インスト・バンドshabelのピアニストでもあるMayu Takahashiと、ΔHMHTHP(デーメーテール)でも活躍中のドラマーYukiko Abeが昨年組んだユニットLean Rich(リーンリッチ)が、2021年6月30日にファースト・アルバム『stoichiometry』を配信リリースした。
このユニットの特徴は、キーボードとドラムだけのユニットでありながら、クラシックからジャズやプログレまでを内包した、けれどそのどれにも属さない多彩で独特な音と表現力と世界観を持っていること。そして、それらの楽曲を構成する〈曲の欠片たち〉が出来上がるさまをSNS上で公開し、まるでパズルを組み立てるように曲作りをしていくことだ。
この不思議なユニットとアルバムはどのようにして誕生したのか、TakahashiとAbeに話を訊く。

パンにはリーン系とリッチ系がある
――お二人の出会いはいつですか?
Mayu Takahashi「私がやっているshabelと、ゆっこちゃん(Abe)がやっていたA perfect day for apple deerというバンドが対バンする機会があって。それがインスト祭りみたいなイベントだったんですよ」
Yukiko Abe「その時LINEを交換したんだよね。2019年とかかな? 対バンしてから1年もしないうちにユニットに誘ってくれて」
Takahashi「インスト・バンドの界隈で、女性で、かつこんなに一心不乱に叩くドラマーを見たことがなくて。その時はLINEを交換するだけだったんですけど、その後しばらくして私から誘って」
――Abeさんのドラムはそんなすごかった?
Takahashi「なんて言えばいいのか……激しいけど、緻密なんですよ。私は空間を埋め尽くすようなドラムがすごく好きで、ゆっこちゃんはドラムと一体化してるみたいで」
Abe「めっちゃ褒めてくれる(笑)」
――順番としては、ユニットをやろうと思ったのが先ですか? それともAbeさんと一緒に何かをやろうと思ったのが先ですか?
Takahashi「ユニットをやろうと思ったのが先ですかね。その対バンをする1か月前くらいに、私が初めてピアノのソロ・ライブをやったんですよ。でもそのお誘いが結構急で、その時はピアノだけで成立するような曲を5~6曲、ババッと作って演奏したんですけど、その時に何か物足りないというか、ドラムが鳴っていてほしいなって思ったんですよね」
――なぜドラムだったんでしょう?
Takahashi「変な話かもしれないけど、ずっとドラムが好きなんですよね。特にリムショットが好きで(笑)」
Abe「それ知らなかった(笑)」
Takahashi「あと私、工場とかクレーンとかが好きなんですけど、ドラムにもそういう見た目的な魅力があるし。それにゆっこちゃんのドラムは、なんかドラムが喜んでいるような叩き方をするので嬉しいんですよね」
――そんなドラムを叩く人がいるんですね。
Abe「普通に、ワンタムのシンプルなドラムなんですけどね。ちょっとスプラッシュがついてるくらいで」
――Abeさんはお誘いを受けて、どう思いました?
Abe「単純に嬉しかったです。実はその対バンした2~3か月後にバンドを脱退していて、しばらく1人でドラマーとしてやっていこうと色々活動していたんです。でも半年くらいで無理になってきて、やっぱり誰かと一緒にやりたいなって時だったので。タイミングが良かったです」
――なぜLean Richっていう名前なんですか?
Abe「パンって、リーン系のパンとリッチ系のパンがあるんですよ」
――え? ちょっと待ってください。いきなりついていけない!
Abe「リーン系っていうのは油分が少なめのバゲット系のパンで、リッチ系は油分が多めのクロワッサンとか食パンとかのパンで。二人ともパンが好きなんですよね(笑)」
Takahashi「LINEを交換をする時に、とりあえず1個スタンプを送るじゃないですか。そしたら、お互いパンのスタンプを持っていて、それで一気に親近感が湧いて(笑)。ジャケットの絵にもパンが隠れてます」
Abe「リーンとリッチ、並べたら響きが良かったし、訳すとLRになって左利きと右利きみたいだし」
Takahashi「私が左利きでゆっこちゃんは右利きなんです」
Abe「ライブをやる時も左右で配置して向き合ってやりたいなという気持ちはあるし」
――なるほど。だんだん分かってきました。

風景やイメージが思い浮かぶタイプと、物に命を見ちゃうタイプ
――それでは楽曲作りはTakahashiさんのソロ曲にドラムをつけてもらうことから始めたんですか?
