それは一通のメールから始まった。〈私たち、こしあん子・もちこめ子の二人からなる庶民派プログレ・ユニットの「おはぎ」と申します。1月3日に結成し、“まぐろパーリナイ”という曲をYouTubeで発表、配信もしています。もしよければインタビューをしていただけないでしょうか〉。おはぎにまぐろ、なんじゃそりゃ。
その“まぐろパーリナイ”の楽曲説明にはこうある。〈聴けば聴くほど癖になる、ポップ・ドラスティック・エモーショナル・プログレッシブ・センチメンタル・フリーダム・ナンデモ・アリな曲です!〉……この長いジャンル名、どこかで聞いたことがあるような。
しかし、いざ聴いてみたら思わず病みつき&腹ペコになってしまう名曲だし、カラフルなMVはかわいくてシュール。これは大物の予感がする……ということで、こしあん子(作詞・ヴォーカル/黒丸)、もちこめ子(作曲・キーボード/白丸)のお二人にお話を訊いてみることにしました。
※途中発言が「・」で区切られた箇所が出てきますが、ここは二人が不思議な声のラップ調(通称・おはぎ弁)で喋っている箇所です。おはぎ弁については本文を参照してください

〈おはぎって何やねん?〉その1・もちこめ子編
――突然のご連絡ありがとうございました。まずは〈おはぎって何やねん?〉というところからお訊きしたいのですが、お二人は普段何をしてらっしゃるんですか?
こしあん子「普段は、おはぎとして活動するための精神的な修行みたいなことを日々やっています」
――それは、いまとは違うかりそめの姿で?
こしあん子「そうです。昼は仮の姿、夜はおはぎ。闇に紛れたおはぎ!」
もちこめ子「私も、なるべく新鮮なもち米でいられるように頑張ってます。カピカピのお米になってはいけないので」
こしあん子「いつでも新米だね!」
――二人はすごくノリノリなんですね……。
こしあん子「ノリノリって何ですか!? これがおはぎです!」
――それでは、もちこめ子さんの役割から教えていただけますか。
もちこめ子「私は作曲とキーボードを担当しています。ベースやドラムスのイメージもある程度考えますが、打ち込みはプロデューサーのししめPにお願いしているので、それ以外の楽器を担当していますね」
――オフィシャルサイトも作られたそうですね。そういう技術もお持ちで。
もちこめ子「そうです。夜はおはぎだけど、昼のかりそめの姿の間はIT企業に勤めているので」
――作曲はいつからされてるんですか?
もちこめ子「ピアノを4歳からやっていて、中学くらいから音感を頼りにTVのCMや好きな曲の耳コピをするのが楽しくなってきて、大学で軽音サークルに入ったんです。そこでもいろんな音楽をコピーし始めて、ディープ・パープルとか、東京事変とか、電気グルーヴとか色々。その後、大学4年くらいから作曲をするようになりました」
――電気グルーヴのコピーとはすごい(笑)。プロフィール欄には音について〈エモーショナル&ドラスティックな音〉とありますね。
もちこめ子「それは、あん子ちゃんが書いてくれたんです。私はあんまり、どういう音にしようって意識はしていなくって。というわけであん子ちゃん、ぜひ解説してください!」
こしあん子「こめ子ちゃんはパッと見、明るくってホワワンとした感じの炊き立てのお米なんですけど、曲はホワワンとはしてなくて、音とのギャップがすごいんです。その振り幅がドラスティックだなと思うんです。曲の展開もドラスティックだし。あと彼女はイラストも描くんですけど、普段あんまり感情を表に出さない代わりに、曲とかイラストでアウトプットする時にパンパンになった感情をウワーッて出すんです。そういうところはエモーショナルだなって」
――こめ子さんはギャップがある方なんですね。
もちこめ子「ギャップがあるってよく言われますね。もともと私は言語化するのが得意なほうではなくて、自分の気持ちを言葉で表現すると嘘みたいになりがちで。でも絵とか音にするとしっくりくるんです。負の感情も作品にしてしまえば、〈形になって生まれてくれてよかったね〉って愛せる。ウワーッて感情を出すときは、実際に炊き立てのお米を出す時みたいな気持ちです。おいしい時に・出す!」
こしあん子「それを・私は・あんこで・シュッと包む!」
――ホワワンのなかにエモがあるんですね。
もちこめ子「音楽に限らずエモいものは好きなんですよ。甲子園とか、月9とか、涙もろいので。音楽もメロコアが好きだったり。ハイスタとか、10-FEETとかも聴くし」

〈おはぎって何やねん?〉その2・こしあん子編
――では次はこしあん子さん。あん子さんの役割は何ですか?
