Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。先週より編集部に鈴木英之介が加わり、5人でお送りしております。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyプレイリスト

 


【鈴木英之介】

君島大空と塩塚モエカ “サーカスナイト”

数多のアーティストにカヴァーされ、邦楽におけるスタンダードとなりつつあるこの名曲に、また一つ素晴らしいカヴァーが加わった。君島大空が卓越した手さばきで鳴らすアコギの音は頬を撫でる潮風のように心地よく、羊文学の塩塚モエカがそこに乗せる歌声は海そのもののような吸引力を持っている。

 

Friday Night Plans “Unknown”

金曜夜特有の高揚感を内に秘めた、素敵な名を持つ音楽プロジェクト。本作で鳴らされるのは、解放のときを目前にしてはやる気持ちを抑制するかのように、メロウでアンビエント・ライクなR&B。しかしその隙間からは、やはり興奮の気配が漏れ出ている。

 

吉村弘 “GREEN”

先日Pitchforkで〈Best New Reissue〉に輝いたことでも話題の、和モノアンビエント~ニューエイジ不朽の名作からタイトル曲を。温かなアナログ・シンセの音で丁寧に構築されたこの作品世界には、人心を落ち着かせる普遍的な効能があるのだろう。コンディションを問わず、いつでも聴ける音楽。

 

DAOKO “VOICE”

DAOKOがフィジカルでのリリースに先駆けてデジタル・リリースした、ニュー・アルバムの冒頭を飾る一曲。グリッチ・ノイズのような音が薄く層をなすエレクトロニカ調のトラックは、インストゥルメンタルで聴いても十分に美しいだろうが、そこにリズムの重心を微妙にずらしたようなDAOKOのフロウが乗ることで、心地よい違和感が生まれ、中毒性が増している。

 

indigo la End “夜漁り”

あの名曲“夏夜のマジック”の系譜に連なる大人の夏歌が、インディゴから新たに届けられた。歌謡ポップスの旨味成分を十分に含んだグッド・メロディーに〈さすらうのは予備の心〉〈電話したら夜が曲がるだけ〉といった文学的な歌詞が乗る歌世界を、クリーン・トーンのギターと骨太なリズム・セクションがメロウに彩る。これ以上、いったい何がいるだろうか?

 

【小峯崇嗣】

イハラカンタロウ “グッド・バイ グッド・デイズ”

シンガー・ソングライターのイハラカンタロウが今年の4月にリリースしたアルバム『C』よりピックアップ。80年代のソウルやAORからの影響を感じられるサウンドで、特に中盤のサックスのソロの部分は必聴です。夏の夕方あたりに下町をぶらぶら散歩しながら聴きたいですね。

彼にはTOWER DOORSからメール・インタビュー〈6つの質問〉を行っています。今回の作品を制作した時に影響の受けた音楽など色濃く語っていただいておりますので気になった方がぜひ一読を!

 

ALFRD “Anywhere”

この企画でも何回か取り上げています、新鋭レーベル・makranに所属のSSWのALFRDが新曲”Anywhere”をリリースしました。毎回毎回、彼の創り出す流麗で澄み切ったサウンドスケープには驚かされます。触れてしまったら壊れてしまいそうな繊細な音にのせて、切ない歌声が響く一曲です。

 

大浦 宗一郎 “HONKIDE”

福岡を拠点に活動するSSW、大浦 宗一郎が新曲”HONKIDE”を先週リリースしました。渋く味わい深いソウルフルな歌声と、グルーヴ感あるラップを使い分け、彼の新たな才能を垣間見た一曲です。サウンドもジャジーでとろける甘美なサウンドにも注目です。

 

Tok10 “Hot Girl”

Sound CloudやYouTubeでの総再生回数は200万回を超え、次世代ラッパーとして注目されているTok10(トキオ)が今年リリースしたアルバム『“10” the number of dreams』からピックアップ。ギターの心地良いストロークとトラップビートを用いたベッドルームなトラックに、メランコリックで甘い歌声が特徴的なフローに痺れる一曲です。海外のブロックハンプトン(BROCKHAMPTON)やロイ・ブレア(Roy Blair)などの新世代アーティストとシンクロするアーティストです。

 

【田中亮太】

スピッツ “猫ちぐら”


なんだか今日は猫めいている日。稀代の犬バンドによる猫曲といえば、なにより“猫になりたい”ですが、メンバーが顔を合わさずリモートで制作されたというこの曲もまた素敵です。セルフプロデュースによるシンプルで棘のないプロダクションは、むしろ近作の音よりも好みかも。あと一盛り上がりきそうで、あっさり終わるところもすごくいい。

 

山崎彩音 “The Way You Make Love”

山崎彩音さんとジーナ・ローズ・ブルース(Gena Rose Bruce)さんという日豪のシンガー・ソングライターが、お互いをカヴァーしあったシングルから山崎さんによる楽曲を。オリジナル・ヴァージョンのムーディさ(今日みたいな天気にぴったり)は継承されつつ、新たに加わった日本語の歌詞によって、より官能的な魅力が醸されています。こういう国を越えてのスプリットっていいですねーと思ったら、シャムキャッツと落日飛車もやってましたね