Takahashi「そうですね。最初に曲を2曲送ってみて、ドラムをつけてもらって」
――こういうドラムがいいみたいなリクエストはありました?
Abe「全部お任せでいいって言ってくれたので、全部お任せでやってみて、最初のスタジオに入った時に合わせてみたらいい感じだったんですよね」
――今作を聴いていて、ドラムはなかなか一筋縄じゃないというか、全く同じリズムを繰り返してるところが少ないですよね。どうやって付け足してるんですか?
Abe「ピアノを聴いた時にこう合わせたいなって思い浮かんだことをそのままやることもあるし、あとは、仰ってくれたみたいに同じものを繰り返すのが苦手なんです。自分でも飽きちゃうし、他人にもつまらないって思われるんじゃないかなっていうことで、すぐに面白いことをしたくなっちゃって。だから複雑なことをするために何かをしてるわけではなくて、好きな風につけたらああなっちゃうみたいな」
Takahashi「確かに、2回出てくるフレーズは絶対違うことしてる気がする。面白いですよね」
――もう少し詳しく訊きたいんですけど、Takahashiさんのピアノがどういうドラムを求めているのか、聴くと分かるんですか?
Abe「私は、曲を聴くと景色や風景、抽象的なイメージ、例えばキラキラとかサラサラとかが思い浮かぶタイプだから、それをドラムで表現しようとしてるんです」
Takahashi「素敵なこと言うわね!」
――そのイメージはお二人で共有するんですか?
Abe「しないですね。あんまり言ったことないです」
Takahashi「あんまりないね。それはあえて言わない感じ?」
Abe「いや、秘密じゃないけど、訊かれないから言わない(笑)」
――じゃあTakahashiさんは曲を作る時、どういうことを考えているんですか?
Takahashi「私は、何かを考えて曲を作ってるわけではないんですよ。例えば今作の“First Intention”っていう曲は、ソロ・ライブに誘ってもらったはいいものの、ライブが1か月後で、〈1か月後だよどうする〉ってなった時に出来た曲で。今やらなかったら絶対やらない気がするなと思って、その時の〈やってみよう〉っていう勢いや衝動をちゃんと音にしてあげたいっていう気持ちだったんです。割と物や気持ちが〈死んでしまう〉と思っていて、そういうのは悲しいので、なんとか形にしたいんですよね」
――Takahashiさんは、ピアノを弾いてないと、〈うわー、最近弾いてない!〉ってなるんですよね。
Takahashi「キーボードにもピアノにも、物に命を見ちゃうタイプで、〈弾けなくてごめん〉とか、弾いたら〈やっぱりコレだー! ピアノもやっと喜んでくれてる!〉みたいな感覚になるんです」
――TakahashiさんとAbeさんは、それぞれお互いをどういう人だと思いますか?
Abe「まゆちゃんは常に明るい人で、大変なことがあっても表に出さないタイプ。私と接する時もめっちゃ明るくしてくれるし、だからLean Richはマイペースに進められているし、何かにつまづいて予定が狂っても、〈じゃあ、ここはこう修正してやっていこう〉ってプラスな感じで進めていける人だと思ってます」
Takahashi「いえーい!」
――Takahashiさんから見た、Abeさんは?
