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コラム

映画「LETO -レト-」80年代のロシアでロックに恋した若者たちを描く、ひと夏の青春群像劇

©HYPE FILM, 2018

80年代のロシアのロック・シーンを描いた、ひと夏の青春群像劇

 ロシアがまだソ連と呼ばれていた80年代初頭。ロシアの若者たちの間で、新しい音楽への情熱が高まっていた。ロックンロールと呼ばれるその音楽は、敵対する資本主義社会から届いた自由を求める叫び。国家が厳しい文化規制をするなかで、若者たちはロックに何を託したのか。実在したミュージシャンをモデルにした映画「LETO-レト-」は、ロックに恋したロシアの若者たちのひと夏の物語だ。

 物語の舞台はレニングラード。ここには国家公認のロックを演奏してもいい場所、レニングラード・ロック・クラブがあった。そこでは共産党青年部が歌詞の内容や演奏、観客の態度を厳しくチェック。バンドは観客を煽るような演奏は禁じられ、観客は行儀よく座って演奏を聴かなくてはいけない。当時、ロシアではロックはクラシックと同じ優れた芸術でなければいけないと考えられていた。そんな息苦しい環境のなかで、マイク・ナウメンコは人気ミュージシャンとして活動していた。妻のイリーナはマイクの良き理解者で、小さな息子の子育てをしながら、部屋にたむろするミュージシャン仲間の面倒も見ている。そんな二人の前に現れたのが、ヴィクトル・ツォイという青年。ある夏の日、マイクと仲間たちが海辺でパーティーをしていると、ヴィクトルと友人がやって来て歌を聴いてほしいと言う。その演奏を聴いてヴィクトルの才能に惹かれたマイクは、ヴィクトルと交流を深めていく。

©HYPE FILM, 2018

©HYPE FILM, 2018

 本作でまず興味深いのが、これまであまり知られることがなかったロシアのロック・シーンの状況だ。輸入が規制されているロックのレコードは貴重品。マイクはオープンリールのテープに録音した音源を聴き、曲を聴きながら歌詞を書き起こしたり、ジャケットを模写したりとロックに対する情熱や研究心はハンパじゃない。一方、ヴィクトルはフリーマーケットで自分が描いたロックスター、マーク・ボランやビートルズのポートレートを売り、ロック好きの若者が買っていく。そんな厳しい環境のなかで、マイクとヴィクトルは自分の音楽を見出すために悪戦苦闘する。

©HYPE FILM, 2018

©HYPE FILM, 2018

 歌詞が検閲されるなか、「お前は一体何を歌うんだ」と仲間から問い詰められながら、規制されるギリギリのところで活動するマイク。一方、レニングラード・ロック・クラブに出演しようとしたヴィクトルは、共産党青年部から、労働者のリアルな姿を描いた歌詞が芸術的ではない、と批判され、レコーディングがうまくいかないことにも苛立ちを隠せない。マイクはそんなヴィクトルを気遣いながらデビューを手助けする。そして、マイクを愛しながらもヴィクトルに惹かれていくイリーナ。彼女はマイクに「ヴィクトルとキスしたい」と正直に気持ちを打ち明ける。ヴィクトルもイリーナも失いたくないマイクは、何も言わずにことの成り行きを見守ることしかできない。

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