菅野沖彦の全仕事を網羅した一冊「菅野レコーディングバイブル」で知られる嶋護の新著は、ジャズの優秀録音について論じた内容だ。嶋護には「クラシック名録音究極ガイド」「嶋護の一枚」というジャズ以外の録音について語った本が既にあるため、これでかなり俯瞰的かつ横断的に録音について論じたことになる。それにしても本著は素晴らしい内容だ。ポール・デスモンド、ビル・エヴァンス、レイ・ブライアント……多くのジャズの巨人たちの録音とそれにまつわる物語、さらにはルディ・ヴァン=ゲルダーへのインタヴューの翻訳が収録されたりと豪華な内容。菅野沖彦について語った終章は感動的だ。