Takahashi「実は結構歳下なんですけど、どう考えても私よりしっかりしてて、安心感がすごくある。何かメニューを頼む時も即決だし(笑)、迷いや揺らぎがなくて、それが音にも出てると思うんです。Lean Richは今後もマイペースに活動していくつもりなんですけど、やるならちゃんと、何かを発信して形に残していかないといけないじゃないですか。私は締め切りがないとそういうのがなかなかできないタイプなので、そういうことを決めてやってくれるんですよね」
――真面目なんですね。
Abe「よくそう言われますけど、そんなことないです(笑)」
Takahashi「いやでも、あるよ絶対。周りが感じるんだからあるんだと思う」
Abe「でも、それが少しコンプレックスなところもあって。真面目はいいことだけど、真面目って、イコールつまらない人かもしれないと感じちゃうから、もっと変なことをしたいなって思って、変拍子とかをめっちゃ使うんですよね(笑)」
――大丈夫です、ドラムは相当変ですよ(笑)。
Abe「だから、変と言われたらちょっと嬉しいんですよ。面白くありたいなって」

パズルの欠片を作って曲に
――ソロ曲にドラムを付けるのとは別に、お二人はコロナ禍の間、ずっとTwitterで〈宅録作曲パズル〉というのをやっていましたね。
Takahashi「せっかく活動を始めたけど、コロナがあってまずライブができなくなってしまって、定期的に何かを発信しないと見てもらえないという状況になった時に、私は曲を作るのが好きなので、曲をワンフレーズずつ作っていって、後で繋げたら面白いんじゃないかというのを提案したんだよね」
Abe「そしたら面白かった!」
Takahashi「1週間に1投稿するという感じだったので、週の前半に私がピアノを考えて送って、後半にドラムをつけてもらうみたいな」
――そうやって出来たパズルの欠片は、全部が何かしらの曲の一部になってるんですか?
Takahashi「そうです。全部使ったんですよ! 全ピースどこかに散りばめられています」
Abe「今回のアルバムは7曲中4曲をそうやって作ったので、結構パズルで出来上がっています」
Takahashi「あれをやっていたから、ハイペースで作曲を進められた可能性はありますね。パズルは全部で20回くらいやったんですけど、最初の8回で1曲目。次の8回で2曲目。パズル3は4回だったね」
Abe「最初は8ピース作って、いざ繋げようってなったら、展開が盛り盛りな感じになってしまって」
Takahashi「幕の内弁当みたいなね」
Abe「そうそう(笑)。面白かったからいいんですけど、その後はもう少し試行錯誤していきました」
――ということは、パズルで生まれた曲が4曲、元々曲があったものにドラムを付けたものが3曲ということですね。
Takahashi「そうですね。ソロ・ライブでやった曲のうちの3曲が今回収録されました」
――そういうやり方で作曲していて、大変だったことはありますか?
Abe「ピースを作る時は短い曲で自分の好き勝手に、ちょっと小難しいことも練習したらできるから好きな風に入れていくんですけど、それらが組み合わさってまとまったらめちゃくちゃ難しくなって(笑)」
Takahashi「最初から最後まで気を抜くところがない曲、みたいなね」
――いずれライブで再現できるんですか?
Abe「頑張れば……できるはずです。レコーディングは通してちゃんとしたので」
Takahashi「私もそれに近いんですけど、毎週投稿するために1ピースごとで集中するので、その1ピースだけでも完成してる曲みたいになっちゃうんですよ。なので繋げる時に、全部サビみたいになっちゃって、どうしようってなってしまって。あと転調が好きすぎて、ピースの中に転調を入れちゃってるせいで繋げるのが大変だったりもしましたね。でも大変というより楽しかった方が強いです」
――たしかに転調はちょくちょく出てきます。
Takahashi「それがドラムとピアノのいいところで。ギターやベースがいると転調した時に大変で、なかなか受け入れて貰えなかったりするんですよ。そこは二人だけでやってるメリットですね」

〈映像音楽みたいなインストのポップス〉
――資料にはTakahashiさんが〈自分が欲しいと思う音楽ができた〉と書いていらっしゃるんですけど、Takahashiさんの欲しい音楽とはどういうものですか?
