歪んだ轟音に象られた唯一無二のナイーヴな美しさ――重厚にして繊細なオルタナ作法の音風景を描き出す4人組アイドル・グループが、満を持していよいよメジャー・デビュー!
静と動が美しく同居する繊細かつ轟音のオルタナティヴ・サウンドと確かなパフォーマンス力で、シーンにおける特別なポジションを獲得しているアイドル・グループ、ヤなことそっとミュート。昨年12月に新メンバーの凛つかさを迎えて新体制になり、この春にはシングル『Afterglow/beyond the blue.』でついにメジャー・デビューを果たす彼女たちに話を訊いた。

やっと期待に応えられる
――現体制になって3か月ほどですが、馴染んできました?
間宮まに「ずっと4人でやってきたのが去年の夏に3人になって、いままた4人になったので、徐々に前の感じに戻っていっている途中という感じです。できる曲がまだ限られているので、そこはどんどん増やしていかないといけないんですけど」
――凛さんはグループに入ってみていかがでしょう。
凛つかさ「お披露目が去年の12月29日だったんですけど、最初はガチガチで。いまは少しずつ慣れてきているところです。最初から変わらないところはステージに立つのが楽しいということで、できる曲が増えてきて、楽しさがどんどん増している段階です」
――ステージ以外でのメンバーとの関係はどうですか?
凛「みなさん静かなので、私がうるさすぎないか心配です(笑)」
南一花「他の3人は優柔不断なところがあるんですけど、つかささんはハッキリ言ってくれるんです。例えば食べ物を決めるときでも〈これがいい〉って言ってくれるので、そこは助かってます。3人にはないものがある」
凛「焼き肉を率先して焼くとか、そういうレヴェルのことですけど(笑)」
――メジャー・デビューということで環境の変化は感じていると思うのですが、関わる人が増えることでプレッシャーを感じたりは?
間宮「感じています。こんなにたくさんの方々がヤなことそっとミュートに関わってくださると思うと……絶対失敗できない(笑)。いっそう気を引き締めてやっていかないとダメだと思っています」
――そもそもメジャーが決まったときはどう思ったのでしょうか。
間宮「実は、メジャー・デビューするかもしないかもみたいなお話は前からあって。そこから時間を経て決まったので、やっとという思いが強かったです」
なでしこ「それこそ2年前くらいから言われていて、なかなか進展しない状況が続いていて、お客さんからもメジャー・デビューしてほしいという声は聞こえていたので、やっとみんなにお知らせできる、期待に応えられるという気持ちになりました」
――凛さんはまた違う感慨があるんじゃないですか?
凛「発表したとき、お客さんが喜んでいるのを見てもらい泣きしてしまって。入ってすぐのことだったし、私はその歴史の中にいなかったのに泣いてしまっていいんだろうかっていう申し訳なさがあったり。メンバーとファンの皆さんが積み上げてきたものの中にひゅっと入ってデビューするわけですから、背負うものは大きいなと感じています」
修行みたいだった
――以前、セカンド・アルバム『MIRRORS』リリース時に話を訊いたときに、『STAMP EP』のヴォーカルに納得がいっていなくて、プロデューサーの慎(秀範)さんと口論になったと言っていたのが印象的で。その後の作品はうまくいっているわけですよね。
間宮「懐かしい(笑)。セカンドの後に3か月連続の〈ユモレスカ〉シリーズがあって、そのあとに9か月連続の〈NINE〉シリーズがあってのいま、という感じなんですけど。〈ユモレスカ〉はみんな全力を出せたと思っていると思うんですけど、実は、個人的には〈NINE〉シリーズの中盤あたりではちょっと録り直したいなっていう……」
――より高いレヴェルで悩むようになったということですか?
