小説と音楽の連動で完成したとあるバンドの物語――パンチライン頻出の音楽人生を歩んできたクリエイターだからこそのエモーションがここに!

 ボーカロイドにスクリーモを歌わせる〈ボカリーモ〉で人気を博し、現在はBABYMETALなどのサウンド・プロデュースをはじめ、DJやバンド・My Eggplant Died Yesterdayのフロントマンとしての顔も持つクリエイター、ゆよゆっぺ。今回彼がリリースした『ぼかろほりっく』は、作家の城崎勇太が綴った小説と、ゆよゆっぺの鳴らす音楽が完全連動したコンセプト作品である。

 「僕はもともとバンドをやっていて、ボカロを始めて、いまはこういうことをしていると。その流れが、城崎さんが物語でやりたいものと似ているということでお話をもらったんですけど、最初はタイトル曲のみをお願いされたんですよ。内容が結構ザックリとしていたので、とりあえず想像を膨らませながら書いてみたらOKが出て。じゃあこれにPVをつけて公開しましょうということになったら、あのクォリティーですよ」。

ゆよゆっぺ 『ぼかろほりっく』 flying DOG(2014)

 現在動画サイトで公開されている同曲のPVは、〈あ、こういうアニメが始まるんだ〉と勘違いしてしまうほどの美麗っぷり。ゆよゆっぺ自身「そんなに本気だったの(笑)!?」と焦ったようで……。

 「そこから〈全章の音楽を作ってもらえませんか?〉っていう話になったんですけど、期間が2週間ぐらいしかなかったんですよ(笑)。で、さすがに物理的に無理だから、〈助っ人を呼んでもいいですか?〉って」。

 その助っ人が、ボカロ楽曲も発表しているスクリーモ・バンド出身のベーシスト、ゆよゆっぱ──そう、ゆよゆっぺの実の弟だ。本作は、ゆよ兄弟初の共同作品でもある。

 「お互いの曲を投げ合うことで変わっていったから、共作みたいなところもあって。でもまぁ、作業はかなりカオスでしたね(笑)。正直、弟は作家としてはまだ未熟なんです。でも、実家でくすぶっていたし、ここで失敗したら人生終わると思ってたから、かなり必死になっていて。俺としても、弟に〈作家とは何か?〉っていうのをちゃんと見せたかったし、意地もあったし。もし弟といっしょじゃなかったら、ここまで根詰めてやれなかったかも」。

 アルバムは全7曲。爽快感を湛えて疾駆する“Imagination”や、「〈学生バンドが考えるバンドの定番曲〉を考えながら作った」という4つ打ちナンバー“Our possibility”、壮大かつ流麗なミディアム“遥か彼方へ”など、エモーショナルなサウンドが展開されている。しかし、彼(ら)らしさはあるものの、普段よりもゴリゴリ具合は抑えめ。そこは制作にあたって「一旦ゆよゆっぺを横に置いたから」とのことだ。

 「物語にいちばん合うと思ったのがエモだったんです。城崎さんも〈学生たちの生臭いバンドの話〉と言っていて、とにかく〈生〉ということを伝えたいと。だから、〈いかにライヴ感を出せるか?〉っていうところは、すごくこだわりました」。

 ボカロ界隈では〈小説〉と〈音楽〉が連動した作品は珍しくないが、どれもひとりのクリエイターがその両方を手掛けていることがほとんど。しかし『ぼかろほりっく』は、コラボ作品である。共同作業ゆえの苦労も多かったのでは?

 「そこは城崎さんも良いことを言っていたんですけど、〈フェイス・トゥ・フェイスは、人間がモノを生み出すための最高のツール〉だと。例えば、僕らが作った曲を城崎さんに渡したら、小説の内容が変わったりしたんです。僕としても、弟が作ったメロディーがトリガーになったところもあったし。だから、一人でやっていたらそれぞれの限界値を超えられなかったと思うんですよ」。

 本作は、お互いが手探りをしつつ、相乗効果をもって完成させた――まるでバンドが曲を作るように、作家たちが向き合って作り上げたバンド小説/音楽である。そしてその音楽は、〈バンドというフォーマット〉を愛して止まないゆよゆっぺだからこそ、作ることができたのだろう。

 

▼関連作品

ゆよゆっぺの2012年作『Story of Hope』(YAMAHA)

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▼ゆよゆっぺの外仕事を一部紹介

左から、浮気者の2013年のミニ・アルバム『I 狂 U』(ポニーキャニオン)、AKIHIRO NAMBA × TAKESHI UEDAの2013年のシングル『FIGHT IT OUT feat. K(Pay money To my Pain)/F.A.T.E.』(STFU)、BABYMETALの2014年作『BABYMETAL』(トイズファクトリー)

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