こしあん子「私は作詞と歌をやっております」
――詞を書いたり歌を歌ったりするのは、ずっとやられてたんですか?
こしあん子「全然やってないです。中学生の時にポエムとか小説みたいなものは書いてたし、歌も好きではあるんですけど、それを表に出すのは恥ずかしいことだと思っていて。最近素直に好きだなって認められるようになったばっかりです」
――なぜやろうと思ったんですか?
こしあん子「私の友達に〈うさぎ帝国〉っていうキャラクターを描いてるendoさんっていう人がいて、〈ドッペルか?〉っていうくらいすごいソックリなんですけど(笑)。endoさんが〈うさぎ帝国〉のテーマソングの“うさぎ帝国のうた”の詞を書いてるのを見ていて、endoさんも音楽をやってない人なのにめっちゃ楽しそうだったんですよね。私はピアノをやってたけど才能がなかったし、音楽っていうのは選ばれた人がやるものだと思ってたから〈私はそっちの人間じゃない〉って思ってたんです。でもendoさんを見てたら〈そんな気軽に音楽を楽しんでいいんだ〉って思って、そこからちょっとずつ私もやりたいっていう気持ちが出てきたんです」
――endoさんが作詞した“うさぎ帝国のうた”も、あん子さんが作詞した“まぐろパーリナイ”も、言葉を畳みかけるパートがありますよね。ラップとも違うし、あれって独自のものですよね。
こしあん子「そうかも!」
もちこめ子「そうかもね!」
こしあん子「私は変な声だし、歌が下手なんで、ああなるのかも」
――下手ではないですよ。味がある。
こしあん子「ありがとうございます!」
もちこめ子「でもさ、あん子ちゃんの声がクセになってる人は絶対いるよね」
こしあん子「客観的に自分の声を理解はしていて、マンキンでエモい曲を歌っても量産型J-Rockみたいになっちゃうから、そこで勝負しても意味ないと思うし。じゃあこの声を活かした音楽を模索しようと思って、あのスタイルになったんですよね。音程もごまかせるし、アドリブもできるし」
――これまたプロフィールに、詞に関しては〈平凡&無秩序な詞〉と書いてあります。平凡で無秩序、というのは意識されてることですか?
こしあん子「いわゆるJ-Popによくある、愛だの恋だの虹が出るだの雨は止むだのっていう歌詞は、〈そんなわけねえだろ!〉って思っちゃうんですよね。あ、いま全方面にケンカを売ってしまった(笑)」
一同「(笑)」
こしあん子「ちなみにJ-PopもJ-Rockも好きですよ! そういう曲を聴いたりカラオケで歌ったりするのは平気だけど、私はそんなこと書けない。なぜならそんなこと思ってないから。だから、歌にする時に〈歌にするまでもないことを歌にする〉っていうほうが素直に活動できるなって思って、それで〈平凡〉なんです」
――その発想自体が非凡な気がします。
こしあん子「あーそうなのか! 〈無秩序〉っていうのは、さっきのこめ子ちゃんの話にも通ずるんですけど、言葉にすると絶対〈そうじゃないのにな〉っていう瞬間があるんですよ。言葉は辞書的な定義を超えられないから。だから歌詞に意味を込める、ということに意味を感じていなくて、歌詞を聴いた人がそれぞれの経験を元に勝手に解釈していけばいいんじゃないかと思っているんです。メッセージ性なんて込めてもどうせ伝わらないんで(笑)」
もちこめ子「無理やり感覚に言葉をつけてもうさん臭くなりがちだよね。だから意味じゃなくて音としてそのまま感じてもらえればいいなって」
――それって作詞歴が何年もある人の達観した考え方みたいですね。1曲しか発表してない人には思えない。
こしあん子「ぅやった~、褒められた~! でもそんなことないですよ、ひねくれてるだけで」
もちこめ子「あん子ちゃんはすごいんです。その場の状況とか人が何を考えてるかっていうのを的確に表現できる人で、冷静に人や物事を見ているんです。そういう物事の見方はおもしろいし、どんどんアウトプットしてほしくって」

もち米とあんこ、合体!
