「文脈」というのを意識しすぎてきたと思う。ある文脈を設定し、作品をその物差し(理屈)で判断することが間違えではないが、それだけが全てではないという許容性を持つ方がより多くの可能性に触れることができるのではないだろうか? 強いイデオロギーは、分断や対立を起こしやすい。作品の妙味とは、根本的に曖昧で、グッとくるとか、ついつい見てしまうとか、本当に感覚的なものではないだろうか? 井上の作品はそんなことを気付かせてくれる。

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