2025年7月24~27日の3日間、まさにいま開催中の〈FUJI ROCK FESTIVAL ’25〉。土曜日のチケットや3日通し券が売り切れ、現地が盛り上がっているほか、充実の配信で視聴している音楽ファンも多い。そんな今年のフジロックの目玉の一つは、26日の19時からGREEN STAGEに出演した山下達郎だろう。フジロック初出演という記念すべきパフォーマンス、そして実際に大盛況だったという現地からレポートが早くも届いた。 *Mikiki編集部
昼過ぎから続いた雨はジェイムス・ブレイクのステージで止み、濡れた草木の匂いとひんやりとした空気、そして山下達郎への期待がGREEN STAGEを包み込んでいた。
開演50分前、観客たちはサウンドチェックの時点からステージを凝視していた。もちろん、ワンマンライブでは決して目にすることができない光景だからだ。思わず皆が前のめりになるのもよくわかる。これから我々は、誰も目にしたことがないようなライブを目撃することになるのだから。
開演時間を迎えると、山下の多重コーラスによるいつものSEが苗場に鳴り響く。オーディエンスの拍手に出迎えられ入場してくるバンドメンバーたち。柴田俊文(キーボード)、難波弘之(キーボード)、鳥山雄司(ギター)、伊藤広規(ベース)、小笠原拓海(ドラムス)、宮里陽太(サックス/フルート)、ハルナ(コーラス)、ENA(コーラス)、三谷泰弘(コーラス)と、今年開催された竹内まりやのアリーナツアーを支えた面々が再び集結した。
そして黒いニット帽、ブルーのシャツと普段通りのスタイルで山下達郎が登場。満員の会場からの歓声を手を挙げて受け止める。今年デビュー50周年を迎えながら今回が初のフジロック。日本でも屈指のライブアーティストである山下本人も、初めての苗場の歓声に少し小っ恥ずかしさのようなものを感じていたのかもしれない。
ライブはジャムセッションからスタート。その瞬間、ステージサイドの大型ビジョンに山下の姿が大きく映し出され、さらに大きな歓声が上がる。ホール会場をメインとする山下自身のライブでは、こうした映像装置は存在しない(直近の竹内まりやのツアーはアリーナ規模だったのでビジョンはあった)。近くにいた何度もライブに通っているであろうヘヴィリスナーの方も、この光景には驚いたのか素直に「これはスゲー!」と興奮していた。
セッションが徐々に一曲のグルーヴとなっていき、テレビで耳にしていた“MOVE ON”をCM分の尺だけ披露。本編を迎えるためのプロローグ的な演奏だろうが、不思議とこのあとに続く1982年発表の名曲と近いシンパシーを持つ楽曲なんだなと実感した。
一言「よろしく!」と力強く挨拶すると“SPARKLE”へ。あのギターカッティング、あの歌い出しを聴くだけで、雨に打たれて疲弊した身体の細胞がみるみる蘇っていく。
彼の愛機であるブラウンのテレキャスターとともにカッティングする手元がビジョンに映し出されたが、これがまた胸熱だった。こんなに近距離で山下の手元を見ることは、果たしてこの先あるのだろうか。ボディやピックガードに刻まれた傷が照明でキラキラと照らされる。脱力した右手首のスナップ、フレットを優しく押さえる左手の指。真似はできても再現ができないギターカッティングにただ魅了された。
登場からの興奮をクールダウンさせるような“あまく危険な香り”も格別だった。宮里の艶やかなフルートの音色も相まって、夜を目前にした苗場をアダルトなムードに染め上げた。
「フジロックこんばんは、山下達郎です。初めてのフジロックです。呼んでいただいて本当にありがとう。そのうえこんなに集まっていただいて、重ねて重ねてありがとうございます。私はおかげさまで今年デビュー50周年を迎えることができました。記念すべき50周年にフジロックに出られて嬉しいです。力いっぱい頑張ってやりたいと思います」