――そんなあん子さんとこめ子さんはどう出会うんですか?
もちこめ子「shabelというインスト・バンドに、私にすごくソックリなお友達の髙橋麻佑ちゃんっていう子がいて、さっき言ってた“うさぎ帝国のうた”を麻佑ちゃんとendoさんの二人で作っているのを見て、これまでインスト曲しか作ってこなかった私も歌モノの音楽もおもしろいなって思ったんです。でも私はメッセージ性とかをあんまり込めたくなくって、それなら普遍的な……例えば〈バスタオルって週に何回洗ってるの?〉とか、〈ちりめんって、織物のちりめん柄と、ちりめんじゃこと、どうして意味が2つあるの?〉とか、誰でも興味があるようなことをテーマにした曲にしたかったんです。でも私が歌詞を書くと恥ずかしくなっちゃうし、歌も歌うつもりはないし。そんな時に、あん子ちゃんに話したらノッてくれて」
こしあん子「二人とも精神年齢が小5くらいで、一緒に絵を描いてるとすぐ思ったことにリズムを付けて歌うんですよね。だからそれを曲にしようぜってなって、〈ユニットやろうよ〉〈おはぎだ!〉〈すご~い!〉みたいな感じだったよね」
もちこめ子「その時に〈おはぎ〉っていうユニット名と〈もち米と、あんこのように、相性のいいわたしたち。〉っていうキャッチコピーも生まれてね。二人で絵を描いてる途中、カフェから別のカフェへ場所を変えたら、鉛筆削りを忘れちゃって、〈どうして・僕を・置いてった・セイ!〉って歌い始めて」
こしあん子「どうして・僕を・置いてった・アリーナ!」
もちこめ子「(笑)。こんな感じで、リズム先行で曲がすぐ出来ちゃうんですよ。で、そこ以外のパートを広げていって曲を作るんです。だからおしゃべりの延長で出来たユニットなんです」
こしあん子「テーマが平凡だからね、歌詞もおのずと普通になりますよ」
――平凡じゃないけどなあ~(笑)。取り上げるテーマは平凡でも、そんなこと取り上げる人がいないから、結果的に非凡になってる気がする。
こしあん子「そうかな~。そういう歌詞の人は意外といる気がするんです。相対性理論とか水カン(水曜日のカンパネラ)とか。言葉の意味がないほうが言葉の意味が無限に広がっていくような」
――ああ~なるほど。水カンと言われてピンときました。
もちこめ子「私、水カンの“ディアブロ”、めっちゃ好き」
こしあん子「group_inouとかね。“まぐろパーリナイ”のMVはAC部も参考にしていて」
――ああ~わかる~。〈おはぎ〉というユニット名の由来は?
こしあん子「私は、たまっていうバンドがすごい好きで。たまっていうバンド名は、ネコによく〈たま〉っていう名前を付けるじゃないですか。それくらいの気持ちでバンドに名前を付けたことが由来らしくて。だから意味のある名前より抽象的な名前がいいなと思って。横文字とかねえ」
もちこめ子「あー私たちには無理無理! 解散! おはぎだからいいんですよ」
――じゃあちょうど話に出たので、他に好きなアーティストとか影響を受けた人っていますか?