Takahashi「私はゲーム音楽やアニメのサントラとか、映像系の音楽が好きなんですよ。ドラマチックなのが好きなんですよね。ゲームのオプション画面でずっと曲を聴いていたり、ニンテンドーDSで『星のカービィ スーパーデラックス』をやっていた時はイヤホンを挿してちょっとだけDSを開けてウォークマンみたいに聴いたりしていて。ああいう音楽ってサブスク時代になると配信されてなかったり、なかなか見つけられないことが多かったりするので、そういうのが勿体ないなって思うことがあるんです。
それに、映像音楽はやはり映像のイメージがついているので、逆に〈ああ、あの曲ね〉ってなって聴かれなかったりすることもあると思うんです。曲自体もそもそも素敵なんだよって。そこで、〈イメージがないポップな映像音楽〉とか、〈映像音楽みたいなインストのポップス〉みたいな曲を作りたいなと思っていて。インストものはたくさん聴くんですけど、そういうのはやっぱりどこにもないから、それはニッチなジャンルかもしれないですけど、自分がそれをやるしかないと思って、作りたいものが出来たっていう感覚なんです」
――イメージはそれぞれがつければいいということですか?
Takahashi「そうですね。固定されたイメージではなくて、聴いてくれた人が、例えばプレゼンの前に気持ちを上げたいから聴くとか、好きな時に聴いてもらえるようにしたいんですよね。決まってしまっているから聴きづらくなっているのが嫌ですね。例えば3曲目の“blooming“って曲は、花が咲いていくイメージで作った曲で、自分なりのストーリーはもちろんあるんですけど、そういうのにあまり囚われずに聴いて欲しいです」
――実は今回インタビューの後半で、1曲1曲がどういうイメージで作られたのか訊こうと思ったんですけど……。
Takahashi「それはいいですよ! 聴いた人がどんなイメージなのか気になってくれて、それを読んでくれるのは素敵なことだし、どこかに答えがあるようにはしておけたらと思うので。ゆっこちゃんのイメージも聞きたいし」
――じゃあ、1曲目の“First Intention”からどんなイメージだったのか訊いていいですか?
Abe「私はこの曲に、最初薄暗い感じのバーみたいなところにいて、ステージにスポットライトが差していって、Aメロでピアノとドラムがライトアップされて、二人がめっちゃ演奏してるみたいなイメージがあって。伸び伸びしてるところもあるし、音をぶつけ合って絡み合うみたいな熱い感じもあります」
Takahashi「確かにぶつかってる感じがあるよね」
Abe「そうそう」
――でも二人で戦っているわけではないですよね?
Abe「『BLUE GIANT』っていうジャズ漫画があるじゃないですか。主人公が〈ジャズは熱くてハゲしい〉って力説するんです。激しさ=音量ではなくて、〈熱い〉って言ってるその気持ちなんですよね。戦ってるわけじゃないけど、気持ちがいちばん激しい感じかなって思います」
Takahashi「ミックスしてもらった時に、エンジニアの伊藤さん(伊藤秀樹/hideki_itooo)にもこの曲が一番気持ちが乗ってるねって言われたよね(笑)」
――途中すごく不思議なところが出てきますよね。最初は5拍子で進んでいたのに、同じリズムで4拍子になっていて。ポリリズムでもないし。
Takahashi「ポリリズムでもないですね、何て言えばいいんだろう」
Abe「拍のポリリズムではなくて、テンポのポリリズムみたいな。違うテンポだけど最初と最後が合ってるという」
Takahashi「左手とドラムの頭だけが合ってるね」
――分子はそのままなのに分母が変わってる、みたいな。
Abe「2拍3連みたいな感じじゃないですか。5拍4連みたいな」
Takahashi「この曲は一番最初に送った曲なんですけど、いきなりあのドラムが送り返されてきて、最初私もけっこう分からなくて、え?ってなりました(笑)。でも〈まゆちゃんはそのまま弾いてくれたらいいから〉って言われて」
――こういう曲、流行って欲しいですね。
Takahashi「流行って欲しいです。メロはキャッチーだと思うし」
Abe「その後、真っ当なポリリズムも入れているし」
――まず5拍子というのが特殊ですからね。
Takahashi「5拍子が大好きなんですよ。次は7拍子の曲入れようかな」

〈理論空燃比〉
――次はタイトル曲の“stoichiometry”ですね。〈ストイキオメトリー〉というのは?
