大器を予感させるインディー・バンドの登場だ。Johnnivanは2018年1月に結成。東京のライブハウス界隈で頭角を表わし、〈サマーソニック〉や〈りんご音楽祭〉への出演も果たしている。その快進撃を支えているのはフィジカルに訴えかけるパフォーマンス能力。〈生楽器とダンス・ミュージックの融合〉をテーマに掲げる彼らの演奏は、新旧のポスト・パンク〜アート・ロックと共振し、不穏で謎めいた陰りを帯びている。それともう一つ、ここまでフロントマンの存在感が圧倒的なバンドも、最近では珍しいのではないだろうか。
日本/韓国/アメリカの多国籍メンバーが集い、グローバルな価値観と野心も備えているJohnnivan。このたび発表された初のアルバム『Students』を携え、彼らはどこに向かうのだろうか。バンド・メンバーの5人中4人、Johnathan Sullivan(ヴォーカル)、Shogo Takatsu(キーボード)、Kento Yoshida(ベース)、Yusaku Nakano(ドラムス)に話を訊いた。
不思議な気持ち悪さのある音楽
――“Nobody's Awake in This House”のMVを見て、おもしろそうなバンドが出てきたと思ったんですよね。まだデビューして間もないのに、ここまでバンドの美学がハッキリ固まっているのも珍しい。ジョナサンさんのダンスもいいですよね。
Johnathan Sullivan(ヴォーカル)「気分に任せて、恥ずかしくない程度に踊ってみました」
――ダンサブルなサウンドを奏でているけど、どこか気持ち悪い感じがする。そこが持ち味なのかと思いましたが。
Johnathan「(バンド内で)話し合ったり、意識してそうなったりしたわけではないですね。たまたま出来上がった曲がそういう音になった感じ」
Shogo Takatsu(キーボード)「あまりストレートなものにしたくないというのはあります。誰もが使っているような音色やフレーズに頼らず、新しいものを入れ込みたい。その結果、いろんなサウンドが入り乱れて不気味な感じになっているんじゃないかと」
Yusaku Nakano(ドラムス)「Johnnivanの音楽は整理されているけど、リズムはそこまで整いすぎていない。音自体はすっきり聴こえてくるけど、人間っぽい揺らぎもあって。そこが気持ち悪さに繋がっている気がします」
――そういう一筋縄ではいかない音楽を作ることは、このバンドにとって重要だと言えそうですか?
Shogo「というより、そういう音楽が好きなんです」
Johnathan「僕らが聴いている音楽が日本のインディー・シーン、特に東京のコンテクストでは普通じゃないように見えるだけで、ちょっと視野を広げてアメリカやイギリスに行ったりすれば、自分たちがやっていることはわりと普通じゃないかな」
LCDサウンドシステムやフェニックスに憧れて
――なるほど。どんな音楽を聴いてきたんですか?
Johnathan「小さい頃はアークティック・モンキーズやレディオヘッドとか。家族が(オアシスではなく)ブラー派だったので、その影響が大きいかもしれない(笑)。大学でバンドに入ってからだと、LCDサウンドシステムやセイント・ヴィンセント。最近だったらUSガールズ、ワイズ・ブラッドとか」
Shogo「僕はフェニックスとかが好きで。メンバー5人で被ってるのはLCDだと思います」
Kento Yoshida(ベース)「バックグラウンドはわりとバラバラで。僕とYusakuは邦楽上がりなんですけど、このバンドを組むにあたって、ジョナやShogoの好きな音楽を聴きながら吸収している感じです」
――フェニックスやLCDが好きなのは音からも伝わってきますが、彼らのどんなところに惹かれます?
Johnathan「音楽そのものも好きだし、クリエイティヴ面の自由さや生き様もカッコイイですよね。ジェイムズ・マーフィーは作曲家として素晴らしいけど、自分がおっさんだと自覚しているところも好きです」
――過去の伝説的な音楽の現場にいあわせていたことを自慢しながら〈いまはもうエッジを失ってしまった〉と自嘲する“Losing My Edge”にもあるように。
Johnathan「そうそう。そういう自由さや正直さ、人間的な魅力を持っている数少ないアーティストの一人だと思います」
Shogo「僕はアルバムの作り方かな。フェニックスが特にそうだけど、ただ単にヴァージョン・アップを重ねるんじゃなくて、いつも予想外の展開を見せていますよね」
――アルバムごとに作風やコンセプトを大きく変えてくるけど、ブレない軸もしっかりある感じ。
Shogo「レディオヘッドやテーム・インパラもそう。そんなふうに音楽と向き合っていくバンドになりたいです」