 

シャムキャッツ “おくまんこうねん”

これが最後かもしれないから、今日はやっぱりシャムを採り上げたい。彼ら後期の大きな参照元だったLCDサウンドシステム(とナショナル)からの影響をもっともスマートに昇華した傑作。上のMV撮影に参加できたこともあり、思い入れ深い1曲です。なのでベスト盤『大塚夏目藤村菅原』に収録されなかったことは、再結成するまで恨みたい……。バンドの解散によせたとてもパーソナルな記事を書きましたので、そちらをぜひ読んでください。

 

【酒井優考】

おはぎ “都市伝説”

UFOの日(6月24日)に突如公開された、インタビューで言及されていた都市伝説の歌。来てほしいところでしっかり来てくれる転調に、開けた雰囲気のサビ、その歌詞そこで韻踏むんかい/そこかかってるんかいっていうリリック……と、おはぎらしさはありつつ(1曲しか発表してないのにらしさとは?)新たな一面を見せてる感じ、最高です。これからも勝手に推していきます。

 

GLIM SPANKY “こんな夜更けは”

ファンクやソウルの懐かしさと、現代風の新しさがうまく入り混じった新曲。完全に宅録で作ったということがマイナスに働かず、逆にバンドの新境地を生み出しているのが素敵。

 

きゃりーぱみゅぱみゅ “にんじゃりばんばん Steve Aoki Remix”

「ニンジャラ」、ウチでも子供がやってます。コメントの英語の多いこと。いわゆる〈4つ打ち〉の音っていつの間にか変わりましたよね。

 

冗談伯爵 “西暦2200年”

前園直樹と新井俊也による音楽ユニット、4年半ぶりの新曲。美しく良質なシティ・ポップ。

 

トリマトリシカ “Nuance”

湿度が高い最近の気候に合うと思います。

 

【天野龍太郎】

ヨルシカ “思想犯”

稀代のストーリーテラー、ヨルシカが7月29日(水)にリリースする新作『盗作』から。Rabbit MACHINEによる横長のミュージック・ビデオにまず度肝を抜かれました。〈こんな中身のない詩を書いてる〉と歌ってしまう切実さがぐっとくる。

 

あいみょん “裸の心”

誰かが〈浜田省吾みたいだ〉と書いていた。彼女のルーツであるのだから、それもそうだと思う。そしてそれこそが、あいみょんが世代を超えて愛されている理由でもある、のかもしれない。〈大衆的な歌手〉がほとんどいなくなってしまったいま、果敢にもその役割を担っているのが彼女だ。

 

RYUTist “春にゆびきり”

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館でのワンマン・ライブが中止になってしまったことは残念でしたけれど、この新曲は〈RYUTistは絶好調!〉というムードを伝えてくれます。切なくて、ぐっとくる。制作はなんとパソコン音楽クラブ! 7月14日(火)にリリースされるニュー・アルバム『ファルセット』が楽しみでなりません。

 

SIRUP “HOPELESS ROMANTIC”

ちょっとレゲトンっぽいかも。いや、ドレイクの“Passionfruit”? とにかくトロピカルなダンス・ビートがナウくてかっこいい。それとやっぱり、歌い手としてすごすぎます。

 

KAZUO “KAIJU FREESTYLE”

デビュー・アルバム『AKUMA』から。このパワフルなヴァイブス、しびれます。初めてNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDを聴いたときに感じたものと同じ感覚を覚えました。“JAP GOD”という曲では昨今の〈Black Lives Matter〉をふまえて、警察官の暴力をひたすら罵り続けている……。この国にも、みずから〈ジョーカー〉を買って出るラッパーが現れた。

 

SAI “LIER”

Ms.Machineのヴォーカリスト/リリシストであるSAIのニュー・シングル。英語、スウェーデン語、日本語で、嘘をつく男への怒りが歌われています。思えば、前のシングル“スミノフ”にはシステムへの怒りがあった。トーン・ポリシングなんかくそくらえ。Spotifyとかでも聴けるけれど、Bandcampを載せておきます。

 

SaToA “fruit basket”

常に期待を裏切らないSaToA。この新曲は、6月20日にリリースされたayU tokiOとのスプリットLP『みらべる』から。〈日に焼けたような青空がまぶしすぎただけ〉という不機嫌な歌いだしから詩情がにおい立つ。かっこよすぎます。

 

寺尾紗穂 “光のたましい”

寺尾紗穂さんの新曲。〈わたしたちみんな〉が〈孤〉であり〈独〉であることを、肯定するでも否定するでもなく、ただ淡々とやさしく歌う寺尾さん。老ピアノから鳴る不思議な音があまりにも美しい。ビデオの監督は玉ちゃん(玉田伸太郎)。

 

シャムキャッツ “チャイナは桃色”

昨日、解散のしらせが届けられたとき、ショックでしばらく放心状態になってしまった。それだけ自分の心のなかで重要な位置を占めていたバンドだったんだな、と思った。いまさらそんなこと言ってもしょうがないんだけどね。でもその事実は、この先ずっと消えることはないでしょう。いままでかっこいい音楽をどうもありがとう! 4人の〈これから〉を勝手に楽しみにしています。