Abe「日本語でいうと〈理論空燃比〉です。例えばエンジンっていうのは、燃やしたガソリンが空気中の酸素と化合することによってエネルギーになって動くんですけど、燃料と空気が一番効率よく反応する比率のことを〈理論空燃比〉って言うんですね。それが英語で〈stoichiometry〉って言うんですけど、理論的な比率よりも燃料が多いと〈リッチ状態〉、空気が多いと〈リーン状態〉って言うんです」
――ん? そのリーンとリッチはパン関係なく?
Abe「化学でもリーンとリッチという言葉があるみたいなんです。それをまゆちゃんが見つけてきてくれて。なので、〈stoichiometry〉はリーンとリッチの間にあって、過不足なく一番エネルギーを生み出せる状態で、意味も響きもカッコよくて」
Takahashi「〈理論空燃比ってカッコいい〜!〉って(笑)」
――カッコいいですけど、絶対意味を覚えられない……。それこそさっき言ったみたいに転調があって、開ける感じがあって、だからリード曲なのかって思ったんですけど。
Takahashi「この曲は3つめのパズルで出来た曲で、このイントロになっている部分は私の中でずっとあって、ずっと好きなフレーズだったんですけど、曲の続きがなかなか出来なくて。で、さっきも言ったようにパズルにすると毎回100パーセントのピースが生まれてきて盛り盛りの曲になっちゃうから、それまでのパズルの経験も生かして、いい曲にしたいなと思っていたら、結構いいピースが出揃って。
個人的には、2番のBメロくらいからサビにかけて、〈stoichiometry〉で科学的にいい状態になった時に世界が広がっていくみたいな感じを表現したかったんです。これぞLean Richの曲だっていうのが出来た感じがしています」
――インストの曲って説明するのが難しいですね。でも最初の部分と、今言ってた部分は特にカッコいいと思います。何かが始まる!みたいな。
Takahashi「ほんとですか! 嬉しい! あそこずっと使いたかったから」

しんどさの代わりに生まれた曲
――3曲目の“blooming”は花が咲いているイメージなんですよね。
Abe「でも私は花が舞い上がって、空気に乗って流れて行ったり、景色が流れていくようなイメージですね」
Takahashi「知的~。それでビデオ作りたいね。この曲には何かが始まっていくイメージがあって、休みの日に起きた時に流してほしいですね」
――キレイな一日になりそう。4曲目の“reminiscence”は?
Takahashi「これもソロの頃からあった曲で、最初別のドラマーと作ろうとしていた曲なんです。その人がこの曲名を付けてくれました。私はこの曲を作った時にしんどいことがあって、そのしんどさの代わりに生まれてきてくれた曲だと思うんですよね」
Abe「そんな風には聴こえないけどね。私は草むらに寝てるんだけど、立ち上がってだんだん視野が広がっていくようなイメージがあります。だから壮大でキレイな曲にしようと思ってました。自分的に一番うまく思い描いた景色をドラムで表現できたと思います。普通はドラムの音の上にいろんな楽器が重なっていくんですけど、この曲はピアノがメロディーも伴奏もしてるから、そこに乗っかっていくイメージで」
Takahashi「埋めてほしいところを全部埋めてくれるから助かってます。この編成だと音が薄くならないか心配してたんですけど」
――そんなことは全くなかったですよ。次の“puzzle out”にはゲーム音楽っぽさを感じました。
Takahashi「この曲もパズルで生まれた曲で、記憶に残したいのでリフが繰り返し出て来るようにしたんですけど、聴いているとまさにパズルを解くみたいな感じだなあと思ったんですよね。ライブで演奏するイメージがあって、二人で向き合ってパズルを解き明かしていくみたいな。だからこの曲の間に何か問題に挑戦するとか、何かを終わらせようとするといいかもしれないです(笑)」

