バロック時代の〈組曲〉はサラバンドやジーグなど複数の舞曲によって構成される。そのため、演奏の際に〈踊れること〉を意識するか否かがよく議論となる。本書では、バロック時代の舞曲について、当時の振付を記譜した〈舞踏譜〉、及び伴奏ヴァイオリンの運弓法の資料を検証。前者ではクーラントを例にとり実際の舞踏とマレ、クープラン、バッハの同名舞曲のリズムを比較してその舞踏性を、後者ではメヌエットを例にとり運弓の準備動作がリズムに及ぼした影響を読み解いてゆく。バロック音楽の演奏が 〈舞踏的な一体性や循環性を広く含みうる〉という結論に目から鱗が落ちるのは筆者ばかりでないだろう。