間宮「いや、そのときのメンタルがちょっと。あの……情緒不安でして(笑)」
――おお……。
なでしこ「まさに〈NINE〉のシリーズを出している間に4人から3人になって、また4人になったので」
南「3か月ごとに変化があった時期の曲たちなので、そういう私的な面も反映されたのかなと」
なでしこ「〈NINE〉はそれまでになかった雰囲気がある個性的な曲だと思っていて、ライヴとかレコーディングを通して歌の面で成長できたと思うんです。それにメンバーの移り変わりもあって、気持ち的にも成長できたんですよね」
間宮「それは思う。修行みたいだった(笑)。体調も崩したりしてましたし」
なでしこ「レコーディングの日に熱が出たこともあった。みんな何かしら身体に異変が(笑)」
――一体いつ新曲を覚えているんだというペースでしたし。
間宮「考えたらここ1~2年は常に何かに追われている(笑)。レコーディングもそうだし、もちろん振り入れもあったので大変でした」
なでしこ「その修行期間を経てのメジャー・デビューなんです」
――激動の時期を経ての今作なわけですね。
南「〈NINE〉で新しく見えてきたものがたくさんあって、成長したからこそ、自分のダメなところもよく見えてくるようになりました」
間宮「今回はすごく納得がいっています(笑)。それに“Afterglow”はずっとライヴで歌ってきた曲なので、しっかり準備して臨めたと思います」
――“Afterglow”は満を持しての音源化ということですよね。
間宮「ずっと応援してくれている方からも〈ようやく音源として聴ける〉という声があるので、本当に良かったなと思います」
なでしこ「ずっとタイミングを窺っていた感じだったので。“Afterglow”は生のストリングスが入っていて、これまでのライヴで聴けたオケよりも壮大になっているんです。メンバーで弦楽器のレコーディングを見に行ったんですけど、すごかったです」
凛「メジャーの力を実感しました(笑)」

なんとかがんばれてる
――“beyond the blue.”も切ない名曲ですね。
間宮「“Afterglow”は別れの曲なんですけど、実は“beyond the blue.”も別れの曲で、“Afterglow”で登場する人視点だと去っていった側の歌なんです。歌詞もリンクしている部分があったりします。そういう意味で、ひとつのCD作品として2曲を一緒に楽しめると思います」
――この2曲で勝負をかけるわけですね。ちなみに最近のメンタルの調子はどうなんですか?
間宮「ダメです!」
――ですか(笑)。
なでしこ「振り返ってみて、安定してた時期とかあったかな?」
間宮「私は自分のメンタルに振り回され続けているので(笑)。去年の秋頃に自分の気持ちを表明したPowerPointを作って運営さんに見せたんですよ! 〈こういう問題があると思うんですけど、それに対して私はこういう案を出します〉みたいな」
――すごい(笑)。パワポを作ってプレゼンしてしまうくらい追い詰められていた。
間宮「そんな状態のなか、つかさが入って、メジャー・デビューもできることになったので、光が差しつつあるんです」
なでしこ「去年の年始にZepp DiverCityでワンマンをやって盛り上がりがあったんですけど、それ以降は大きなお知らせがない状況が続いていたんですよね。久々にみんなに喜んでもらえるお知らせができたので、いまはその嬉しさでなんとかがんばれてる状況ですね」
――メジャー・デビュー直前の心境で〈なんとかがんばれてる〉という言葉が出てくるあたりが、ある意味ヤナミューらしい気もします。
凛「……私、こんな能天気じゃちょっとヤバいですね」
――その雰囲気を貫くのも個性になるんじゃないかなと思いますよ。といったあたりで時間ですね。
間宮「メンタルの話とか大丈夫でしょうか(笑)」
――問題ないです! またお話を訊かせてください。
ヤなことそっとミュートのあゆみ
〈ヤなことだらけの日常をそっとミュートしても何も解決しないんだけど、とりあえずロックサウンドに切ないメロディを乗せて歌ってみる事にする〉をコンセプトに、ヤなことそっとミュートが始動したのは2016年のことだ。当初こそ同系列のBELLRING少女ハートに続く新グループという触れ込みではあったが、すぐに独自路線に移行。間宮まに、なでしこ、南一花の3人組で同年8月に3種の短冊シングル『8CM EP』を発表後、レナを加えた4人組として11月に『Sealing EP』をリリース。翌2017年3月のファースト・アルバム『BUBBLE』は、シューゲイズやグランジを取り込んだオルタナ・サウンド主体の作りで高い評価を獲得した。
その後は4曲入りEP『STAMP EP』と会場限定盤『echoes』を経て、2018年にセカンド・アルバム『MIRRORS』を完成。同年には後にサード・アルバム『ユモレスキ』にまとめられるEP〈ユモレスカ〉3連作を配信……と快調に音源を発表してきた。2019年1月にはライヴDVD「THE GATE Live at Zepp DiverCity」に収められるワンマン〈THE GATE〉を開催し、そこではこのたび音源化された“Afterglow”も披露されていた。並行して定期公演〈NINE〉に合わせ、今年2月の“記憶とハーモニー”に至るまで9曲を順次公開。その間にレナの脱退、凛つかさの加入を経験したのは本文にある通りだ。なお、間宮まにをジャケに起用したSpangle call Lilli lineのベスト盤『SCLL』もチェックをお忘れなく。 *轟ひろみ
ヤなことそっとミュートの一般流通作品を紹介。
間宮まにがジャケに起用されたSpangle call Lilli lineのベスト盤『SCLL』(felicity)