展開盛り盛りのプリンアラモードパフェ
――次の曲は“macaron”です。僕は卒業式っぽいイメージを受けたんですけど。
Takahashi「実は私、最近結婚したんですけど、婚約指輪を買いに行く時に思い付いた曲で。〈マカロン〉っていうのはもらったその指輪のモチーフなんです。結婚っていうのは始まりでもあるけどいったんゴールでもあって、その言葉ではうまく言えない感じを曲にしておきたくて。だから〈卒業式〉っていうイメージは結構合ってるんですよ」
――えー! めっちゃいい話ですね。
Takahashi「結婚指輪に比べると婚約指輪ってあんまり着ける機会がなくなってしまうので、指輪が音とセットになってたらいいなと思って作ったんです。気持ちが旬なうちに残せてよかったです。この曲もパズルから出来た曲です」
――で、最後の曲が“UCAS”。
Abe「これが最初のパズルで生まれた曲で、全部を詰め込んだので展開盛り盛りのプリンアラモードパフェみたいになってしまって(笑)。この曲をYouTubeにアップする時にまゆちゃんが曲に合うような絵を描いてくれて、それが宇宙みたいに思えたんですね。だから宇宙関連の言葉で〈Universe〉〈Cosmo〉〈Atmosphere〉〈Space〉の頭文字を並べてこのタイトルになりました。宇宙の曲、というよりかは、それくらい盛り盛りキラキラっていうことですね」
Takahashi「初めて元からあった曲じゃないものに挑戦した曲なので、気合いが入ってるし、その時やれることを全部盛り込んで〈やりたいのはコレ!〉みたいなゴージャスな曲になったと思います」

パズルをまたやりたい!
――今回レコーディングはどのようにして行われたんですか?
Takahashi「最初に私が全部家で録音しました。これまではピアノがあるスタジオで弾けるまで弾くのを繰り返してたんですけど、コロナになってしまって宅録の勉強をして」
Abe「その後にドラムをレコーディングしました。今回はセルフ・レコーディングに挑戦して、ちゃんと自分でマイクを立ててセッティングをして録音しました。実はマイクを立てる作業だけでも地味に見えるけど大変な作業で、一人でやると精神的にきついからまゆちゃんに手伝ってもらって、録音してるのもずっと聴いてくれてたし、応援もしてくれて、うまくいかない時も頑張れたんです」
――自分でマイキングからするのはすごい大変ですよね。ドラムが後って難しくないですか?
Abe「大変でした。パズルもその順番でやってたのでイケると思ったんですけど」
Takahashi「その後に別の音も重ねたりして。宅録だとそういうのが無限にできちゃうのでキリがないですね。でも、音が薄くなっていないのはエンジニアの伊藤さんの力も大きいと思います。私たちの好きな音を分かってくれているので」
――次はどうします?
Abe「パズルをまたやりたい!」
Takahashi「中毒性あるんですよ、あれ」
――ドラムから録るとかはどうですか?
Abe「できるのかな、そんなこと。一回試しにやってみる?」
Takahashi「やってみるか! 楽しそうかも」
Abe「私は思ったのを一度打ち込みにするんですね。で、それを実際に叩くと思ってた以上に難しいこともあって、それを練習するのが楽しいんです」
Takahashi「作曲スキルが上がるかもね」
――そして、これらの曲を生で聴いてみたい気持ちも出てきますけど、ライブをやる予定はありますか?
Abe「やりたいですね。マイペースな活動なので、いつまでにどれくらいっていう目標はまだないですけど」
Takahashi「私はライブ欲より楽曲の制作意欲の方が強いんですけど、やっぱり生で聴いてもらう機会も必要かなとは思っています。コロナだから一人でやってると、スタジオで合わせた時めっちゃ楽しいんですよ。それもあってライブの解放感も味わいたいなって思います」