2020年はエラス=カサド指揮による〈第九〉がレコードアカデミー賞を受賞して、ベートーヴェン・イヤーの注目だった。この演奏も素晴らしかったが、M・ホーネック指揮による録音は個人的に衝撃的な名演だった。音楽のキレの良さが抜群で、強拍・弱拍の細かな創り込みにも目が行き届いている。オーケストラはモダン楽器による演奏で弦楽器は豊麗、トランペットやホルンは朗々と鳴り響く。合唱も強弱が個性的だった。ホーネックはカルロス・クライバーを尊敬していると公言しているが、クライバーが〈第九〉を指揮していたらこの演奏のような感じになるのではないかな、と愉しく興奮して聴いた。