こしあん子「私はたまと、最近は人間椅子が好きですね」
――人間椅子ですか! 意外!
もちこめ子「あと、一緒にパスピエのライブに行ったよね! ライブといえば私は日食なつこさんとか好きで去年ライブ行きました。冬に聴きたくなる」
こしあん子「パスピエはファンクラブに入るくらい好きです! あと倉橋ヨエコとか好きでしたよ」
もちこめ子「私も好きだった~」
――ええ~! 意外な名前が!
もちこめ子「あ、バンアパ(the band apart)も大好きです。原さんのベースが大好きなんですよ。あと、あっこゴリラとは同級生で友達だからよく聴くしライブも行きます。何でも聴きますね」
こしあん子「上原ひろみは?」
もちこめ子「上原ひろみも聴く!」
もちこめ子「行きました!……あ、行ったって言ってました!」
――個人的には、扱うテーマは打首獄門同好会に近いかなって思いました。
こしあん子「ああー! 近いですね。あとはヤバT(ヤバイTシャツ屋さん)とか岡崎体育とか」
もちこめ子「大きなジャンルで分けたらそこに入っていきそうだよね」
――でも二人は笑わせにはいってないんですよね。
こしあん子「そうです!」
もちこめ子「割と真面目です。真面目にふざけてます!」

一寸先は大豆の水煮!
――ところで、お二人はなんで顔を隠してるんですか?
こしあん子「それもさっきの話に通じるんですけど、顏って情報的に邪魔だと思うんです。平凡なテーマを取り上げてるし、〈こんな人がやってるんだ〉っていうのは要らないなって。匿名性が高いほうがいいよね」
もちこめ子「そのほうが何でもやれる気がするし」
――ユニットのリーダーとか、活動する時の言い出しっぺとかはいるんですか?
こしあん子「考えたこともないね。意見が食い違うこともないし」
もちこめ子「もち米とあんこだからねえ。いつも一緒にくっついてるから」
こしあん子「たしかに。おはぎで・食い違ってる・場合じゃないよ。でも、私は曲に関しては口を出さないようにしてます。〈ここは転調します〉〈はい!〉みたいに」
もちこめ子「すぐ転調させちゃうからね(笑)。私も歌詞に関しては何も言わないです。信頼してるし、そもそもあんこちゃんの書く歌詞がおもしろいじゃないですか。〈ここにこういう雰囲気の歌詞がほしいよ~〉って言ったら、それはそれはおもしろい歌詞がすぐ出てくるので」
――それは普段から言葉を貯金してるんですか?
こしあん子「そうですね。一人でいる時はずっと何かを考えながら独り言を喋ってて。今日はずっと〈ほにゃほにゃ・チャッチャ!〉って言いながら歩いてたんですけど」
もちこめ子「ええ~~!!」
こしあん子「そういう楽曲を作ろうと思って。そういう感じでどんどん言葉が出てくるんですよ」
――じゃあ二人とも、どんどん出てくる人なんですね。いまネタは何曲ぐらいあるんですか?
こしあん子「めちゃめちゃありますよ。特にイライラした時とか負の感情が出た時はそれを歌詞にして昇華してるんで。いまこれくらいあります(と言ってスマホのメモを見せる)」
――めちゃくちゃある!
こしあん子「“ルサンチマン”でしょ、“だいたいでいい”でしょ、“かにドリーム”“牛タン”“都市伝説”“入稿データ地獄”“大豆の水煮”……」
もちこめ子「一寸先は?」
こしあん子・もちこめ子「大豆の水煮!!」
――???
こしあん子「犬も歩けば?」
こしあん子・もちこめ子「大豆の水煮!!」
――どうしたどうした(笑)?
