Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は第72回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部

★〈Mikikiの歌謡日!〉記事一覧

Spotifyプレイリスト

 


【天野龍太郎】

YOASOBI “たぶん”

若者から絶大な支持を得ている……と、先週の〈ずとまよ〉みたいに、またおじさん臭い紹介になってしまいました。Ayaseとikuraによる〈小説を音楽にするユニット〉のYOASOBI。〈それもただよくある聴き慣れたストーリーだ〉と、タメの効いたヒップホップ・ビートと切ないメロディーに乗せて、すれちがいを歌うikura。〈よくある〉からこそかけがえのないものであり、それを歌にしているからこそ聴き手のハートを掴んでいるのだろうなと思いました。〈原作〉のしなの「たぶん」はこちらから

 

ヨルシカ “盗作”

ヨルシカが明日7月29日(水)にリリースする新作から、表題曲を先行で発表。音楽を作ることとは本質的には盗むことなのだ、という表現者としての生々しい告白と、その物語。それにしても、メロディーラインが本当に素晴らしい!

 

Hi Cheers! “ABCがワカラナイ”

注目のニューカマー、Hi Cheers!(ハイチーズ)がデビュー・シングルをリリース! Hi Cheers!は上野正明(ヴォーカル/ギター)、高村風太(ヴォーカル/キーボード)、Chie(ヴォーカル/ギター)、月川玲(ヴォーカル/ベース)の4人組で、全員が歌える=主役を張れる、というスター性抜群なスーパー・グループ(それは、このビデオを観てもらればわかるはず)。この“ABCがワカラナイ”は、ゴキゲンなホーンとグルーヴ、トロピカルなパーカッションやスティールパンがめちゃくちゃゴージャス。だけれども、超軽快&爽快な一曲。勢いに満ちていて、スカッとしますね。〈○×を人に預けて/結局のところ何がしたいんだろう〉と始まる歌詞もおもしろい。配信のリンクはこちら

 

sheidA “Real Lovin'”

LAで生まれ、NYや日本各所で育ったというmonvmi(モナミ)を中心としたプロジェクトのsheidA(シェイダ)。そのセカンド・シングルは、4つ打ちビートとジャジーなギター、艶めかしい歌による、なんともセンシュアルなダンス・ナンバー。サウンドからはトム・ミッシュやジ・インターネットとの同時代性を感じますが、monvmiの歌は正統派ソウル・シンガーのそれ。彼女の資質はジェネイ・アイコやジョルジャ・スミスに近いのかも。どんな曲でも歌いこなせそうで、わくわくします。

 

SIRUP feat. ROMderful “Online”

SIRUPが英ロンドンのプロデューサー・ROMderfulとコラボレーション! ちょっとヨレたリズムとギターの音色が印象的なビートを自由自在なフロウで乗りこなすSIRUPのヴォーカリゼーションにくらくらします。特に、サビに入っていくあたりの節回しがドラマティックで、最高。SIRUP、ノリにノってます。

 

xiangyu “nambu”

TOWER DOORSが紹介した“プーパッポンカリー”の(カルトな?)ヒットで知られるxiangyuのニュー・シングル。今回も攻めすぎ&ポップなゴム(gqom)・ビート。登山アプリ〈YAMAP〉からオファーで制作されたというこの曲。山のエピソードがふんだんに入っているらしいのですが、xiangyuのパーカッシヴなフロウがあまりにも日本語離れしすぎていて、言葉が頭に入ってきません。〈東京では同じマンションの人にすら挨拶しないのに、山では急に誰もがフレンドリー。ただの塩むすびやカップ麺が異常においしく感じるし、下山後の風呂ビールは至福すぎる。そんな、自然の中で出逢う全てのことが今はとても恋しいです〉というxiangyuのコメントにぐっときた。

 

NNMIE “知らないパレード(2020)”

んミィバンドのアルバムの表題曲でもある“知らないパレード”の、んミィさんソロ・ヴァージョンがSoundCloudで発表されました。もともとは『Does the World Deserve Me?』(2017年)が初出? こちらは再録かリミックスなのでしょうか。アルバム・ヴァージョンでは深くリヴァーブがかかっていたヴォーカルがすっきりとしていて、素晴らしいメロディーがするっと耳に飛び込んできます。あとこの曲の歌詞、大好きです。SoundCloudでは他に、ゆめであいましょう“水のはて”のカヴァーも発表されています。

 

【鈴木英之介】

Mega Shinnosuke “Cutie girl”

モータウン的な跳ねたビートとアップダウンの大きいキャッチーなメロディーの組み合わせに、悶絶必至な一曲。広末涼子“MajiでKoiする5秒前”や清竜人25“Will♡You♡Marry♡Me?”などの系譜に連なるようなとびきり甘酸っぱいポップスが、まさかこの気鋭のインディー・アーティストから飛び出すとは……その底知れぬ才能が少し恐ろしくなる。今後もその動向から目が離せない。

 

Creepy Nuts × 菅田将暉 “サントラ”

R-指定のラップが孕む鬱屈を浄化するかのように、菅田がエモーショナルな歌唱を披露するサビは、何度聴いても爽快であり感動的だ。異質な個性同士のぶつかり合いと調和……これぞ化学反応と呼ぶべきだろう。そして曲の配信開始から経つこと数週、ついに解禁されたミュージック・ビデオは「オールナイトニッポン」のリスナーなら歓喜すること間違いなしの内容である。それもそのはず、ニッポン放送のラジオブース内で撮影されており、深夜ラジオ特有の空気感が完璧なまでにパッケージングされているのだ。このMVを観て曲を聴いて、更に両者のラジオ番組を聴けば、その楽しみは何倍にも膨らむことだろう。

 

Dos Monos “Mammoth vs. Dos Monos”

常夏ムード満載のアフロ・キューバン・ジャズをサンプリングしてこんなにもダークでひんやりとした質感のトラックに仕上げてしまうのか、という驚きにまず打たれる。マイクリレー形式で紡がれていく各MCのリリックは、それぞれに個性的でありながら、ゆるやかに連続性を持っており、その絶妙なバランスが心地よい。ちなみに私が個人的にグッと来たのは、荘子itによる〈フェイクがデフォルトの自分の肖像を燃やし暖をとってる今いる此処〉というラインだ。

 

【小峯崇嗣】

aiver “silver wave”

バンド/アーティスト・コレクティヴ、aiver。彼らの最新楽曲をTOWER DOORSで先行公開。絶望の果てに朽ちたSci-Fiな街並みを想起させるアンビエントなサウンドや儚さを織り交ぜた電子サウンド。特に中盤からのアルカ(Arca)を想起させる壮絶的な展開と、JPEGMAFIA的ラップ・パートは必聴です。aiverにはTOWER DOORSからメール・インタビューを行っていますので、お見逃しなく。

 

碧海祐人 “夕凪、慕情”

愛知拠点に活動するシンガー・ソングライター、碧海祐人が9月にリリースするデビューEP『逃避行の窓』より、ドラマーの石若駿が参加した“夕凪、慕情”を先行配信。彼の底知れないソングライティングセンスを感じられる一曲に仕上がっています。本当に天才の一言に尽きます。碧海祐人にも過去に〈6つの質問〉をしていますので、気になった方はぜひ。