LDH Recordsの新鋭R&Bシンガー、MABUのファースト・アルバムは、期待の新人=BRIGHTEST HOPEと〈最高にかっこいい〉を意味するヒップホップ・スラング=DOPEを掛け合わせた大胆不敵なタイトル『BRIGHTEST DOPE』の通り、輝かしい自信に満ちた野心作となった。80sフレイヴァー溢れる煌びやかなディスコ・チューン“LET'S GET DOWN”で幕を開ける本作は、ダンサーとしてキャリアをスタートし、ラップや歌へと表現の幅を広げていったMABUらしく、ブラック・ミュージックへの敬愛を感じさせる多彩な楽曲が収められている。

MABU  BRIGHTEST DOPE LDH Records(2020)

 「リード曲の“LET'S GET DOWN”は、メジャー・レーベルからデビューすることを夢見て、4~5年前からずっと温めていた楽曲です。イメージとしてはマイケル・ジャクソンの“Rock With You”みたいな感じ。アルバムに新録した楽曲は、ソウル感を大事にしたラストのメッセージ・ソング“NOT LOOKING BACK”も含め、インディー時代のものがいくつかあります。今回、多くの楽曲でトラックメイキングをしてくれたD&Hのコンビは、当時からの盟友で、EXILE SHOKICHIさんの紹介で出会いました。仲間たちと一緒に作った楽曲を、この時代にフィジカルでリリースできたのは感慨深いです」。

 意欲的なフィーチャリング曲も収録している。彼をフックアップした恩師・EXILE AT­S­USHIとの“SUMM­ER WO­N'T BE BACK”はEXILE MAK­IDAIのリミックスによってさらにダンサブルな仕上がりとなった。ライヴで披露してきた“わりぃ。”にはDOBERMAN INFINITYのSWAYが参加し、アップデートされた“マジわりぃ。”に進化。二人の関係性が垣間見えるスキットも繰り広げられている。

 「SWAYさんとのスキットは、飲みにいく前の電話での会話をそのまま再現した感じ。リリックも、このフィーチャリングでしか出てこないリアルなものになっていると思います。SWAYさんはストリート上がりで、食っていくためにデビュー前はデザインの仕事もやっていたそうです。なんでも自分で作るのはストリート上がりならではの姿勢で、シンパシーを感じています。今回のアルバムも、ジャケ写から歌詞カードまで自分で作りました」。

 アルバムの中で特に異彩を放つのは、表題曲の“BRIGHTEST DOPE”だろう。韓国を代表するヒップホップ・レーベルのVMC(ビスメジャーカンパニー)より人気ラッパーのLOSを招いたこの曲は、2000年代のアンダーグラウンド・ヒップホップを思わせる、玄人受けしそうな仕上がりだ。

 「今回のアルバムでは、J-Popのリスナーはもちろん、日本語ラップのリスナーやUSヒップホップ/R&Bのリスナーまで振り向かせたくて、ちょうどその中間くらいを狙っています。LOSとのフィーチャリングは、90年代から日本語ラップ・シーンでA&Rをやっている方のディレクションで実現しました。こういうストレートなヒップホップは、若いリスナーには新鮮に響くんじゃないかな」。

 渾身のアルバムを提げて、ネクスト・ステージへと向かうMABU。アーティストとして、もっとも大事にしているのはどんな感覚だろうか。

 「大きなテーマとしているのは、グッド・ヴァイブス。ふだん生活するなかで感じたことを等身大の言葉で伝えることで、聴いた人を元気にしたい。ネットでは虚飾に彩られた言葉や写真が並ぶけれど、本当は自分自身に嘘をつかないことのほうが大事。自分がかっこいいと思うことを素直に表現できる、リアルなアーティストになりたいです」。

 


MABU
東京は八王子出身のアーティスト。プロのダンサーとしてキャリアをスタートし、バック・ダンサーやコリオグラファー、ステージ演出などを通じてさまざまなアーティストに関わる。2015年よりシンガー/ラッパーとしての活動を開始し、コンスタントに楽曲を配信する。2018年に『GHETTO LOVE I』『GHETTO LOVE II』を連続リリースし、RED DIAMOND DOGSの“RED SOUL BLUE DRAGON”への客演も経験。EXILE ATSUSHIを迎えた“Summer Won't Be Back”を経て、2019年にLDH MUSICに移籍。4月の“HOT365”を皮切りにシングルを定期的に発表。ファースト・アルバム『BRIGHTEST DOPE』(LDH Records)を4月29日にリリースする。