もちこめ子「ことわざの最後を〈大豆の水煮〉にする遊びです(笑)。それが歌詞になるんです」
こしあん子「桃栗三年?」
こしあん子・もちこめ子「大豆の水煮!!」
――頭がおかしくなってきました(笑)。
こしあん子「そうですか? 私たちは世界一普通ですよ」
もちこめ子「庶民派ですから」
こしあん子「おはぎは庶民のお菓子ですから」
――おはぎってお菓子なんですか?
こしあん子「和菓子じゃないの?※ 私、和菓子が苦手なんですけど」
※おはぎは和菓子だそうです
もちこめ子「私はめっちゃ好きですけど、あん子ちゃんがおはぎ食べられなくてね(笑)」
こしあん子「あんこが苦手なんです(笑)。きなこのおはぎはギリ」
もちこめ子「お汁粉は?」
こしあん子「ギリ食べれる。あんこは大豆、おもちは米から出来てるじゃないですか。ああいうのはしょっぱく食べたくて。豆もお米も食事だろ、と。砂糖を入れるな、と。磯辺焼きがいちばん好きです」
もちこめ子「いまは考えてないけど、ライブやる時に絶対差し入れでおはぎもらうよね」
こしあん子「おはぎの差し入れはNGにしておこう(笑)」
――なのによくそのユニット名にしたなあ(笑)。

きききき金髪! イエイイエイ!
――お二人のキャラクターやユニットのコンセプトがわかってきたところで、おはぎの活動や“まぐろパーリナイ”のMV制作に携わっている周囲の人たちについても簡単に聞かせてください。プロデュースをしてるのは、ししめPさん。
こしあん子「さっき言ったendoさんの知り合いのクリエイターで、打ち込みとかもできるから話をしたら手伝ってくれることになって。PはプロデューサーのPなんですけど、プロデュースというよりかは盛り上げてくれる人ですね」
――MVで踊ってるのも、ししめPさんのお宅ですか?
もちこめ子「あれはミックスをしてくれた伊藤(秀樹)さんのスタジオです。つばめスタジオっていう素敵なところで。伊藤さんはshabelのレコーディングやミックスをやってくれてた人で、麻佑ちゃんの紹介でお願いすることになりました。〈shabelの時に、すごく親身になっていろんなアドバイスをくれて、頼りになる人だから、伊藤さんにお願いしたらいいよー〉って!」
――周囲にいい人が多いんですね。
こしあん子「ありがたい焼き!ですね」
――そしてMVの監督をしてるのが株式会社えんどろーるで、MVの編集をしてるのがSergeant_twangさん。
こしあん子「えんどろーるはendoさんの会社ですね。twangさんはもともとendoさんと仕事をしてた映像編集の人で、endoさん監修、twangさん編集でMVを作りました。簡単に言えば、endoさんが絵を描いて、twangさんが動かす、みたいな感じです」
――なるほど。そしてスペシャルサンクスに載っているのがshabelのТакэбучиさん……読み方はわからないですけど、たぶんたけぶちさんですよね。たけぶちさんは何をされたんですか?
もちこめ子「曲を作ってみて〈ドラムスはどうしようかな〉って考えた時に、なんか変な感じにしたかったんです。で、shabelも不思議なピアノ・トリオで、一般的なジャズのトリオとも違うので、〈ここはたけぶちさんでしょ〉ということでデモのドラムスを叩いてもらいました。それをししめPが打ち込んでくれて」
こしあん子「“まぐろパーリナイ”も最後ツーバスがすごくてshabelみたいだもんね」
――ドゴドゴドゴドゴってすごい音がしますね。あれは打ち込みに変わってもたけぶちさんだってわかります。
こしあん子「たけぶちさんは、こめ子ちゃんが指示をすると思ってたように叩いてくれるんです」
もちこめ子「私とshabelの麻佑ちゃんの作る曲は似てるからね(笑)」
――shabelがタワーレコード渋谷店でインストア・ライブをした時に、インストアとは思えない地鳴りのような音を出してましたよ。
もちこめ子「レジの人に怒られたらしいですよ、お会計の声が聞こえないって(笑)」
こしあん子「そんな人に見えないんですけどね。だから狂気を秘めてる人ってパッと見は普通の人なんですよ。金髪の人ほど優しかったりするしさ。きききき金髪! イエイイエイ!(急に歌いだす)」
もちこめ子「フワフワ!」
こしあん子「これ次の曲にしよう! こんな感じで曲がどんどん出来ちゃうんですよね(笑)」

脳天炙りポン酢!
