ドビュッシーの多様な表情と匂い立つような色彩、果てしない想像力をもったピアノ小品の魅力がいっぱいに詰まったアルバムだ。19のトラックに収められた作品は、何れも“音と香りは夕暮れの大気に漂う”“西風が見たもの”など詩的なタイトルをもち、長さは2~6分ほどで誰にでも親しみやすい。仲道郁代の演奏は、多彩な表現力と自在なテクニックで、想像力の趣くままといった感のある曲想変転の目まぐるしさを見事に音化している。“アナカプリの丘”“とだえたセレナード”はその最高の例と言えるだろう。演奏内容を具象化したジャケット写真も美しく、クラシック・ファン以外の方にも広くお勧めしたい。