――なんとなく二人のノリがわかってきました(笑)。でも、そうやってたくさん曲が出来るなかで、なぜ一曲目がまぐろの曲だったんですか?
もちこめ子「二人で居酒屋を探してる時に、まぐろ専門の居酒屋があって。そこのメニューに〈脳天炙りポン酢〉っていうものがあって。〈何これ!? 超バカにしてない!?〉とか言って(笑)」
こしあん子「〈超悪口じゃない!?〉〈お前は脳天炙りポン酢だな!〉みたいな(笑)」
もちこめ子「〈脳天炙りポン酢〉っていう言葉を言いたいがために注文するっていう(笑)。他にも〈まぐろ5種盛り〉とかあって、〈ホンマグロ〉〈インドマグロ〉って書いてあって。そしたらもう〈ホンマグロ! インドマグロ!〉って歌い出して、ほぼBメロが完成ですよ(笑)」
――(爆笑)。
もちこめ子「もうあん子ちゃんに会うたび〈脳天炙りポン酢! フワフワ!〉って歌ってたね(笑)。そしたら〈とりあえずこれリード曲じゃね?〉ってなって。その後にいい感じのサビを思い付いたんで、それを付けて。一発目はめでたく、まぐろの曲でいくことになりました。ただ、バンド編成じゃないので私が一人で全部の音を重ねないといけないし、一発目だからこだわってしまって、作りこんでたら時間がかかっちゃいましたね。ついついパーリナイしちゃって(笑)」
――(笑)。なぜ今年の1月3日にMVを公開したんですか?
こしあん子「まぐろだし、めでたい日に公開しようということで、最初は2019年の12月25日の予定だったんですけど、年末になってMVが間に合わないということになって、〈三が日ならまだめでたいよね?〉とか言って3日になりました」
もちこめ子「いやーMVを作ってくれたendoさんありがとうございました(拍手)」
こしあん子「お陰様で子供が泣き止むという評判のMVが出来ました」
――Mikikiの週刊連載で紹介したら、僕の友人の子供も泣き止んだらしいです(笑)。
もちこめ子「えーー!! めっちゃうれしいんだけど!!」
こしあん子「それがいちばんうれしい」
もちこめ子「Eテレとかで使われたいです!」
――でも、〈おはぎって誰なの?〉とも聞かれました(笑)。
もちこめ子「誰なんだろうね」
こしあん子「それはちょっとわからないけど(笑)」
――そういう、何かクセになるような仕掛けって自分たちで仕込んでるんですか? それとも結果的にそうなるんですか?
もちこめ子「〈一回聴いたら頭から離れないフレーズを作ろう〉というのは割と考えていて、あん子ちゃんの歌詞にメロディを付けて勝手に歌ってると、それがあん子ちゃんにも移って歌ってることがあるんです。そうすると〈これはイケるかも〉って思いますね」
こしあん子「たしかに。自分たちがクセになるから、それが基準になってるかも」
もちこめ子「あとはやっぱり転調! 転調を愛しているので」
――僕もいちリスナーとして転調を愛しているので、転調が来ると〈きたきた!〉ってなります。こめ子さんのお友達の髙橋さんの曲でもよく転調が出てきて、サビで景色が変わったり、視野が広がったりする感じがしますよね。
こしあん子「あるある! トンネルから出たみたいな感じね」
もちこめ子「この話、麻佑ちゃん絶対喜ぶと思うんで伝えておきます(笑)! “まぐろパーリナイ”で言うと、サビの直前のフレーズが決め手になっていて、〈サビ始まるぞ!〉って思ってもらいたくて」
――じゃあ意図的に仕掛けてもいるんですね。
もちこめ子「それくらいですけどね。気付いたら頭のなかに残ってるっていうのが大事だと思っていて、例えばフェスに行って初めて聴いた曲なのにずっと覚えてる曲とかあるじゃないですか。あれすごいなーって。そういうのを狙いたいんです」
――それはミュージシャン全員が思うことだろうに、いきなり出せるのもすごいですね。
こしあん子「こめ子ちゃんは死ぬほど音楽を聴いてて、それもオールジャンル。だからそういうのが出せるんでしょうね」
もちこめ子「すてきなことを・言ってくれて・どうも・ありがとう!」
――さっきからちょいちょい出てくるこの訛りみたいな喋り方は何なんですか(笑)!?
こしあん子「おかしな・ことを・言ってる・つもりは・ない!」
もちこめ子「二人で絵を描いてる時もこうなっちゃうよね(笑)」
こしあん子「おはぎ弁だよね」
もちこめ子「おは弁」
――これ、文字だけだと伝わらないから喋りの配信とかもしたほうがいいですよ! その喋り方も〈脳天炙りポン酢〉の歌い方(?)につながるところがあります。
こしあん子「Bメロの〈ホンマグロ! インドマグロ!〉のところも、メインじゃないところの声ですごくフザけてて」
もちこめ子「3人くらい重ねたあん子ちゃんの声のうち、すごい声で〈ほほ肉! ほほ肉!〉って言ってる声がある(笑)」
こしあん子「ほほ肉に親でも殺されたんかい!っていうようなね」
――ちょっと遅れ気味でね。それ全部文字だと伝わんないんだよな~(笑)。
こしあん子「〈そういう声が後ろに入ってるのがいい〉〈その声の重なり方、普通OK出さない〉みたいに言われました。〈パーリナイ〉のところもフザけてるし」

それこそが・パーリナイ!
――MVに出てくるのはお二人のイラストですか?
こしあん子「サビで出てくるまぐろやお寿司の絵や文字は二人で描いていて、あとはほとんどendoさんが描いてます」
――ちょっとよくわかんなくなってきた……。MVはendoさんが手がけていて、サビの絵はお二人。それ以外の絵はendoさんが描いてるということですね。メインのキャラクターが4匹いて、あれもendoさん作ですか。
もちこめ子「そうです。あれはきっと“まぐろパーリナイ”を聴いて感じてくれたイメージだよね(笑)」
こしあん子「一応〈まぐろありがとう〉っていう曲のテーマがあるんですけど、endoさんはブラックなところがあって。一見あの4人は友達に見えますけど、友達なのに捕食関係があるっていう。〈当たり前を疑う〉ってことがやりたかったのかな~」
もちこめ子「最後遺影になっちゃってね」
こしあん子「〈ごちそうさま〉って命をいただくってことだよねって」
もちこめ子「我々はまぐろの命をいただいて日々〈仕事がんばろ〉ってなってるわけで。最後〈まぐろパワー〉って書いてありますけど、〈まぐろにちゃんと感謝して生きていかなければいけない〉っていうテーマがあるんです」
こしあん子「それこそが・パーリナイ!」
もちこめ子「パーリナイ! 命を・いただいて!」
こしあん子「いただいて!」
もちこめ子「亡くなってしまう!」
こしあん子・もちこめ子「けれども!」
もちこめ子「それこそが・パーリナイ!」
こしあん子「祭典だ! しっとりするよりもね! 祭りだ!」
もちこめ子「騒いで・踊って!」
――止まらない(笑)。なんで二人ともそんなにポジティヴなんですか?
こしあん子「ポジティヴじゃないですよ!」
――ポジティヴじゃなくても、嫌なことを楽しく昇華しようとしてる。
こしあん子「そうしないとやってられないんですよ」
もちこめ子「私はさっきも言ったように、負のものも形にしちゃえば愛せるんですよね。あと寝たら忘れるし、けっこう前向きですね(笑)。あん子ちゃんほど深くまで考えてないし」
こしあん子「私は本当に卑屈だし、嫉妬深いし、人々の悲しい部分を集めて出来たモンスターみたいな感じですよ(笑)。それがあんことなり」
もちこめ子「おいしくなったね(笑)」
こしあん子「ストレスが溜まりやすくて、キャパオーバーになるのが人より早いんですよ。だからみんなが溜息ついてる程度でも(机をドンドン叩きながら)〈死ねっ!〉ってなっちゃう。それをずっと抱えてるのは無理なので、絵を描いたり歌を歌ったりで昇華しているんでしょうね。アウトプットし続けないと死にますよ」
――まぐろのように泳ぎ続けると。
こしあん子「そう!」
もちこめ子「そうなのです!」
こしあん子「で、ガラスにぶつかって死ぬんだいずれ……」
もちこめ子「こわ~!」

おはぎの今後
――今後はどういう活動をしていくんですか? CDを出したいとか、人前に出たいとか、曲をたくさん作るとか。
もちこめ子「とりあえずの目標は年間4曲、シーズンごとに発表していこうと思っていて。いま構想を練っているのは都市伝説の曲なんです。“まぐろパーリナイ”をリリースした後に、そもそも〈まぐろの日っていつなんだろう?〉って思って、調べたら10月10日だったんですよ。で、10月10日ってちょうどendoさんが描いてる〈うさぎ帝国〉の建国記念日でもあって」
こしあん子「endoさんの誕生日でもあるし」
もちこめ子「そう! そこでまぐろの曲をやるべきだったんだなって思ったんです」
こしあん子「生まれた・時から~!」
もちこめ子「やるべき・ことが~! 決まってたんじゃないかって。その時に〈なんか都市伝説みたいだな〉って思ったんです(笑)。そこから都市伝説の曲を思い付いて」
こしあん子「そこからか(笑)」
もちこめ子「だから次に出る曲は都市伝説の曲なんです。いまあん子ちゃんが都市伝説にまつわる歌詞をたくさん考えていてくれて」
こしあん子「こめ子ちゃんがいまHip-Hopにハマってるからラップにしようかと思っていてね」
もちこめ子「ちょっと前に流行ったHip-Hopをたくさん聴いてるんですよ。HALCALIとか、スケボーキング(SBK)とか。だからラップ調の歌詞をお願いしています」
こしあん子「とりあえずめちゃくちゃ韻を踏んでます。でも韻とダジャレの違いがわからない(笑)」
――怒られちゃうけど、一緒じゃないですか(笑)? 今後の活動について訊いて、〈Hip-Hopの曲を作りたい〉って答えが来るとは(笑)。
もちこめ子「それが春に出す予定の曲で、夏はフェスっぽくノレる曲を。年末にはまた食べ物の曲と、四季折々で出していく予定です。で、来年にはミニ・アルバムを作れたらいいなって、ほんの~り思ってます」
こしあん子「人前でライブをする予定とかはないですね」
――目標はありますか?
こしあん子「とにかく続けることですね」
もちこめ子「あとは紅白に出たいです」
こしあん子「いきなり目標がデカいよ! おはぎで紅白ってまぎらわしいし」
――人前には出ないんじゃないんですか?
もちこめ子「いや、単純に紅白ってめでたいからいいなってだけかな(笑)」
こしあん子「友達にも〈おはぎライブやらないの?〉って訊かれたんですよ。で、〈ライブできないんだよね〉って言ったら〈DJみたいに曲をかけて踊るだけでいいじゃん〉って返されて、〈たしかに!〉ですよ」
――Perfumeみたいにしましょう。
こしあん子「そうそう、それなら出来る」
もちこめ子「私一人だとなかなか演奏の再現も無理だしね。だから今年はダンスを頑張ろう」
こしあん子「ダンス頑張ろう!……いや〈ダンス頑張ろう〉じゃねーよ!(笑)」
――最後まで変な人たちだ(笑)。
